兼題「亀鳴く」__金曜俳句への投句一覧
(4月28日号掲載=3月31日締切)
2023年4月7日4:57PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「亀鳴く」は想像上の季語です。藤原為家の歌「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」によるといわれ、古くから季語として定着しています。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか?
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年4月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【亀鳴く】
亀鳴きてペットボトルの浮力かな
赤坂のお濠歩けば亀ぞ鳴く
亀鳴くや戦場遠きメタバース
天照す神代の昔亀鳴けり
水槽の亀も鳴くほど静かな日
亀鳴くやパスワード忘れ電子音
亀鳴くや薬局白く遠く立ち
口も目も耳も瞑りぬ亀鳴くや
亀鳴いて老いの寂寥覚えたり
爆撃を幻聴すれば亀が鳴く
亀鳴くや嘘も誠も世は濁世
亀鳴くと急に黙りし恋人よ
亀鳴くを聴きたき独り昼の酒
名刹をたづぬる僧に亀鳴けり
亀鳴くや日常を唯迷ひなく
亀鳴くや薬研堀跡かよふ宵
亀鳴くや通りすがりの暖簾に手
亀鳴くや耳に穴無き三姉妹
亀鳴くや閑居に恙無き処世
病室に掬う五分粥亀鳴けり
亀鳴けば唯目を瞑る耳順かな
亀の鳴く一万年の時報かな
亀鳴くややつとつかんだ主将の座
堂々と亀の鳴く夜や永田町
亀鳴きぬきのふの風呂の湯を抜けば
亀鳴けば泣く子鎮める経となり
裏返りし亀なら鳴きもしようかと
大亀はトカトントンのあとに鳴く
亀鳴くは月が綺麗と外来種
公園のベンチに独り亀の鳴く
亀鳴くや優等生であった吾よ
亀鳴くやキャンセル待ちの滑走路
演説の途中に亀の鳴きにけり
亀鳴くや明けない夜もありそうな
寛解を指折り待てば亀鳴けり
亀も泣け十二年目の鎮魂歌
亀鳴かぬ証拠も無いと言う人も
師の墓にカップ酒置き亀の鳴く
公園の池亀鳴かず甲羅干す
亀鳴くや円周率は永遠に
亀鳴くや猫の両耳ピンと立ち
秘密池亀の鳴く声聞こえたか
亀鳴くやマナーモードのオンとオフ
亀鳴けば矢守も毛虫も猫も鳴く
亀鳴くを聞いたとはしゃぐ五歳かな
転勤の夫の手際に亀が鳴く
亀鳴くや透析四時間深眠り
むらさきの雨ふりけふも亀鳴けり
金曜の小さき巨人亀の鳴く
亀鳴くやウクライナにもロシアにも
手遅れかまだ間に合うか亀の鳴く
亀鳴くや終止記号を見落として
鳴きたるはたぶん一番下の亀
亀鳴くや茶葉のひらくを待つ時間
亀鳴くや出生率は頭打ち
亀鳴くと椅子を出したり宵の庭
笑点に女性入れば亀の鳴く
亀の鳴く声をひねもす推測す
亀鳴くや暇を重ねし人も鳴く
亀鳴いて瞼の動く地蔵かな
亀鳴くや夜中に探す吾が眼鏡
亀鳴くや自律神経やや乱れ
亀鳴くや死んだ男の残し物
説明と描写のあはひ亀鳴けり
亀の鳴くメソポタミアの夜明けかな
亀鳴くとかき消すように犬が無く
亀鳴くや背後に父の気配して
バスタブが渦巻いて亀鳴けりけり
亀鳴くもあの子の涙も嘘っぽい
亀鳴くや戦の前の星回り
横文字に変わってからは亀鳴かず
いいこともきつとあるよと亀鳴ける
亀鳴くと聞きし水辺の風の音
本線に合流できず亀鳴くや
亀鳴くや夫の笑ふ台所
亀だってピースピースと鳴くだろう
亀鳴くやまたひとつふたつみつつと
亀鳴くを聞きしと酒に酔へばまた
明石城逆立ちせよと亀の鳴く
ガラパゴスゾウガメ鳴くメメントモリ
亀鳴くや愚痴と笑いの赤提灯
亀鳴くやテープ黄ばみし魔除札
雲解(ほど)けまた結ぶ日や亀鳴けり
亀鳴くや原発回帰の声の裏
無理にでも亀を鳴かせてくれないか
亀鳴くを徳川夢声聞きしかな
亀鳴いてもちろん君のことは好き
解読のできぬ達筆亀鳴きぬ
亀鳴くやダム湖に沈む未来都市
退屈に耐へるも至難亀鳴けり
亀鳴くをつひに遅刻の言ひ訳に
幸福論の進まぬ頁亀の鳴く
亀鳴くやマスクを外す音微か
亀鳴くや原発回帰政策に
荷物無き部屋の窓辺に亀鳴けり
