兼題「おでん」__金曜俳句への投句一覧
(12月23日号掲載=11月30日締切)
2022年12月8日2:17PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
おでんは江戸発祥らしく、関西では「関東煮」と呼びます。冬のご馳走ですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年12月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【おでん】
最終は出汁昆布のみおでん酒
おでん酒しらたきまでは記憶せり
おでん屋に老人ひとり入りけり
おでん酒外れ馬券の話から
戻りたしおでんを連れてあの路地へ
ガード下ばくだんつつくおでん酒
天神さんの鬼が睨んだ石蕗の花
エルメスのバック片手におでん屋へ
おでん鍋いろいろあってみんないい
翌朝のおでん小鉢に移しをり
強面の緩む熱々おでんなり
新しい朝の葉音やおでん酒
蒟蒻のお為ごかしもおでんかな
このごろは空見ることなくおでん喰む
湯気の中ユラリゆらりとおでんの具
おでん食うとなりの人も左利き
おでん鍋しつとり曇るガラス窓
陶器市帰り路には白おでん
おでん食ふ順はおぼへてゐたる父
おでん鍋じんわり沁みてくるセリフ
今は大好き大根揚げのおでんかな
じつと見るおでんと話すタイミング
湯気あげるおでん鍋や具を数え
コンビニのおでんの湯気のやや侘し
マイ箸に毀(こぼ)つおでんの卵焼き
かの人のやうに面取りせぬ大根
嫁乳がん気づけばおでん汁もなく
おでん出汁浸みて味良し茹卵
大根にほだされてゐるおでんかな
おでん鍋ぐつぐつ煮ている過去未来
おでん屋の建付け悪き硝子窓
おでん屋で酒注ぎ合ふも他生の縁
空腹の思い通じるおでんかな
凛々しきは開店を待つおでん鍋
大鍋のおでんに歓声上げしころ
その筋の男の選ぶおでん種
解説や説明おでんは要らぬかな
子のためにおでんに入るるウインナー
おでん酒何革命の夜明け前
嫌なことほぐれはじめしおでんかな
おでん鍋眼鏡くもりて昆布探す
映画論おでんに舌を焼きながら
おでん煮る鍋の凹みが愛おしく
おでん屋の爺に送られ初赴任
巾着を取り合う子らよおでんの夜
いいあじのおでん老若男女ゐる
蒟蒻に隠し包丁おでん染む
おでん屋のいつも手ぶらで来る男
おでん鍋囲みて恩師小さかり
家飲みのコンビニおでん妻の留守
能書の多き人ありおでん酒
いろいろに抱かれてみたしおでん食う
妻の留守おでん三日に独りごち
ひらがなの三文字おでん暖簾割る
ガラス戸の高音も薬味おでん酒
乗り損ねし銀河鉄道おでん酒
塾の子とパート帰りとおでん喰む
蒟蒻の切り込み真似ておでん種
行きずりの人であれかしおでん酒
おでん屋はつとに縁なしふたり鍋
相槌の目線は低くおでん鍋
ひとりもん三人寄りておでんかな
まだ芯の残るおでんの日暮かな
こんもりと辛子灯りぬおでん皿
雨音を靴音と聞く一人おでん
おでん喰ぶ問べば答へのわかる人
川沿に並ぶ提灯おでん酒
おたくさん誰父に言われておでん食ふ
我がルーツ語れば虚しおでん酒
交々に煮えて安けしおでん鍋
おでん屋へ肩甲骨の辺りから
よそ行きで来しこと悔やむおでんかな
おでん鍋それぞれ主役共存す
コンビニの一番人気おでん買ふ
論破したのかされたのかおでん酒
再会の眼鏡曇らせおでん酒
浸み込みしおでん我が身は塩臭く
友達にはなれぬ親子やおでん酒
鍋奉行具を数えたりおでん鍋
独り居の厳選したるおでん種
溢るるほど膨らみおでん失敗す
おでん酒息子ゐながら夢のまま
おでん鍋大根蒟蒻竹輪昆布
父開けるおでんの蓋の重々し
おでん鍋昨夜と同じ話して
おでん鍋昆布のひねりの残りけり
定番のおでんの種を避ける人
おでん酒実直ぶつて雁擬
急かるるや土鍋のおでん煮へしとき
