兼題「向日葵」__金曜俳句への投句一覧
(7月29日号掲載=6月30日締切)
2022年7月11日6:44PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
向日葵(ひまわり)は北米原産のキク科の一年草です。盛夏に大きな花を
開きますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年7月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【向日葵】
向日葵の渦巻く種の厳格さ
長距離のトラック揺らす照日葵
向日葵と背比べする少女かな
向日葵の雨に濾過して薄まる黄
陸路は向日葵続く休耕田
向日葵や残り二枚の絵日記帳
向日葵や球児溌溂甲子園
通過してミニ向日葵が何本か
向日葵の花より種や籠のリス
大輪の向日葵昇る大き蟻
向日葵の大きな命吾を囲む
吾子よりも大きくなりし日車の子
向日葵や誰にか似たる立ち姿
向日葵の一輪挿しの新居かな
向日葵のカリフォルニアを見やるごと
向日葵の枯れてさ迷ふ番外地
ひまわりにほうれい線を咎めらる
向日葵の鉈に激しく抗へる
向日葵や黒き瞳の男の子
向日葵や路上検定教習車
ひまわりのいやいやながら固まつて
向日葵の広場を帽子行き交へり
海へ咲く向日葵がんばろうの文字
馬の眼に映る向日葵畑かな
向日葵に覗かれてゐる昼餉かな
ひまわりを鏡にフェイストレーニング
向日葵のただ立ち尽くす高さかな
向日葵も「ストップウォー」叫びけり
向日葵は己が重さに俯けり
裏道に顔覗かせる向日葵や
向日葵の咲きて終りに一学期
向日葵にゴッホの耳のゆくへ問ひ
村一つ大向日葵に染めらるる
向日葵やまだ贈り物決めかねて
向日葵のような傷持つ少女かな
向日葵と青空ばかりなり十勝
ひまわりの青き空から日射し照
向日葵畑巨神兵たち陽を覆い
向日葵のなかで日暮を見失う
向日葵と逆方向に歩きけり
向日葵の強気の揃ふ高さかな
大胆と繊細 ひまわりのように
火山灰うすら日輪草あまた
近づけばわれに近づく向日葵か
向日葵の中へ降りたる観覧車
向日葵の背伸びして見る故郷かな
ひまわりの凛とたたずむ青い空
ひまはりやステンドグラス割れてゐる
向日葵にきこえるやうに缶のふた
向日葵や早く見せたき通信簿
向日葵や窓に大きな観覧車
向日葵の黄色花やゆれる雲
一面の向日葵なれば発電す
校庭の向日葵仰ぎ背くらべ
向日葵や二の腕しろき女あり
向日葵にやさしさ強さ貰ひ受け
ウクライナの戦場跡に向日葵咲く
ひまはりの向かう真青な海広し
立ち群れてブランコ見守る向日葵や
向日葵の茎の産毛を撫でてみる
静寂のなかや向日葵咲き続き
向日葵やちよつとトイレへ泣きに行く
向日葵や画用紙にある表裏
向日葵の強きに耐へて土の罅
向日葵の道奪いたる伸びし影
向日葵や潮風に葉の荒びをり
ひまわりの花の近くに変な人
向日葵を蟻・蟻・蟻と大蟻と
向日葵の高さに婦人小犬抱く
向日葵の高さに妻の声のする
向日葵で居続ける母偏頭痛
向日葵や祈ることしか出来ぬ夜
晩鐘やひまはり影を細くして
向日葵や悲しいくらい青き空
かき分けて向日葵畑かくれんぼ
向日葵や校庭ちさき影ばかり
踏切の夕の路傍の向日葵よ
向日葵や背比べする無人駅
向日葵や黄金だらけを鳥掠め
向日葵のやうな笑顔で値上げせり
向日葵の黄の燎原に広がれり
作り笑ひするごと夜の向日葵は
向日葵に沈む子どもと母の声
ひまわりが野の扇風機ともなれば
向日葵や三者面談まとまらず
