兼題「秋果」__金曜俳句への投句一覧
(8月26日号掲載=7月31日締切)
2022年8月2日7:27PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
秋果とは秋の果実の総称です。桃や梨、柿、林檎、葡萄などたくさんありますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年8月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【秋果】
美術部の秋果の籠へ斜光かな
売店で秋果の講義を受けにけり
バス停に秋果拡げて客を待ち
恋人に近き距離感秋果並ぶ
艷やかに満つ甘さかな秋果盛
思い切り値の張る秋果食ふ勇気
焦茶色の風に転がる秋果かな
秋果盛る足りぬは空の青さだけ
隣人は庭に住むのか秋果かな
在りし日の笑顔に供ふ秋果かな
手慣れたるペティーナイフや秋果剥く
わたくしを選ぶがごとく秋果買ふ
秋果手に乗り込むバスの少し揺れ
農道に鳥の走りて秋果かな
朝市の採れたて秋果露乗せて
秋果間違ひがあつても大丈夫
庇から溢れるほどに秋果積む
縁側に秋果ならべて寡婦の夜
難しい名前で甘い秋果かな
履歴書を書き了へて食ぶ秋果かな
秋果買ふ少し贅沢したい朝
秋果一つ二つ五つと揃いゆく
秋果盛るホフロマ塗りの木の器
最北の瑕あれど盛る秋果かな
豊かなり秋果山にも畑にも
山あけび割れて果肉の柔き白
秋果探す梅田の地下に迷ひけり
秋果持ち無人の駅で父を待つ
秋果盛るどの灯も火宅なり
陽に透けし樹上の熟柿母へ?ぐ
まるまるとマルシェのをんな秋果積む
作り手のながき労わり食ぶ秋果
美術部に届く秋果のどっさりと
ありがたき説法聞けり秋果かな
朝の市ひとつおまけの秋果かな
ありあわせの鉢に初物秋果盛る
水いつも流されてゐる秋果かな
秋果満つ団地目当ての青果店
名の知らぬ秋果並びしマルシェかな
自粛解き米寿の友へ秋果かな
秋果剥く爪の長さを見られつつ
みずみずし秋果の油彩色褪せて
秋果食み遠かりし日を噛みしめる
富士山の時折り見ゆる秋果かな
木の上の熟し林檎の甘きこと
それぞれを家族に見立て盛る秋果
水の音聞こえて秋果届きけり
兄嫁の好きな秋果を選びけり
秋果食ふ湯上りの吾の肌哀し
朝市に秋果完売歯抜け婆
生産者の名入りの秋果道の駅
微かなる秋果が匂ふ桐の箱
様々な秋果に歌ひ出す人が居る
実朝の大皿に盛りたき秋果
セザンヌの構図に置いてみる秋果
秋果見て奇人変人想起する
瑞々しき秋果のかほる青果店
七色のぜんぶ輝く秋果かな
秋果盛られ店に増えたる笑ひ声
鍵つ子やテーブルの秋果とナイフ
腰を折り秋果とりどり品定め
日輪をもぐやうにして秋果もぐ
秋果手にニコライ堂や晶子詠む
湧水に秋果を浮かせ津和野路地
秋果売りはて箱ごと虚空くずしけり
フルートの錆と秋果と午後の窓
宅配のベルに秋果のダンボール
祭壇の笑顔が映ゆる秋果かな
ふるさとの水たっぷりの秋果来る
外つ国の秋果並べて千疋屋
日没の香の移りたる秋果かな
帰省して仏迎えし秋果盛る
セザンヌの絵ほどの秋果病床に
秋果盛りどれかに顔がありさうな
いろいろの色ありあまる秋果かな
手を誘ふやうに盛られし秋果かな
スーパーに地元の秋果盛る翁
寺町の路地に秋果の棚くぐる
船底に秋果匂へり島の夜
ゆゑなくて盛られるかたちへと秋果
テレビ消し卓袱台にある秋果かな
セザンヌの名画のごとく秋果盛る
秋果店色とりどりの華やかさ
気づかざる傷ある秋果見切りの値
デッサンの初回は秋果持参せり
越した日にテレビのなくて秋果買ふ
左手は物言はぬ腕秋果持ち
美し国秋果の香りみな亡くし
少年の夜に籾殻の秋果掘る
秋果売る小店の奥の窓に海
くちづけの仄かに香る秋果かな
秋果?くけふの展開図のごとく
秋果盛られ誰も詩人になるといふ
甥つ子の復誦秋果匂ひけり
ふるさとの秋果を食めば姪の笑む
お多福の吾子の秋果を選ぶ指
スパークリングワインに足せる秋果
切れば声もらすがごとく秋果の香
デザートの秋果ひとくち添へしカフェ
油絵のやや色あせし秋果かな
ダイニング机に傾ぐ秋果かな
色と香の秋果をよくぞ揃へたる
秋果買ふユーロセントのお釣来る
地価騰がる都心の隅に熟る秋果
亡き人に見惚れて実る秋果かな
てのひらの秋果のいびつなる湿度
母と行き一人になれば秋果かな
竹笊に秋果いろいろ農婦来る
お下がりの秋果ほどよく熟れてをり
祭壇に写真と秋果三回忌
描き終へし秋果を攫ふ小さき手
食欲の戻れるころの秋果かな
デパートの地下の秋果や高貴なる
モンローの視線の先の秋果かな
母のもぐ秋果に老いの影落とし
川沿ひにたつ朝市や秋果の香
秋果待つ今年の味覚便りなり
病棟で泣きたる夜の秋果かな
名を知らぬ秋果を盛るや道の駅
朝の卓秋果に添える肥後守
リモコンの横にごろんと秋果かな
秋果買ふ店の親父は句友なり
テーブルを秋果のために空けておく
くちびるを離れて秋果たわわなり
落つ秋果土塀の上に飾りけり
お駄賃にせよと秋果の二つ三つ
八日目の画材の秋果青を足す
地球儀の傾くやうに秋果熟る
よかつたら一つ持つててよ秋果
地下酒場ひかりて客を待つ秋果
海からの風に色づく秋果かな
ありふれた朝にも秋果積まれけり
大盛りのトルコライスに秋果添へ
青き空青き秋果を頬張りて
妻の許可とらずうつかり秋果買ふ
描き終える前に秋果に手をつける
郷愁のそこばくもなき秋果かな
秋果三昧少し贅沢覚えたり
節太のマダムの指や秋果選る
秋果提げくらい電車に乗りにけり
箱入りの秋果抱へて赦し乞ふ
英字紙に秋果包まれ荷の届く