店の名は「おたん」女将のおでん自慢
おでん酒ふわふわ気分外は雪
大根増し御一人様のおでんかな
帰り待つ時間でおでん味が染む
本名を知らぬどうしやおでん酒
子ら四人おでんの湯気に手を叩く
おでん串振りたる若き正義論
大将に任すおでんの盛り合わせ
夜散歩おでんの夜を待ちわびて
おでん酒ほろ酔い機嫌で幸となる
温燗で想い出話におでんかな
関東煮卵の黄身を溶きくづし
おでん酒イワンは馬鹿と言ひきれず
家の扉を開けりや気がつくおでんかな
おでん煮て竹輪の中の暗さかな
寸胴の鍋いっぱいにおでん煮る
沁むといふ言の葉ありておでんかな
真冬日に酒とおでんが沁み渡る
大鍋におでん女子会始まりぬ
笑ひ声しろく広がりおでん煮る
かあちゃんの留守のメニューはおでんかな
コンビニのおでんぶら下げ友は留守
蒟蒻がやけに大きいおでんかな
あれこれと詰め込みすぎたおでん鍋
おでんやのおやじに漏らす忍びごと
おでんつゆプラの容器に透きとほる
真相に迫る一献おでん酒
労働者の匂ひあふるるおでんかな
おでん提げ風に押さるる夜夜中 (よるよなか)
おでん鍋餅巾着のひしめきぬ
竹串が蓋をはみ出すおでんかな
おでん酒お国自慢やら孫やら
沈まない沈みたいないおでん種
おでん煮て一旦しまう今日の愚痴
天気図におでんの湯気の見へてきし
老二人食べるおでんの黄金色
ことごとくおでん屋台に誘はれ
熱弁とおでんに曇る眼鏡かな
定番の上司批判やおでん酒
論客の大言壮語おでん屋台
しくじりに背(そびら)を押されおでん屋 へ
おでん鍋亡き人の味真似てみる
海賊の目で子はじつとおでん鍋
たたら踏む音の大きやおでん酒
おでん屋のおやじの娘似てをらず
公園へ熱つつのおでん子と買いに
おでん屋の紅上げの灯に「ん」の太し
おでん屋の親爺何かと絡み癖
大根のもう面取りせずおでん鍋
おでん屋の前にL字の客の列
おでん酒いづれは妻となる人と
昭和歌謡流して一人おでん鍋
おでん屋に倍賞千恵子いたような
関東煮羅臼昆布で出汁をとり
お呼ばれの鍋に見慣れぬおでん種
おでん食べ心の中に馬描く
大和まほろばコンビニおでんならぶ卓
おでん煮ゆ世界同時に株安く
出汁の味おでん懐かし北の街
追憶の辛子を効かすおでんかな
おでん鍋みんなの旨味さしすせそ
おでん煮ゆおもふは遠き海ばかり
杉蓋に出汁の匂ひやおでん鍋
味の良きおでんため息つきながら
胸さはぎするかの如くおでん煮る
おでんかなはんぺん好きにほっほっほ
おでん煮ゆ大根まではあと少し
おしまひはため息となるおでん酒
おでん食む愚痴はく口を押へつつ
ふうと息赤べこ揺るるおでん鍋
おでん屋台のれんかき分け月を見る
おでん屋の戸口に都電荒川線
亡き人の味は難しおでん鍋
おばちゃんのおまけのガンモ関東煮
ここだけの話の煮へるおでん酒
おでん屋の鍋に隠るる安き品
おでん食ぶ夜はおのおの荷をおろし
ひとり居の廚に眠るおでん鍋
更くる夜のネクタイ湿るおでん酒
おでん食ふまずまず何とかなりそうな
おでんには味噌を足さねば食べられぬ
ここからは守秘義務なのでおでん酒
尻半分つめてもらつておでんかな
人も具も群雄割拠おでん鍋
おでん酒胃の腑に憂さが落ちてゆく
糸蒟のかますのおでん雪の街
おでん酒聞けば同郷同学年
おでん屋の汚れ具合も口に合ふ
出汁の味確かめる人亡きおでん
沸き立てるおでんの底にある罪科
袋切り温めるのみおでん種
腹ぺこに合はす大鍋おでんかな
残業果つやっと屋台のおでん酒
おでん食う知ったかぶりも板につき
おでん酒声落とせども息の濃し
予算案通過おでんの匂ひかな
君は根菜僕は練り物おでん鍋
おでん食うどうせ物理は赤点さ
出張のネクタイ外しおでん酒
おでん屋台おそらく神と隣りけり
金色のさざなみ寄するおでんかな
席ひとつ挟めば他人おでん酒
根菜の好きな女房おでん好き
おでん食ぶ海の匂ひのするやうに
傘とぢて明き屋台のおでんかな