兼題「さくらんぼ」__金曜俳句への投句一覧
(5月26日号掲載=4月30日締切)
2023年5月21日3:49PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
さくらんぼは、かわいい季語ですよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか?
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年5月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【さくらんぼ】
隔たりは恋するつよささくらんぼ
勇み足サクランボ幽霊居ないかな
種含む少女躊躇のさくらんぼ
ルーチンのごと見つめてるサクランボ
さくらんぼ飾るパティシェの細き指
さくらんぼ甘酸つぱさに想い出し
早産と一生言はれさくらんぼ
じいちゃんは免許返上さくらんぼ
厳重に包装されしさくらんぼ
つい軸に目がゆく皿のさくらんぼ
下心もうありませんさくらんぼ
丸めたる指にひとつのさくらんぼ
パフェに有るあげるパタンのさくらんぼ
さくらんぼ熟した味は樹の上で
さくらんぼ祖母の小函のプロマイド
嫌はれしと知る晩年やさくらんぼ
おんぶ紐緩め喃語のさくらんぼ
さくらんぼ種吐く人や哀れなり
安寿厨子王引き別るるやさくらんぼ
手のひらに掴む太陽さくらんぼ
食紅に染まる子の舌さくらんぼ
しんぶんの一字滲ませさくらんぼ
マッチングアプリの出会いさくらんぼ
退屈な水曜三時さくらんぼ
街灯はみな宙にありさくらんぼ
さくらんぼの柄を結ぶくせ恋の癖
赤々とさくらんぼ柄のありてこそ
熟未熟赤もさまざまさくらんぼ
葉陰より赤く輝きさくらんぼ
さくらんぼ種の数だけ息を吐く
カクテルの底泥酔のさくらんぼ
さずかりしあかごいとしやさくらんぼ
さくらんぼ二つ並んで日を浴びる
きつちりと盛り分けられてさくらんぼ
さくらんぼ 幸せ 好き の皆さ行
光舞う皿いっぱいのさくらんぼ
さづかりし赤子いとしやさくらんぼ
大好きなプリンに二つさくらんぼ
供えもの盗む人ありさくらんぼ
さくらんぼお転婆の子おとなしく
さくらんぼ投げて飛行機雲となる
山形へサクランボ狩り旅行かな
じゃんけんや一粒残るさくらんぼ
胸も内一気に飛ばすさくらんぼ
百万の目の如くあり桜の実
さくらんぼタトゥーの腕のアメリカ兵
きみだけに通じる言葉さくらんぼ
唇の背後は前歯さくらんぼ
それなりに幸せですよさくらんぼ
夕風に茎傾きぬさくらんぼ
茎の端つまんで揺らしさくらんぼ
奮発のさくらんぼうで見舞ふ人
桜桃の片割れと云ふ熟女かな
片頬の笑窪まぶしきさくらんぼ
小さき家小さき夫婦やさくらんぼ
さくらんぼ喜ぶ人に送りけり
さくらんぼ飾りて眺むきのふけふ
赤く良きものにて充てりさくらんぼ
空腹は幸福に似てさくらんぼ
疎開して食ぶ弁当のさくらんぼ
獣医師の弁当箱のさくらんぼ
さくらんぼ三つ咥えて黄色帽
仕方なく丼鉢にさくらんぼ
四世代集まる座卓さくらんぼ
アメリカン・チェリーよ君は悪くない
桜桃や桐の箱にてまかり越し
桜桃や無垢なるひとと語る夜
泣き虫も笑顔に変わるさくらんぼ
桜桃のひかり粒だつ日曜日
農家の思ひ詰め込んでさくらんぼ
さくらんぼ沈むグラスのマンハッタン
さくらんぼ可愛いあの子の片えくぼ
三脚の高きに乗りてさくらんぼ
これ以上笑へませんねさくらんぼ
貴きも卑しきも無しさくらんぼ食う
さくらんぼという確かな小宇宙
さくらんぼ色艶五秒味二秒
プラスチック・パックの底のさくらんぼ
潮風と山風の町さくらんぼ
さくらんぼ種に残れる恋の味
頑張つた母へ多めのさくらんぼ
さくらんぼチェーホフ劇に屍は見せず
篭車園児の散歩さくらんぼ
銅像の指差す先にさくらんぼ
さくらんぼ甘納豆に勝ちにけり
流水にうれひ色濃くさくらんぼ
さくらんぼアメリカンクラッカーめく
自宅にて仕事の褒美さくらんぼ
日替わりの小鉢に五つさくらんぼ
さくらんぼ甲斐のお山に雲たなびき
若者はいつも正しいさくらんぼ
先生は兼業農家さくらんぼ
一言で足りる幸せさくらんぼ
さくらんぼ双子の孫とににんが四
