兼題「角巻」__金曜俳句への投句一覧
(1月27日号掲載=12月31日締切)
2023年1月25日3:06PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
角巻は、雪国の女性たちが用いる、四角い毛布のような肩掛けです。肩から膝までをすっぽり覆うようになっています。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年1月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【角巻】
角巻やヴィヨンの妻の無表情
角巻や法に抜け道あるごとく
角巻の新作展示七彩に
角巻や夏目雅子といふ昭和
角巻に重たき銀の胸飾り
角巻や棄郷の母と子のあの日
手をつなぐマフラーの子と角巻の祖母
角巻の胸の膨らみ眩し君
角巻やパーマは二十歳まで禁止
角巻やふくらむ吾子眠りにつく
角巻を着慣れて寂し海の碧
室内で角巻脱げと言ふ先生
角巻や短く濁る津軽弁
角巻の立ち話する小見世かな
灰色の角巻重き北の町
天使にも角巻あたへ船進む
角巻の巫女残光となりて消ゆ
角巻にたましひまでも覆はれり
東京では膝掛けとなる母の角巻
角巻の房を揺らせて地獄坂
角巻の三角むすびあたたかき
角巻や朝市並ぶ裏通り
角巻の奥処に探し当つる鍵
角巻に秋田美人の香りけり
角巻や待合所はニベアの匂ひ
角巻の真中に小さき猫の顔
角巻をかぶる女の別の顔
翅朽させる角巻の重さかな
ねんねこの上に角巻朝の市
瞽女の着る緋の角巻の行く雁木
角巻を室内で着る人々ら
百年を古角巻はこの地出ず
母からの角巻まとい闊歩せむ
角巻や駒子のやうに艶やかに
角巻をぬらす涙や横手駅
めごぇ子の赤ぇ角巻すっぽりど
角巻の列しんがりを水煙
角巻やこみせ通りに木の匂い
角巻に積もりし雪が風に舞う
角巻や君との仲をくるんでる
角巻や秘めた思ひの二つ三つ
角巻に抱きて仔犬の里親に
バス停に翼広げて角巻来
角巻の秋田美人や黒目勝ち
角巻や轟き渡る日本海
角巻や津軽平野に閉ぢし空
スナックの灯消し角巻被りけり
角巻に顔といふもの貼りつけて
角巻にフリースをこじ入れてをり
角巻や待合室に眠る人
朝市や宿の角巻宿の下駄
角巻や鳥海山は雲の中
若き日の母の角巻赤きかな
角巻の瞳明るき雪の街
角巻や無人となりし島遠く
角巻ショー体育館の女高生
お揃ひの角巻のぼる女坂
角巻や有るか無しかの泣きぼくろ
角巻の肩から落つる別れかな
角巻や口まで覆ふ白き顔
角巻の風へ傾ぎて眼鏡橋
角巻の中に潮の音閉じこめて
角巻に隠れて母は薄化粧
一陣の風角巻を追ふやうに
角巻の角より先に会釈する
角巻の色より薄き紅を引く
ずるずると角巻引くきぬ母の留守
角巻やつり革手繰り立ちにけり
角巻や残りわずかの指定席
角巻や後姿の妻いずこ
赤光のなか角巻の商へる
角巻のをんな温泉卵食む
角巻や能登金剛は日暮れつつ
角巻や北の姉さのあたたかさ
角巻の隠すみちのく気質かな
角巻や明治大正昭和見ゆ
バスを待つ角巻の女絵のごとし
角巻の囲いし中に我が宇宙
角巻や母は三十路で身罷りぬ
乗車して角巻よりの雫かな
脱ぐ時は時間が掛かる角巻と
角巻を解いてじゃんがら酒場かな
角巻の座る木箱や能登の海
青と黄の角巻登る女坂
モノクロの角巻は黒色は赤
角巻や背中まるめて足早に
角巻や駅に「駒子」を見たと言ふ
角巻の新作いかにデザイン生
身を隠す角巻からの合図の眼
角巻のひと目を忍ぶささめごと
角巻のぞろぞろ降りるバスの口
角巻の小走りに入る驛舎かな
若き日の母の角巻いと重し
角巻や空のトロ箱走り出す
角巻の達磨のやうな雲連れて
角巻に命預けるその覚悟
角巻は母の見果てぬ海の色
角巻や拳ひろげて包むよう
角巻のおんながひとり日本海
角巻の無言や上野行き始発
角巻を巻いてみたが懐寒し
角巻や緋の色をして振り返り
僧坊に緋の角巻を見たという
角巻の弘前人形髪黒し
角巻や波濤渦巻く日本海
角巻や女子高生の長い脚
列車往き角巻ひとり改札に
角巻に付かず離れず秋田犬
パリを行く角巻まいて魔女のごと
角巻の母は何処へ子を置きて
角巻に隠しておいた丸さ知れ
角巻の負んぶの親子瓜二つ
角巻の隣家の主婦のよそよそし
角巻や海の深さを包みをり
角巻や椿油の香のしたる
角巻の母いつまでもいつまでも
角巻に隠すピアスの弾みをり
角巻や連絡船の引き返す
吹雪より角巻姿現わるる
撮影の女優角巻包みたる
角巻にムスリムの友重ねをり
角巻や渦を巻きたる嗚咽かな
角巻や微笑みだけを置去りに
角巻やピカドールまね翻す
インスタの角巻の子や北の駅
角巻の湖上光りて陸奥の国
角巻や女子高生のニューファッション
角巻よ僕はあなたの息子です
角巻に覗く秋田の雪の肌
要するに角巻被りいざゆかん
角巻や妹は兄追ひかけて
降る雪や角巻の君よく似合う
弘前はカラフル角巻のJK
子を背に角巻のゆく象のごと
角巻の羽ばたき風の嫉妬かな
角巻や男性若干名募集
角巻を外せし女うら若き
角巻に包みきれない頬の火照り
くれなゐの角巻にゐて無敵なる
角巻の形見母から妹へ
角巻の裾翻し雨の坂
角巻にほのかにたまる日の匂ひ
角巻に一本の紐とほしけり
角巻の女吹雪の夜の道
角巻で冷えた心も温める
角巻の眼鏡の白き朝まだき
長身に青と黄色の角巻が
角巻を着れば不死身となる女
安売りの角巻エスカレーター鈍し
角巻のゆるき坂ある市場へと
角巻の母の傾きながら来る
角巻のふいにうしろを振り返る
角巻に仕舞い込んだるストーリー
角巻の中の手われをあたためる
角巻は緋き翼よいつか飛ぶ
角巻の少女の訛りやはらかく