ひまわりの迷路にはしゃぐ三世代
向日葵に向日葵のごと笑いけり
向日葵の廊下に懸かる薬缶かな
向日葵の野に広がれる国境線
ウクライナ向日葵を追ふ女をり
ひまわりや遠き希望の後影
向日葵や闇を包んでゐるやうに
向日葵が太くて長くて根を見せぬ
向日葵や光りて虚ろなる鏡
受けとめる側の生き方天蓋花
向日葵や濃き青空の果つるまで
向日葵に見せられる顔ではないし
向日葵や日暮れに緩む水平線
向日葵の俯く貌を見上ぐ顔
友達は反省のなき向日葵に
校庭に向日葵二列縦隊す
向日葵や雷門はサンバの日
向日葵の立番光る駐在所
向日葵や海向ひたる廃線路
向日葵や気付かぬ父を見て帰る
向日葵の裏のあそこが急所なり
向日葵や生ききるための支柱もつ
向日葵や赤色差して写生の子
ひまわりのだんだんいやになる時刻
向日葵の後姿にみる孤独
向日葵やアンダルシアの地平線
向日葵の黒に一日の熱こもる
向日葵やかつて健康優良児
銀輪の音風を切り照日葵
一徹な老爺の面輪日輪草
向日葵の早も咲きたり退院日
向日葵や水遣る人の背丈越ゆ
ひまわりがコロナに見えて立ちすくむ
向日葵や今朝兵役を終へし歌手
待つ間対話が出来ぬ向日葵と
向日葵の雨もこぼさず顔に受く
お辞儀する向日葵もあり通学路
ベランダに遠慮がちなり天蓋花
向日葵や悪女は三度ベル鳴らす
戦ふや向日葵の国ウクライナ
しおりなき旅の向日葵畑かな
向日葵のしほたれてゐる月光下
向日葵の群れて人のなき谷戸の畑
向日葵のゴージャスな黄に燃え上がる
向日葵や地の無き星に面有らず
薬局のよこに向日葵ある空き地
向日葵の濡れたる義姉は元女優
向日葵へ日は燦々と降り注ぐ
向日葵と戦死者ばかりウクライナ
中庭の向日葵眺め昼支度
哲学は向日葵要らぬ分野かな
向日葵の無言の問いに倦み疲れ
向日葵の横面撃つて慈雨来たる
向日葵やいつか帰化するエトランゼ
向日葵の夜空を遠くみおろせる
ひまわり畑着弾音ひびく大地の
挨拶す伏し目がちなる向日葵に
雪隠や向日葵畑へ忍び込む
向日葵を咲かして母のVサイン
子らの声吸ひて向日葵笑みのあり
遥かまで向日葵畑続きけり
向日葵の真中にうつくしき瞳
向日葵へ天上からの風渡る
海原の渇きを風は向日葵へ
振り下ろす拳のさきの向日葵や
向日葵の白みてや亡き姉の声
ふたりには夜の向日葵の星のごと
向日葵の迷路少女に還る路
向日葵やそれでも立つてゐる校舎
玄関で待つ向日葵のワンピース
十字路を手にひまはりの婚約者
向日葵の影踏み歩く家路かな
向日葵の気づけば子等の背丈ほど
向日葵の瞳に吸ひ込まれ異界
頸を垂る向日葵の顔見たく無し
大向日葵は縄文人の貌持てり
向日葵や銅貨の青く匂ふ土器
向日葵やテナーウクレレめく呼吸
向日葵のこころをもちて生きにけり
向日葵や金メダリストは一人だけ
向日葵を見上げ一人の埃道
向日葵の渦巻く花と蜂の舞
向日葵や出立前の身繕い
ひまわりは兵隊さんの声がする
眼差しに渦巻く憂ひ天蓋花
向日葵やイタリア女の涙あと
向日葵を項垂らせたる日の重み
ひまわりのさみしくなれば我もまた
路地裏に直立不動大向日葵
出迎への向日葵五本無人駅
声だけや向日葵畑のかくれんぼ
ひたすらに向日葵海を望みをり
これほども向日葵埋める一揆の地
向日葵の微笑みながら隠す死者
向日葵やソフィアローレンなる女優
向日葵や潮引く浜の砂硬し
向日葵のやがて傾く通学路
向日葵の風に騒めく黄色かな
向日葵や茎にゴッホの耳あると
向日葵の高く勇気を叫びおり
向日葵や車窓に過ぎるベランダに
向日葵の影に重なる子の背丈
向日葵のこうなるとうつむき加減