亀鳴くや湿気たせんべいまだかじり
亀老いて命の限鳴くことも
亀鳴くや大地の歪戻る夜
老人は老人嫌ひ亀鳴ける
亀鳴けば木々に増え行く鳥の数
水の底亀の帝国亀が鳴く
亀鳴くや五百羅漢に千の耳
人恋し亀鳴く村に住みにけり
亀鳴けり池の中にもパスワード
あまりにも退屈過ぎて亀鳴くや
亀鳴いて休講となる進化論
遅刻して亀の鳴くにも間に合はず
亀鳴くや文字の小さき契約書
亀鳴きて一歩一歩がロックです
首もたげいまにも亀の鳴かんとす
答弁の総理へのメモ亀鳴くと
亀鳴くや男ばかりの吟行に
亀鳴けば折れ線グラフ尖りけり
亀鳴けり東京大空襲の夜
亀鳴くや忍者屋敷のやうな恋
亀鳴けりいつより我ら饒舌に
俳人の右脳に居れば亀も鳴く
濁流に亀が見えぬが亀鳴けり
亀鳴くは季語とし亀を飼ひにけり
亀鳴くや賞味期限が明日の菓子
亀鳴くやきれいな言葉探してる
亀鳴いて大本山の薄暮かな
亀鳴いてWBC勝った説
亀鳴く夕戦火逃れし雲の列
産土のマントラのごと亀鳴けり
花街の真昼の昏さ亀鳴けり
亀鳴くや地球にいつも昼と夜
亀鳴くや動く歩道にじつとして
亀鳴くや真夜の盗人忍び足
亀鳴くや送電線の月影に
鼈(すっぽん)のヨーデルめきて亀の声
亀鳴くや降り立ちさうな宇宙船
亀鳴けばスマホは切ってハルキスト
亀のまた鳴きて余震は空揺らす
色褪せる独身時代亀の鳴く
亀鳴けば空を飛び来る竜宮城
亀鳴くや紙切れとなる負け馬券
亀鳴くを聞いたとはしゃぐ吾子かな
性別はどうでもいいさ亀鳴くや
亀鳴くや微睡んでゐる観世音
亀鳴くやひねもす眠き四畳半
亀鳴くや人に届かぬ声音にて
師の墓にカップ酒置き亀の鳴く
亀鳴くや赤きソファーの純喫茶
無人駅鉄路寂れて亀鳴けり
亀鳴くを聞かず旅立つ偉人たち
亀鳴くや曽孫生まれたとふ隣家
閉じ込もる子に届けよと亀鳴くや
亀鳴いてNHKの録音班
亀鳴くや月欠ける音聞こえ来る
亀鳴くや小二男子の力こぶ
亀鳴きてペットボトルの浮力かな
もう一匹背中に乗れば亀鳴くか
亀鳴くや西堀端の新聞社
差出人不明絵葉書亀が鳴く
亀鳴いて雨の休日居留守せし
亀鳴くやGoogleMapの三渓園
亀鳴くや夫の無口が好ましく
鳴いてみる亀鳴く声を聞き做して
亀鳴くらむ戦線遠く退けば
亀鳴くや兎は負けても鳴かぬもの
亀鳴きぬ孫水槽にへばりつき
亀鳴くや死者の呼吸の調べかな
忘れ物ふえるばかりで亀鳴けり
影踏みの影みじかきや亀の鳴く
亀鳴くや鼠小僧は義賊なり
亀鳴くやホセにプラシド、ルチアーノ
亀鳴くや妄想好きの飼育員
亀鳴くやおらが村にもセルフレジ
亀鳴くや失くしたピアス見つかりぬ
亀鳴くや人より牛の多き村
亀鳴くか甲羅干す亀数多いて
亀鳴くや聞かれたくない話あり
亀鳴きぬ生き物図鑑に首ぴっき
亀鳴くや明日は生まれて万年目
忘れ物ふえるばかりで亀鳴けり
一兆円飲みこみ終えし亀が鳴く
へその緒を欲しきと言ふて亀鳴けり
菓子折りを亀鳴くやうに渡しけり
亀が鳴く天国に住む親亀と
亀鳴いて妻にやさしさ戻りけり
亀鳴くや残金僅か当てもなし
生命線長き手のひら亀鳴きぬ
亀鳴くや錆びた鉄兜の凹み
亀鳴く夜無口な父の戦争語り
亀鳴くや知らない街を折り返す
むらさきの雨ふりけふの亀鳴けり
亀鳴くや鯉に土鳩に麩を撒けば
亀鳴くやぐしゃり煙草を揉み消して
カーボンナノチューブ背負ひ亀鳴けり
月球儀廊下転べる亀鳴く夜
亀鳴きぬ水路の整備は終了し
ネクタイを着けぬ一日や亀鳴けり
月うるみ星はまたたき亀鳴けり
いま亀の鳴き終はりたるところやと
なほ望み捨てざる老いや亀鳴けり
亀鳴くや秘かにおはす地蔵尊
池の亀鳴くを待ちつつ日暮れまで
子の増えて家はせましよ亀の鳴く
大仏の螺髪の掃除亀鳴けり
児童の声の弱々し亀の鳴く
亀は鳴く本当に鳴く俳人よ
千三人確かに亀の鳴くを聴く
耳抜きをすれば遠海や亀の鳴く
亀は鳴く本当に鳴く俳人よ
亀鳴くや月欠ける音聞こえ来る
誰そ彼の六道辻に亀鳴けり
受話器越し沈黙の間に亀鳴けり
長考のすゑに亀鳴く将棋かな
亀鳴くや髭伸ばしたる青年に
亀鳴くやあんなをとこは振つちまへ
亀鳴くや君去りし雨の参道
亀鳴くや信号の赤重く照り
亀鳴くと知りて自由になりにけり
補聴器を外し聞くなり亀鳴くを