兼題「菜の花」__金曜俳句への投句一覧
(3月31日号掲載=2月28日締切)
2023年3月19日11:37AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
菜の花が咲き誇ると、春が来たと実感しますよね。日本の油菜は、いまでは西洋油菜にほとんどが代わってしまいました。さて、どんな句が寄せられたでしょうか?
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年3月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【菜の花】
菜の花や雨の染み入る石舞台
菜の花の日暮や子盗ろ神隠し
菜の花を見て花菜漬買うて来る
はしやぎ声すつぽりおおふ花菜かな
菜の花畑隠れんぼの子浮き沈み
菜の花の黄色の帯に渡す橋
菜の花や晴れて徒歩でも旅は旅
菜の花を明日香古墳へ道辿り
菜の花の島の銃剣島を向く
安房国の花菜の風や八犬士
菜の花や司馬の小説思い馳す
菜の花やバスを待たずに歩かうか
菜の花や皿に花咲く辛し和え
くしゃみの子菜の花のごと匂ひけり
菜の花のこぼるるままの海の風
菜の花や砲手の眸なにも観ず
菜の花の揺れるあたりに子の笑い
菜の花の黄から太平洋の青
菜の花の束担ぎたる水夫かな
迷へ迷へ悩め悩め菜の花畑
菜の花やくたり茹でられ意気地なし
菜園にそれぞれの菜のそれぞれの花
菜の花の一駅前で目覚めけり
菜の花に河津桜の酔うてをり
菜の花やまつすぐ上げる横断旗
菜の花の一輪ずつの可憐かな
賞状を高高かかげ花菜道
菜の花がみんな青空見上げてる
菜の花や元級長を野辺送り
手の肝斑も菜の花畑に見えまする
白花もまだらに揺れて花菜かな
嘘見抜くようきっぱりと咲く菜花
菜の花に意識をさせてから歩く
菜の花や黄色き鼻の犬の行く
菜の花や百葉箱の一つ立つ
菜の花のふえて寂しき村となり
牧牛の丸顔もゐる花菜かな
これからは告白に使う菜の花ぞ
菜の花に埋もれて孫やVピース
菜の花のひとかたまりの行方かな
菜の花の好きな大空青い色
房総の夕陽濃かりし花菜風
菜の花や水の響きを懐かしむ
菜の花と戯れし日の葬儀かな
菜の花やあてにはならぬ血液型
菜の花の駅で上下の擦れ違う
菜の花の畑に落ちる
菜の花や二社のバス停並びたる
菜の花や一年生の手を引いて
菜の花を揺らし特急オホーツク
菜の花や遠き月の照らしたる
散歩道菜の花抜けて嫁ぐ朝
菜の花の肌に優しき黄色かな
菜の花のなかできのうとすれ違う
菜の花や冬眠中の発電所
下り道菜の花揺らしカーブする
長崎の菜の花広島のスープ
菜の花や通過電車の黄の翳り
菜の花や月を蝕むやうに散る
菜の花や添えてはなやぐ向付
まなざしのあつまつてゐる花菜かな
菜の花や嘘は嫌ひと言つたのに
菜の花の上をラインの走りくる
菜の花の畑に朝日上りけり
菜の花や蕊まみれたる犬の鼻
菜の花や移動図書館待つ姉妹
菜の花の果てに黒潮きらきらり
菜の花やぽつと開きぬすまし汁
網膜に菜の花の黄の拡がれり
菜の花や沖に白帆の散らばれる
菜の花や十人程の写生会
自主練の陸上部員花菜風
菜の花や畑に集まる鳥を見る
菜の花のいつせいの香のうとましき
定食に和へし菜の花添へらるる
菜の花を前に夕日のあかあかと
菜の花や太陽風も風のうち
菜の花や顎上げ笑ふ幼き子
出迎えは寡黙な父と菜の花と
菜の花や風に吹かれて阿弥陀堂