右左裏返してもさくらんぼ
雲晴れて弾ける赤よさくらんぼ
カップルを壊さずに椀ぐさくらんぼ
さくらんぼ見飽きし頃に届く箱
お手製の和綴じの句集さくらんぼ
いいことがたくさんあるわさくらんぼ
くきやかに玻璃器を透けてさくらんぼ
さくらんぼぐぅちょきぱーの声高く
泣きみそのさくらんぼブローチつぶされて
うづたかきパフェのてつぺんさくらんぼ
急かぬようひとつひとつやさくらんぼ
二粒で全き象さくらんぼ
コミュン潰ゆさくらんぼの実熟れる頃
さくらんぼシャコンヌの譜の連音符
さくらんぼト音記号をそつと置く
ガラス鉢にさんざめきたるさくらんぼ
さくらんぼ些細な夢を語り合ふ
合鍵をキーホルダーにさくらんぼ
桜桃の茎をむすびて澄まし顔
妻に見られつつさくらんぼを食べる
箱入の艶を揃へてさくらんぼ
さくらんぼしばらく頬をふくらます
桜桃や騒めきも素知らぬ顔で
みちのくの陽の色詰めしさくらんぼ
ぺっぺっと種ありてこそさくらんぼ
さくらんぼすべすべ艶も撫でもして
さくらんぼ残る一つに目が走り
ピエロの鼻はルビーかなさくらんぼ
唆り立つパフェのクリームさくらんぼ
桜桃や食弾みたる口喧嘩
さくらんぼあなたの指紋ごと食べる
韓国箸重しさくらんぼの逃ぐる
さくらんぼ咥へ少女は恥ぢらへり
味のことだあれも言わぬさくらんぼ
桜桃や一筆箋の夢二の絵
一粒にめっちゃ嬉しいさくらんぼ
思ひ出は盗られざるものさくらんぼ
馬になるじじが好きだよさくらんぼ
一瞬に市場を過ぎるさくらんぼ
トラックの荷台は売り場さくらんぼ
酔つ払いの頬にルビーさくらんぼ
一人居の部屋に明るきさくらんぼ
離れてもさくらんぼって二人称
さくらんぼ種がなければ甘かろに
父親の恋愛自論さくらんぼ
約束の遠い記憶やさくらんぼ
あたらしい渾名で呼ばれさくらんぼ
指先に園児の視線さくらんぼ
桜桃の艶にかりりと歯を立てる
差し上げてまた差し上げてさくらんぼ
大人びた妹の歯並びさくらんぼ
老いてまた姉妹の時間さくらんぼ
葉を透ける陽に見え隠れさくらんぼ
さくらんぼ坂道強く登る日の
さつきまで妻と同じやさくらんぼ
さくらんぼ頤上げて打つ放す
みちのくの朝市の色さくらんぼ
さくらんぼ種の予感に拒絶して
さくらんぼ運び込まれし町中華
さくらんぼヒヨと競争して食べる
家を出し子の荷へ入るるさくらんぼ
ハングルにいくつもの丸さくらんぼ
さくらんぼ指が濡らせる文庫本
スマートにさくらんぼへのお礼状
大笊は水の重さの加はれり
さくらんぼ青き空ごと篭に摘む
つまむ指先のかたちやさくらんぼ
桐箱に副賞とありさくらんぼ
さくらんぼ山形三人家族旅行
舌先に甘く転がるさくらんぼ
さくらんぼ風の噂は聞き流す
さくらんぼ狩りアダムの頃の血が騒ぐ
さくらんぼほおばる親父節榑れて
園児らの皿は水色さくらんぼ
さくらんぼ夢と希望の溢れけり
死化粧の代わりに添えるさくらんぼ
楽の音に倦みて雨夜のさくらんぼ
染められし赤の似合はぬさくらんぼ
摘みたてのハートのエースさくらんぼ
予備校の案内隠しさくらんぼ
さくらんぼ指は軌道へ届かざり
父母の恋ありて我が恋さくらんぼ
添へらるる文の重みやさくらんぼ
黄色いさくらんぼをつまみたいもの
あいみょんをかけて街道さくらんぼ
「四色さくらんぼ」来たるプレミアム
大リーグの帽子を被りさくらんぼ
もう中年息子初任地さくらんぼ
かまぼこの板が俎板さくらんぼ
さくらんぼ来故郷の新聞に包まれて
さくらんぼ頬のふくらむ三歳児
さくらんぼ見上げ電車を乗り過ごす
さくらんぼ洗ふ傍には子の立ちて
さくらんぼ潮の匂ひのかすかなる
さくらんぼ二つつながる茎摘み
さくらんぼ赤の補色は青緑
実桜やはなれられない鼻チューブ
桜桃の転びて遠きカスピ海
句碑めぐる桜桃狩りや女子の旅
恋するに年齢はなきさくらんぼ
さくらんぼ三つ頬ばり妻の笑み
さくらんぼ今日の良きこと数へつつ
知らぬ土地より届きたるさくらんぼ
たわいない君の話やさくらんぼ
単語帳ちぎれさうなりさくらんぼ
ぴっかぴっかのはち切れさうなさくらんぼ
掬ふのはフルーツポンチのさくらんぼ
前歯二本抜けて九九よむサクランボ
ひとり居も三日目となる桜桃
箱の中均衡保つさくらんぼ