兼題「猫の子」__金曜俳句への投句一覧
(3月31日号掲載=2月28日締切)
2023年3月19日11:45AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
猫の繁殖期は不定だそうですが、多くは1~3月、5~6月に見られます。約2カ月の妊娠期間を経て出産します。子猫はかわいいですよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか?
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年3月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【猫の子】
猫の子や四条烏丸上ル路地
猫の子の小窓すり抜け亡命す
猫の子の人間不信むき出しに
猫の子へ明け渡したる妻の膝
猫の子の産まれたやうな声の朝
猫の子をまた捨てにゆく子供かな
掃除機に子猫素早く尾を丸め
猫の子の目の色の空失う日
猫の子やまだ毛の色で呼ばれをる
派出所に猫の子のいる山の里
決めにけり青き眼のこの子猫
抱く手も子猫もふるへ瓦礫山
影あればもうそこに無き仔猫かな
猫の子の声やトラック動かせず
棄てられし猫の子の目はまだ明かず
ずる休みした日の記憶子猫抱く
絶叫のゴール猛ダッシュの子猫
猫の子にあてがふ猫のぬひぐるみ
捨てられし猫の子に名を尋ねけり
親猫の先へ先へと子猫たち
猫の子の吾を見据えし入院日
猫の子や絡まり遊ぶシューレース
手のひらに包む仔猫のぬくみかな
猫の子も犬の子も同じうちの子よ
暗闇の猫の子団子一塊り
猫の子のそれぞれ植木鉢に居て
猫の子を連ねて化粧品会社
箱の中に猫の子五匹無言館
猫の子の我にはとんと寄り付かず
手拭ひの皺に跳ねたる子猫かな
猫の子に動くもの皆珍しき
猫の子のポップコーンのごとく爆ず
猫の子の右側の老人が好き
猫の子の貰ひ手待ちて薄暮光
物置から母猫のいで子猫らつづく
開かぬ眼で乳房を探す仔猫かな
乳たらひて眠り初めたる子猫たち
テーブルに爪研ぐ仔猫野性の血
舌と尻チェックしもらふ子猫かな
瞠る目の鏡の中の子猫かな
物陰の野良の子猫の老けし顔
猫の子に愁眉を送り去つて行く
猫の子の譲渡にいまだ長子制
嗅ぎにいく犬にパンチの猫の子や
猫の子の奪ひ合ひたる夫の膝
床下の猫の子知らず古家買ふ
猫の子を追ふて闇夜の彷徨者
猫の子といふ生きがいを増やしけり
庭先に猫の子五匹母を待つ
猫の子の気の多かりし男かな
猫の子は小さき順に引き取らる
仔猫貰ふよふわふわを抱きたく
猫の子の老いて死ぬこと知っている
爪立てる子猫の不安わが胸に
猫の子に名前を付けてそっと呼び
親の乳踏む猫の子やリズミカル
猫の子の疑ふことを覚えたり
柔柔と瓶の猫の子液体かな
夕刊に猫の子も借りたき独り
猫の子の旅の鞄で寝てしまひ
つぎつぎに名を授けらる子猫かな
猫の子の耳が片方垂れてをり
なんでまた子猫拾つて来るのかね
猫の子の鬣ひるがへすやうに
方円の器に適う子猫かな
猫の子のどこで覚えたその仕草
猫の子をやさしく甘えさせる妻
猫の子も読み朝刊のままならず
猫の子の枝のやうなるひとところ
猫の子の眸ひらけばおなじ夢
手の平を突く猫の子の鼓動かな
猫の子の夜目きいてなほぶつかれる
小さき舌しまひ忘れる子猫かな
歴史書は大事汚すな猫の子よ
猫の子を抱く児を抱ける若き父
おすましで悪戯隠す子猫たち
黒子猫父の輝きそのままに
側溝をずんずん走る子猫かな
猫の子を一匹選びパーキンに
ふわふわの猫の子一匹掴み上ぐ
