兼題「冬支度」__金曜俳句への投句一覧
(10月27日号掲載=9月30日締切)
2023年10月20日5:34PM|カテゴリー:風に吹かれて|admin
冬の寒さに備えるさまざまな準備を冬支度といいます。冬構とは違います。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年10月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【冬構】
原始へと蘇るまで冬構
薪束の画面をポツる冬構
盛塩の美しき円錐冬構
棕櫚縄の男結立つ冬構
冬構城塞のごと防風林
【冬支度】
盆栽の爆音嫌ひ冬支度
消防の欠員ふたり冬支度
老猫がゆるく爪研ぐ冬支度
何も無き歳も變らぬ冬支度
ほの暗き下宿の窓や冬支度
パーティーの衣装並べし冬支度
払ふべき金を支払ひ冬支度
リヤカーに運ぶガラクタ冬支度
冬支度女王のねむる古墳にも
招き猫季節を知らぬ冬支度
都市タワー灯り整へ冬支度
体重を少し増やせる冬支度
ゴミ化して部屋広々と冬支度
日のあたる家を見倦きて冬支度
古瓦今年もずれて冬支度
冬支度真上に跳ねる子犬かな
冬支度星座が変わり急かされる
吹き下ろす風に急かさる冬支度
あれこれと思ひが先の冬支度
帰郷への二つ返事や冬支度
冬支度汗かきながら梳く犬毛
身ぬちより先づは始むる冬支度
禁煙は長続きせず冬支度
特養にをればなほさら冬支度
樟脳の匂い懐かし冬支度
朝風に空は均され冬支度
冬支度大事なことは食べること
暖冬と聞けば手遅れ冬仕度
ブーツ磨きいちど脚入れ冬支度
端黒き蛍光灯や冬支度
孫ひとり増えて難儀な冬支度
父のもの捨てゆくことも冬支度
押し入れは子等の遊び場冬支度
冬支度群青色の缶の蓋
故郷の小包ずしり冬支度
スイッチを押すだけでよき冬支度
一斗樽三つ取り出し冬支度
レーニンの像の洗はれ冬支度
一番に暖とる猫の冬支度
冬支度窓から窓へ抜ける風
冬支度神保町に通ひけり
銀色の絵の具を買ふて冬支度
冬支度去年のことを想いけり
裏路地の奥の地蔵に冬支度
せせらぎに潜みし魚影冬支度
老妻に手伝うよと言う冬支度
別の名を終活と言ふ冬支度
窓閉めて電灯点けて冬支度
猫様のケージ整え冬支度
北国は冬支度戦争は止め
冬支度臭気漂ふファンヒーター
影をさす日は温かし冬支度
窓ガラスすっきり清め冬仕度
また世話になるアロエを抱え冬仕度
冬支度せし遠く往く旅鞄
冬支度手の甲に書く薬の名
青空やタイヤ交換冬支度
冬支度今年も過ぎる足早に
静寂の湖面冬支度を映し
飾り窓後ろ髪振れ冬支度
冬支度朝な夕なに庭仕事
母の文字冬支度待つ便りかな
冬支度おもさで選ぶ文庫本
病院の解体現場冬支度
座布団や冬仕度して余り綿
軟膏を両手に塗って冬仕度
陋屋も気持ちばかりの冬支度
タイヤ先づ自分で替へる冬支度
憧れを封印するも冬支度
冬支度もろみかき雑ぜ泡の樽
諍いの起こる前から冬支度
冬支度杣・猿・鹿の屋久の森
テレビよりライオン吠ゆる冬支度
冬支度まづ掃除機の埃取り
さておいて気候変動冬仕度
藁焚いて灰新しき冬支度
五十路超え妻と語らふ冬支度
丸窓を拭う西日や冬仕度
出遅れを妻になじられ冬支度
小引き出しひっくり返して冬支度
鉢植えのアボガド三鉢冬支度
冬支度する人の逝き家乾く
冬支度ぬくもりあった君の影
踏みゆけど音せぬ朽葉冬支度
冬仕度あれやこれやと散らかれり
自販機におしるこ缶や冬仕度
薪割りの趣味が加速す冬支度
伊吹嶺くつくり見へて冬支度
シルバーの技を頼りの冬支度
気がかりがないとは言えぬ冬支度
百円のすき間テープや冬仕度
結論に向かふ議論も冬支度
あけくれの薄日まぶしき冬支度
側溝の蓋のかたさや冬支度
冬仕度先ず検診を終へてから
抽斗の切手増やして冬支度
駐在も惑ふばかりの冬支度
冬支度今年は誰と別れるか
『サムライ』のポスターを貼り冬支度
