兼題「星月夜」__金曜俳句への投句一覧
(9月30日号掲載=8月31日締切)
2022年9月6日6:08PM|カテゴリー:未分類|admin
秋の夜は星が美しいですね。とくに新月の頃の星空をたたえて星月夜といいます。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年9月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【星月夜】
二人ゐて二人で見をる星月夜
眠るとき外す付け爪星月夜
星月夜だれの日記を読みましょう
せせらぎを聞く山間の星月夜
目の碧き少女の吐息星月夜
星月夜リハビリテーションより帰還
重ねたる旅の歳月星月夜
テント場の星月夜こそ賑ははし
まつたうに生きてさびしき星月夜
瞬きてまた瞬きて星月夜
星月夜職員室の灯の消える
星月夜もう口づけの薄くなり
星月夜島に一つの信号機
星月夜うつむいて行く二人連れ
かき揚げのからつと揚がる星月夜
水車小屋のゴーシュは寝たか星月夜
先逝きし妻の話を星月夜
星月夜間口の広き恋の文
自転車を漕ぎ疲れたよ星月夜
星月夜独りの帰路は歌ひけり
放牧の馬に明るき星月夜
地球という星が見えない星月夜
星月夜終電車にて無人駅
星月夜希望が丘の団地老い
星月夜こんなところに一軒家
星月夜シテ役の父ほしいまま
星月夜沸き立つビルの砂漠かな
猫足のカフェのテーブル星月夜
読み聞かすギリシャ神話や星月夜
国葬は嫌だ嫌だよ星月夜
満たされしグラス煌めく星月夜
困難は分割せよと星月夜
猫の目の高さへしやがむ星月夜
廃坑の煙突高し星月夜
山間にせせらぎ聞ゆ星月夜
星月夜アインシュタイン語る父
天の川真上に流れ星月夜
こんな日に死ねるなら良し星月夜
叢の開拓の碑や星月夜
幾たびの夢を吸ひ込む星月夜
億年のきらめきとわに星月夜
降るほどに犇めく空や星月夜
うずたかき答案用紙や星月夜
星月夜あの日の海を吸い上げて
星月夜スーパーコンピューター悩む
杜影やトトロは眠る星月夜
町の火事消えて静かに星月夜
残されし小箱の秘密星月夜
星月夜坂を上れば星が丘
星月夜湖は静かな古鏡
星月夜いつしかひとりテント出づ
星月夜避けて性的マジョリティ
星月夜単独行の野天風呂
星月夜勝手に決まりゆく未来
星月夜耳朶を擽る風の声
山羊皮の干されしままに星月夜
星月夜目立たぬ星座その中に
裏劔池に落として星月夜
いちまいの磁石に指紋星月夜
車椅子とめてふたりの星月夜
星月夜カメラ小僧の成れの果て
戦闘の死にゆく者に星月夜
波の音息継ぎに似て星月夜
草露の匂いかぐわし星月夜
深呼吸して吐く魔法星月夜
星月夜開けっ放しのサンルーフ
メール待つわけでもなくて星月夜
星月夜天馬の蹄までも見え
老少年口笛を吹く星月夜
空井戸や砂仄白む星月夜
宇治橋の塔の上なる星月夜
星月夜今日の仕事は終わりけり
レコードに針を落とせば星月夜
宴なき暮し続きぬ星月夜
星月夜手鏡のせて独り占め
星月夜ストーンヘンジは丘の上
はるかなる父へ返盃星月夜
あいさつをかはす老人星月夜
星月夜闇と光りの的(あき)らかな
さりげなく腕くむをんな星月夜
石舞台はるか星月夜のボレロ
星月夜フルートの音の掠れゆく
しまい湯の女杜氏や星月夜
ホータンの川石白し星月夜
まだ一つ寝ざる窓あり星月夜
パンドラの箱より出でし星月夜
星月夜さかなのなみだ乾かざる
トンネルの出口に白む星月夜
噴煙の島を抜け出す星月夜
星月夜野末にホウと汽笛鳴る
採点を終へて広がる星月夜
天球は揺らぐものなり星月夜
どこからか猫集まりし星月夜
逍遥の背をセロ流る星月夜
星月夜切れしあの日のネックレス
星月夜北辰小さく円を描く
盛り場のマスクの死体星月夜
お月さん出ないで私の星づく夜
しづかなる湖の水面の星月夜
星月夜勉強やめて語らうよ
内耳ごと音求めたる星月夜
音に満つ犬吠埼の星月夜
星月夜いのちをみつむ無言館
G線の音澄みわたる星月夜
隣家より歌の漏れくる星月夜