菜の花を眺めて河原で魚探し
菜の花や画帳の螺旋綴じ歪む
菜の花や縺れ解けるランドセル
菜の花はメタリックなり色も香も
菜の花に松葉杖つく侵入者
中学の理科一頁菜の花や
菜の花や岬を巡る白装束
菜の花を挿してきょうから一人部屋
菜の花を浮かべて魚介系スープ
菜の花が稲穂のように春を咲く
菜の花の水平線に空と海
菜の花に煩わしきや虫の音
菜の花が田舎の香水思い出し
菜の花や黄色ばかりを攫ふ風
菜の花や海に迫りし伊予の山
菜の花の苦味を愛でる齢となり
菜の花の香る細道うねうねと
ソユーズから菜の花の島見エマシタ
菜の花のこれが見本の黄色かな
財布には風入れ菜の花眺めます
しばらくは菜の花染めし列車窓
菜の花を夕陽の包む素描画に
菜の花のお浸し柔くほろ苦し
太陽と競ふ花菜の光の黄
菜の花や花折峠超え来れば
菜の花や蕪村の景色見える磯
菜の花の真中に生家ある昼夜
借景の菜の花畑昼御膳
菜の花の一等白き日暮かな
菜の花や半月の夜の密事
お浸しの苦味も旨味菜の花や
房総の菜の花海へ溢るるや
対岸は菜の花の野ぞ渡し舟
菜の花はほどよく苦し望郷歌
園帽の赤青みどり花菜風
菜の花と山の夕日と海の月
菜の花や帰ろうとせぬ犬連れて
一面の菜の花ぽつり墓標かな
菜の花を見過ぎて進む白内障
一面の菜の花除染土の上に
菜の花や母恋ひの男と暮らす
菜の花や補欠は声を出す係
花菜風百千万の合唱を
河口から三十五キロ花菜風
菜の花や日本はほんまええところ
菜の花を左に見てと道案内
菜の花に遅れて傘の傾ぎけり
菜の花の咲いて躁へと速き脈
尋ね来しピザ屋は休み花菜風
菜の花のおひたし少しほろ苦し
田に憩ふ菜の花千切る遊びもて
菜の花の中をハモニカ近づけり
湘南の少女のしゃがむ花菜かな
甘すぎた祖母の菜の花酢味噌あえ
菜の花を貧乏ゆすりさせし風
街角を折れ忽然と花菜畑
のほほんと花菜の海に漂ひて
菜の花や空を明るく広げたり
父の肴や菜の花つみて辛子あえ
菜の花の一足ごとに増えにけり
菜の花や菜種油灯す江戸の町
菜の花の河口やさしき長良川
折り返す列車の待機花菜なか
菜の花の嘘隠す色黄色だし
菜の花や風のボールを蹴る遊び
菜の花や移動図書館給油中
菜の花や大団円に昼の月
菜の花や祈りは強く揺るぎなく
車掌待つ臨時列車や花菜雨
菜の花や土手一本を丸ごと黄
菜の花に近づきながら離れゆく
菜の花や自由といふ名の不自由
行き斃るならせめて菜の花のうへ
菜の花や校歌の山はまだ真白
菜の花や妻の小言も心地よし
眼疾に寄り添う色よ菜の花よ
菜の花と銀輪と風光る道
来る道も去る道もまた花菜かな
菜の花や個人に委ねる判断
菜の花や遥か灯台守の歌
こゑのするはうへ靡いてゐる花菜
菜の花のようけ咲いたる喫茶去や
菜の花や通り過ぎたる記念館
菜の花やとうに忘れた国言葉
夕餉用菜の花しばしコップに挿す
菜の花や錆びた廃線無人駅
峰白く菜の花戦ぐ下界かな
一面の菜の花に恋生まれけり
菜の花をゆきて青年帰らざる
旅立ちにそっと背を押す花菜かな
菜の花に座りて一日暮れにけり
菜の花や半減期まで十八年
菜の花や望郷烟る桜島
菜の花をトッピングして昼ラーメン
海青し花菜畑のど真ん中
菜の花を茹で本物の野の緑
菜の花の好きな関東ローム層
菜の花の大地を覆ふ夜のあり
菜の花や遍路の旅の一里塚
菜の花や名残惜しげに夕のバス
菜の花が桃色だったら落ち着かぬ
菜の花やふたりがかりでさがす恋
菜の花やだんだん眠くなる昼間