肉体の悪魔か君は仔猫ちゃん
目の開かぬ子猫の鼓動百グラム
猫の子の命のうんち片づける
猫の子に猫の子二匹かさなれり
猫の子やこんにゃく一枚の体重
猫の子のはたと寝易く覚め易く
そっくりな顔で猫の子あくびする
猫の子の隣で人の親として
部屋の隅もじける子猫もらい受け(「もじける」は新潟の方言で人見知りするという意味)
猫の子の名ももらわれて行くまでの
逗子の海親猫子猫寝そびりて
宥すこと愛すこと知る猫の産
猫の仔や母はなんでも知ってゐる
猫の子に翼をつけてゐるあした
石段に猫の子並ぶ参拝道
たつぷりの腹を揺らして孕猫
子猫来て手をひらひらや言葉なき子
甘え来る名無し猫の子器量良し
どこやらで母呼びて鳴く子猫かな
猫の子が鉄軌危なく渡りたる
猫の子や明日は明日新世界
猫の子に虎之介とぞ名づけたる
先客の猫の子眠る人力車
猫の子の座右にパソコンぬくぬくと
三匹の色性(さが)違う子猫かな
裏庭や猫の子のたかさにしゃがむ
猫の子の包まれゐたり古タオル
猫の子の鳴き声2つ窓の外
猫の子の心臓の音届きけり
猫の子や残るぶちだけ名をもらひ
猫の子よこの凸凹は鼻と目だ
猫の子も弟猫を守る覇気
猫の子の声を狙ひし烏舞ふ
漁師飯お裾分けして子猫呼ぶ
老猫の子猫蹴りても身じろがず
猫の子に触れる指先から聖女
猫の子に踏切けたゝましく吠ゆ
猫の子のクッキー缶をあふれけり
草むらを進む子猫の耳が見え
猫の子が母になるまで共に寝し
猫の子のいづれも母に似てをらず
仔猫抱き一生どこか違ふ女史
猫の子や光の中に眠りたる
猫の子や吸うて眠りて鳴くばかり
猫の子の会話にアテレコ入れてみる
まだミャオがニャオより強し子猫かな
引力にまだ逆らへぬ子猫かな
猫の子やノートに日記を付けて居る
ばあさんと子猫絵にならない私
仔猫なら恋人気分反抗期
手の甲にのせて子猫をさらふべし
野良猫の子と弱肉の親が鳴く
猫の子となるや瞳の定まりて
猫の子に絆と名づけ孤独かな
窓の二つ光る眼は猫の子や
猫の子を見せて商う硝子かな
家に付く家系の仔猫すでに主
先行きを知らずに猫の子の鼾
鼠仕留め「どうだ」とばかり子猫かな
猫の子の瓦礫飛び交う毛の踊り
猫の子のくんずほぐれつあきもせず
貰ひたる子猫はキャンディーの匂ひ
爆撃のニュースの音や子猫おき
猫の子はクッションといふ崖の上
寄来たる子猫即ち抱上ぐる
猫の子のか弱い啼き声紙袋
ほんのりと総身潤ふ子猫かな
子猫にしてすでに鋭し眼と爪と
不安げに少女は子猫の鼻を突く
鼻先を分けあうように猫の子ら
あつちにもこつちにも行く子猫かな
小さき尾逆立ててゐる仔猫かな
アスファルトの真ん中にゐる黒子猫
あはあはと猫の子を抱く子どもかな
猫の子のまた逃げ出して路地明かる
猫の子の畚の中より顔を出し
膝の上眠る子猫に息合はし
猫の子を抱いてむにゅむにゅ午後一人
猫の子は自分の値札知るごとし
猫の子のなんと呼んでも返事する
子猫眠りジグソーパズルもう一度
一人居をうすめる猫と仔猫かな
城内に子猫ぞろぞろあつまれり
ひかりごと水を舐めたる子猫かな
子の首の噛みどころ知る猫の親
夜の道車を知らぬ子猫かな
猫の子は犬の寝床に収まりて
猫の子は恋煩ひをまだ知らず
手放しし手に猫の子の湿りかな
橋までは緊張猫の子と並ぶ
小糠雨きのう子猫のいた小路
悲しみを知らぬ子猫の眠りをり
猫の子やにゃん・にゃん・にゃんに恩返し
猫の子のこまかに爪を使ひをり
水なしの水路を猫の子が走り
猫の子を探す母猫声狂おしく
猫の子や獣の性をうしなはず
ほんわりと両手で掬う子猫かな
猫の子の速き鼓動や手に温し
暗闇に子猫かたまり春の雨