鏡中の見知らぬ老いや星月夜
十字路に立つのは賢治星月夜
祖父の背に負はれし記憶星月夜
侵攻は果てなき愚行星月夜
出奔の父の星あり星月夜
故郷の母置いてきた星月夜
山頂のテラス星月夜のピアノ
星月夜猫座のありしその昔
亡き父に逢へる気がする星月夜
汽車の窓の灯の一列に星月夜
ピラニアの肌の煌めき星月夜
山頂をあした極めむ星月夜
星月夜鯉まで人をたぶらかす
町の灯の遠き丘なり星月夜
双子には同じひかりや星月夜
サボテンの影くつきりと星月夜
コンサートの照明落ちて星月夜
星月夜宇宙の黙のやかましさ
信濃路の峡の先に星月夜
眠りたる子と酔つ払ひ星月夜
星月夜つげ義春の日記読む
星月夜寄せては返す波の音
病棟へ戻る娘や星月夜
星月夜読めぬ漢字のふたつみつ
三分で泣き止む特技星月夜
やさしさの噓の匂ひや星月夜
宿題の百のレポート星月夜
星月夜川の河童の眠る頃
星月夜妻と病気のはなしなど
研修の門限十時星月夜
廃駅に一呼吸して星月夜
新しきいのちをむかう星月夜
さっきまでガリレオも居た星月夜
星月夜回転木馬の夢の後
存在す星月夜見る消滅す
星月夜亡き友母校のあの辺り
あの窓はパン屋の灯り星月夜
星月夜村人のもの村のもの
全て違ふ色をしてゐる星月夜
瞬きを囁きと聴く星月夜
東京都青ヶ島村星月夜
星月夜フォークソングのCDを
牧草の丘ごろごろと星月夜
捨つる句のあまたあふるる星月夜
星月夜かぜにしづかに遮られ
終電の帰路を照らすや星月夜
林間を走るにつれて星月夜
電力の足らぬ足立区星月夜
目覚めたら見知らぬ町の星月夜
手のひらの透き通りゆく星月夜
星月夜天動説を肯へり
星月夜寺標をなぞる細き指
うるはしき名前の支流星月夜
星月夜慣れざる目にはほぼ闇夜
亡き友の固まっている星月夜
勝手橋朽ちて影なす星月夜
この星も仲間の一つ星月夜
星月夜入浴剤は樹のかおり
ビル街の狭き空にも星月夜
川屋まで川の匂ひの星月夜
星月夜見上げて歌ふセレナーデ
砲声の止みし草原星月夜
星月夜ウユニ塩湖といふ奈落
峠道ネオン見下ろす星月夜
生きたいとひたすら願う星月夜
乳の香に包まるる星月夜かな
狼の遠吠えかしら星月夜
唐臼の音の変はらず星月夜
ユキオンナホシオンナとなる星月夜
真四角に開く天窓星月夜
仏壇に折紙供ふ星月夜
調律の仕事終りの星月夜
山脈のヴェールのやうに星月夜
星月夜ビッグデータを打ち込みぬ
亡骸を宇宙(そら)に鏤む星月夜
明日の来る前の会場星月夜
星月夜ギター一本子を救ふ
野狐(やこ)棲むてう野中の道の星月夜
老い犬の片目の濁り星月夜
言ひたくて誰にも言へぬ星月夜
星月夜文字盤光る時計台
故里の空やはらかく星月夜
星月夜素数言ひ合ふ勝負かな
待ち合せ場所の人影星月夜
星月夜さしでがましい母の眼や
寝静まり浮いてゐるかな星月夜
コンビニてふ穴へ落ちたる星月夜
臨月の子どもに見せむ星月夜
基督も釈迦も知らねど星月夜
星月夜星巡りの歌口ずさむ
草原の羊を寝かす星月夜
見開きのすでに思ひ出星月夜
砂に祈るムスリム一家星月夜
ひそひそと声かわし合う星月夜
これ以上増えれば寂し星月夜
星月夜あまた細胞生き還り
樹の陰にゴッホ佇む星月夜
山頂の褒美のごとき星月夜
星月夜起こせよ古墳に眠る人
抽斗のような改札星月夜
星月夜眼ばかり光るナイトズー
星月夜職員室の灯の消える
百人と飛び立つ航路星月夜
星月夜どちらからともなしにキス
路地裏を老人ふたり星月夜
両替のできない硬貨星月夜
水色の城が遠くに星月夜
風疾し雲が動けば星月夜
採点を終へて広がる星月夜
峻険な山に挟まる星月夜
星月夜人魚の歌ふ子守唄
カクテルに名前を付ける星月夜
研修の星月夜にも飽きにけり
ライト消し車包むや星月夜
星月夜いろんな脳と語りたい
星月夜病を告ぐる時差電話
褒められし爪のかたちや星月夜
瞬きてまた瞬きて星月夜
終着駅まで乗り過ごし星月夜
夢に見し静かな暮らし星月夜
妖精の手首の細し星月夜
山間の小さき空なり星月夜
牧の木々そわそわとして星月夜
お互ひを瞳に映し星月夜