裏返して寝袋干せり冬支度
かさね行く防獣ネット冬支度
括るべきものみな括り冬支度
外回り見回ってみる冬支度
冬支度うながす雲の低さかな
街路樹の枝伐採の冬支度
終活とリアルタイムの冬支度
冬支度窓を隅々まで拭けり
冬用意選り出して聴くビートルズ
勝者には何もやるなと冬支度
派手になる去年着た服冬支度
過疎の村独り陋居の冬支度
空を見て決めしことをも冬支度
愛犬も毛が生え変わり冬支度
冬支度沖見窓のみその儘に
空の青より深くなり冬仕度
ふるさとに税を納むる冬支度
冬支度木彫りの仏寒さうで
冬支度コートのポケット何もなく
広すぎて今年一人の大毛布
パンカフェは新居に近し冬支度
遅くまでおひとりさまの冬支度
海底に届く碇も冬支度
犬小屋に古きフリース冬支度
冬支度暖炉の薪を手配する
バス停に冬支度あり薄座布団
鎧戸の鎧を直し冬支度
深煎りの珈琲買うて冬支度
冬支度去年の服を整理する
舫綱結はへ直して冬支度
納屋に風入るることから冬支度
ゆっくりと息吐いてから冬支度
いつも妻の言ひなりになる冬支度
冬支度厳しきことのおほき年
パソコンに無茶苦茶描いて冬支度
またひとつ負ふもの増えて冬支度
漬物の樽を日に干し冬支度
一人居は寒さ格別冬支度
一人居の身の丈ほどの冬支度
数枚の玻璃戸磨きて冬支度
井戸端会議は終いだ冬支度
お三時はやはり諸越冬支度
窓過ぎる通奏低音冬支度
物価高荒れる日本の冬支度
冬用意八分音符の釦付け
走る時冬支度の事忘れて居る
むかしとや母はせっせと冬支度
年々と簡素になりし冬支度
ジヤムの瓶並べただけの冬支度
門先のうすき砂掃く冬支度
目標は二万歩ラララ冬支度
銀河は雲の被衣する冬支度
ようやっと遺品整理や冬支度
背を丸め課題取り組む冬支度
冬支度庭の木無くす事にする
ジブリ見てやろうと決めた冬支度
冬支度マリトッツォを食べてから
逝った友思い起こして冬支度
亡くなりし母の遺品も冬支度
厚さ増す持出し袋冬支度
さよならとつぶやいてする冬支度
冬支度口には出せぬ覚悟かな
海と空茅渟の台や冬支度
冬支度薪積み上げし若き父
アイフォンの写真消しゆく冬支度
靴底がはや穴の空く冬支度
微熱ほど想い残せる冬支度
姦しき看護学科の冬支度
老犬のまぶた重たし冬支度
海鳴りを空耳に聞き冬支度
なんとなく心の弾む冬支度
冬仕度ポン酢醤油を箱に詰め
冬支度ビール酵母が呼吸する
メンタムのリップクリーム冬支度
老母まで寝言で忙しき冬支度
冬仕度新聞記者は西東
冬支度葉を踏みしめる母と子と
ポケットに去年の受け取り冬支度
冬支度なのかメンズエステに列
転がして運ぶタイヤや冬支度
パクパクと饅頭くらひ冬支度
冬支度藁屑山となりし庭
冬支度セールのビール4箱来
置き薬箱も新たや冬支度
積読の嵩の高さや冬支度
冬支度陽に晒さるる毛布かな
ワクチンを腕に眠らせ冬支度
師の墓に酒を置く人冬支度
遠くから友人来たる冬支度
編みかけの靴下片方冬支度
軒下をいろいろ使ふ冬支度
枯れかけの花そのままに冬仕度
妻の足ひつぱるだけの冬支度
袖を切りまた繋げたし冬支度
冬支度恋のごとくに湯を沸かし
カーテンを真赭(まそほ)の色に冬支度
土を見て乾く心に冬支度
冬支度妻の遺影に見つめられ
ピッケルの錆研ぎ落とし冬支度
冬支度クローゼットを掻き回す
週末に冬仕度して終わらない
海峡にこの風吹かば冬支度
真つ先に猫の餌買ひ冬支度
冬支度また来年と去りゆくロッジ
冬支度皮肉探して老いにけり
新調の厚きカーテン冬仕度
庭に出て冬支度の事考える
着ない服フリマで売るも冬支度
冬支度樟脳の香を嗅ぐ箪笥
額縁の埃払ひて冬支度
マネキンは今日一斉に冬支度
薪割りの甲高い響き冬支度
冬支度早すぎるショーウィンドー
冬支度床の水滴拭いて行く
学び舎の暇と云ひつゝ冬支度
評判の長編買うも冬支度
どうでもいいことをしてから冬支度