兼題「河童忌」__金曜俳句への投句一覧
(7月29日号掲載=6月30日締切)
2022年7月11日6:36PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
河童忌は芥川龍之介の忌日(7月24日)です。俳号が餓鬼でしたので、餓鬼忌や
龍之介忌とも呼ばれます。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年7月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【河童忌】
河童忌の遅き洗顔終えにけり
河童忌や何故か「太宰」を開きをり
河童忌や紫煙におのれ韜晦す
一言で終へる我鬼忌のアンケート
文学の虜になりて河童の忌
置き忘れ置き捨てた郷河童の忌
河童忌や洛陽の門暮れなずむ
河童忌や自転車を押す狸坂
河童忌の吾も河童も居場所なく
河童忌やぼんやりとした雨の降り
河童忌や原稿裂けば深き海
河童忌や初体験の導眠剤
河童忌や自由が招く死の世界
伸びすぎの前髪かき上げて我鬼忌
なんだかなにもかもいやになる我鬼忌
河童忌や戸棚の椀の伏せてある
河童忌や寺町にある門恐し
河童忌や天にも地にも湧く不安
蜘蛛の糸ちぎれてひさし我鬼忌かな
河童忌の向日葵折れるままに咲き
河童忌のチワワが偉いので平和
河童忌や老いと向き合う理髪店
河童忌や授かりしまま会へぬ子と
河童忌やセピアの文庫活字かすむ
河童忌と気づく文弱社に疎し
河童忌の黒焦げとなる目刺かな
河童忌や夫のくせ字のよくうねる
雨上がり蜘蛛の巣ひかり河童忌や
河童忌や透きとほりたる緑色
河童忌や築地少年住居跡
河童忌や文庫本手に当所無く
河童忌の採血五本黒濁り
人去れば一つ椅子空く我鬼忌かな
河童忌やながらへて事なさずゐる
河童忌やずぱりと切れる裁鋏
鉛筆をナイフの滑る餓鬼忌かな
河童忌や雨滴に残る空の色
河童忌や遺品となりし男足袋
人間の戦争愚か河童忌よ
河童忌に新人作家でも読もう
河童忌や熱風のはや逝き去りぬ
河童忌や母校下町どぶの河
河童忌の帰巣本能浮かべ海
ワン切りの電話ゾクゾク河童の忌
留守電にいたずら電話河童の忌
河童忌や好きな作家はなぜか自死
河童忌やそらを見上げる麒麟の目
少女らの黒髪に艶我鬼忌かな
河童忌や東京遠くなりにけり
河童忌やありふれた夜の終はるとき
箴言を掲げ我鬼忌のコラム欄
河童忌や母の命日三日あと
靴下の薄く光りて我鬼忌かな
河童忌のゆるりと朝の生まれけり
河童忌や雨の本郷三丁目
河童忌やカレーに茄子の薄くあり
河童忌や割れたお皿を捨てに出し
河童忌やイヤフォン越しの汽笛聴く
河童忌を烏賊は灼かれて身悶える
河童忌の紺の手ぬぐい絞り切る
河童忌の字体ざらつく藁半紙
河童忌や雑草という草はなく
河童忌や堂守の死を知らさるる
河童忌やボオドレエルの何行目
河童忌の人のかたちの揺らぐ道
河童忌の書を売りしのち古着買ふ
血を分けて継ぐ病あり芥川忌
書きさしのペン走らすや河童の忌
河童忌や河岸のはずれの洋食屋
河童忌の瀞やはつきり眼を映し
文学に遠し残業我鬼忌かな
河童忌や樹梢に巣はる女郎蜘蛛
河童忌や黄ばみの古書に匂ひけり
ついうつかり信号無視の我鬼忌かな
河童忌に尾頭つきを焼く鰥夫
頻尿が理由に出来ぬ河童忌に
河童忌や穂高を右に梓川
蜘蛛の囲の雨滴に破れ河童の忌
河童忌の青きペディキュア落としたる
部屋の隅妙に気になる河童の忌
本棚の広き抜きあと我鬼忌かな
河童忌や量の増えたる睡眠薬
色鉛筆一本足りぬ我鬼忌かな
弟の無心がつづく我鬼忌かな
河童忌や湯呑みの底に溜まる茶葉
河童忌のわからない歌くちずさむ
掃除機に巻きつく糸や河童の忌
河童忌や父の遺せし全集本
河童忌や赤子ぐずぐず泣き止まず
河童忌やともだちといふ共依存
河童忌や河童ひよつこりいじらしき
河童忌に目玉の開く黒い雲
河童忌や淵に戻らぬ青き影
河童忌の蛇口ゆるんでゐはせぬか
授業では河童忌の説明短くて
部屋の隅薬一粒河童の忌
煮え切らぬ男仕留めて河童の忌
罪と罰この世は地獄我鬼忌かな
河童忌に今年こそ行く上高地
蕎麦食べて河童忌想起のタイミング
根回しの有りや無しやを河童の忌
河童忌やギョロ目天才芥川
河童忌の鼻毛を植えてをりにけり
河童忌や何やら騒ぐ明烏
河童忌や書肆吹き抜ける風一陣
独走の影重かりし餓鬼忌かな
先生を蚊帳に押し込め河童の忌
河童忌に遠野へクゥを尋ねけり
河童忌や書斎の窓をぼんやりと
河童忌や戸棚の奥の皿を出し
河童忌や吾呼ぶ山河花の群れ
河童忌や泡から湧き出す子蟷螂
河童忌や道の真ん中歩きけり
河童忌や水にさらせばうかぶ文字
化粧せし息子の主張河童の忌
河童忌と黒板に書く教師かな
河童忌や砥石にあてる井戸の水
河童忌や煙草に言及する芥川
河童忌や下人はここに生きておる
河童忌の頁ふかくに煙草の香
漱石の句集紐解く河童忌に
河童忌や長屋連なる軒の空
河童の忌静かに鎖す思ひかな
読み直す文庫本あり我鬼忌かな
河童忌やガジロウの待つ福崎駅
河童忌や堂開け放し座禅組む
河童忌を知らぬ先生居てもよし
河童忌や老犬の伏す朝の駅
河童忌や市立図書館整ひし
振り向けば濡れし足跡河童の忌
河童忌や苦手な読書感想文
河童の忌蓋し最後の戀なれば
河童忌の首がななめになつてゐる
河童忌の安いだけあるジェネリック
薄切りのレモン浮かべて河童の忌
河童忌や軸の達磨の睨む闇
河童忌に河童探して遠野かな
痘痕のように地雷埋めて我鬼忌かな
河童忌や作家泊りし吉野窓
河童忌や書棚に薄き文庫本
河童忌の憂ひ顔なる美人かな
河童忌や羅生門にも朝は来ぬ
河童忌や牛乳飲みし築地川
河童忌の長き廊下を果つるまで
舟底の生け簀の温き餓鬼忌かな
河童忌や硝子の家を出づるとき
河童忌や時折思ひ起こすひと
ひとりずつ拝す河童忌の神社
河童忌の果ててメールを打ちにけり
河童忌と思い起して汗滲む
河童忌の夜闇に還る羽音かな
河童忌や古本街を歩きけり
ぼんやりと不安な選挙後よ我鬼忌
河童忌や隠語辞典とうたた寝す
河童忌の髪を切りたる婚約者
肉片に似る河童忌の粘土かな
河童忌や雨戸のレール軋む朝
河童忌の部活めきたる職場去る
河童忌や炒り胡麻香る蛸胡瓜
氷嚢を頭にのせて河童忌を