兼題「若草」__金曜俳句への投句一覧
(3月29日号掲載=2月29日締切)
2024年3月22日4:53PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
若草とは、春に芽を出して間もない草を差します。柔らかくてみずみずしい印象を受けますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年3月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【若草】
若草が背伸びをしつつ土を割る
傾いた家並み若草生い茂る
若草が古い友人連れてくる
若草に寄せて自詠の一句かな
若草や嬰の乳歯の生え揃ふ
野天湯のあふれこぼるる若草野
若草に話もはずむ帰り道
若草に溺れ二限をサボタージュ
やはらかく雨降りつのる若草野
若草に生まれて子犬転がりぬ
若草の足裏を包む散歩かな
若草野果て無く並ぶ戦死兵
父眠る若草のこの一画に
若草に小さき花の色とりどり
若草にマグマの力ゆらゆらと
若草の滑走路より離島便
若草や莫逆の友恙なし
若草を愛でる老婆の皺に風
若草に敷くハンカチを置き忘る
ヨボヨボト若草食べる散歩犬
嫩草や子羊の眼は川を見る
若草やころがすような水の音
つんつんとしたる若草まだ硬し
若草や取りいだしたるジャムの数
頬なでる風やはらかき若草野
若草や日に晒すべく手の湿り
合掌の爪先染むる若草野
若草の見えぬ窪みを跳びにけり
信仰を押し付けるのか若草に
若草や声なき鳥の影よぎる
若草の野の先客もペアの鳥
若草や豚肩ロース石焼きで
若草の石に白日うごかざる
若草や田舎暮しを分かち合ふ
若草や庭のテントの床硬し
若草や地球は青き星になる
若草の音符愉快なキーコード
若草や寝転ぶ我の背を押せり
若草の匂ひを運ぶ修道女
若草や隠れられないかくれんぼ
若草野虎と戯れたき日和
若草やその名いただく山光る
若草の水に濡らして切手貼る
街路樹を囲む若草幹線路
若草の土より萌えてやわらかく
若草を摘む園児らの佳き匂ひ
草若し婚姻は両性の合意のみ
読むたびに若草よく見る癖がつき
若草や幸福は空腹しのぐ
ラッキーなポテンヒットや若草に
若草やジョーの自立に憧れし
若草や微笑む君の皺の数
若草やずつと前から工事中
若草の土手ともだちの定義問ふ
句を拾い若草山に恋をする
老木の若草色の記憶かな
若草の匂い明るきドッグラン
黄緑の新芽ちぎりて若草野
若草に零れて丸き鹿の糞
若草や匍匐前進擬装兵
大地から精気頂く若草野
若草や女は大体離婚する
若草のやはらかきかな君とゐて
若草の匂へるやうな少女かな
花木の根若草ぎっしり植木鉢
若草を若き乳牛毟りけり
園児らはコロボックルに若草野
若草や未来見つめる少女の目
制服の背ナ若草の色と香と
若草や海へむかつて駆ける馬
若草やもったいのうてよう踏まぬ
若草に寝れば地球の匂ひかな
若草や鞄枕に寝転んで
若草を飽かず仔犬は嗅ぎゐたり
若草に妻をやさしく座らせる
若草や腰を伸ばせばいま青春
初草を食む乳牛の蹄跡
若草や闘争本能奪はれて
若草や第5レースのファンファーレ
紙の橇若草の土手すべりけり
若草を抜きて青き香深く吸ふ
猫の来て少年帰る若草野
畑の縁はびこりやまぬ若草や
若草や波の音する乾燥機
若草に心晴れ晴れ安らぎぬ
若草のグラデーションや海の道
三度目の恋か若草山を詠む
若草を染める絵筆が震えおり
若草の悪臭と知る教師たち
若草の覚める埼玉古墳群
心地よき若草ふわり包む靴
若草の筆名(なまえ)で過去を捨て去りぬ
若草の着物齢を忘れたる
武蔵野の雀隠れや小糠雨
若草と風を分け合ふ栗毛かな
若草にフォークダンスや匂ひ立つ
若草や入試を越えし新入生
古墳なる若草円く包みゐし
鳶鳴くや若草の山に子らといて
あをによし南都の風よ若草よ
若草を蹂躙するか装甲車
若草と抜け毛ぶら下ぐやつれ鹿
若草や一本早いバスを待つ
若草や孫は裸足で走りけり
若草や孫生まれし日さながらに
若草の他所みも良かろ家独り
若草に転がるボール見え隠れ
望郷や土やはらかき若草野
躊躇はず若草の野を駆ける子よ
ビニールを尻に若草滑り台
灰色の無関心を壊せ草若し
若草をわざわざ踏んでゆくところ
夕映えの若草に目白かくれけり
若草や幼の背ナの羽根の痕
若草の片足立ちの小人像
若草や我が子の巣立ち春の風
若草や吾子はじめての靴をはく
若草に五感清めし潔し
若草に決心したか女子高生
若草を踏むか踏まぬか思案して
廃校に若草映えて人を待つ
若草や四人は既に子沢山
若草のみどり瑞々しきみどり
若草の黄緑色の心意気
若草を求めし里は今モール
若草に捨てられたエロ雑誌かな
草すべりおしり若草色のしみ
若草も恥じらいながら風を受く
若草を若草としか呼べぬけど
若草や絵本の扉孫開く
若草を食ましておこう鳥の待つ
若草の続く塀なき庭と庭
街路樹の根元若草先ず登場
松明の焦げ跡隠す草若し
若草に裸足で踊る楽し日々
若草に寝そべる馬の鼾かな
あばら屋の影に身を伏せ若草や
街路樹の枠一杯に若草が
若草の野を掃く人の想われて
若草やサンドウィッチは二人分
若草を待ちわびたるか母子牛
赤子とは若草野より来たるもの
けんけんぱ続いて雀隠れかな
靴なげて若草の上歩きけり
若草を引く子どもらの声明かし
若草や夜明けの漁の一斉に
太陽の統べ得ざりけり若草野
若草の匂ひたつぷりかんじたり
若草や土手に寝転び風の中
奈良の古都若草だけの円い山
若草や両手を腹に三ヶ月
目の前の若草我は歩度緩め
ぐんぐんと伸びる若草子も走る
元妻と若草山に語る友
若草の光りて風を休ませる
若草を食む獣臭の野に満つる
あどけない若草に似た妹よ
若草が視界の限り明るうす
若草にかさぶた柔くなりにけり
山積みの段ボールの谷若草野
土手の草真っ直ぐ立って小生意気
若草へ宛てて屋上のため息
若草や和製英語の語尾きれい
若草や宿痾癒えゆく心地あり
若草を蹴散らす兵士鬨の声
若草やジョーの行く道青みたる
若草を杖に探りて文具屋へ
若草や雄鶏の声亘りたる
若草の透けゆくやうな翠かな
若草や夕暮れ惜しむ子のボール
若草はみな旨そうな緑なり
風巡るハンカチ落とし草若し
若草の伸びゆく空の蒼さかな
若草山鹿はのったり仏生会
移住者のテキサス訛り草若し
若草の匂ひこころを洗濯し
若草や古里いまだ抱きつつ
外に出て若草摘みぬ竹籠に
若草も人も踏まれて強くなる
若草や四国最南端の駅
ダンボール尻に若草土手滑り
若草野なべて一山戯るる
若草に出会えぬ都会暮らしかな
若草や藤村詩集をポケットに
踏み跡の若草は日々初々し
しかうして若草まみれにもなりぬ
踏まれても生きていくのか若草よ
若草や銃を構えて潜みけり
若草を毟って母を待つ境内
若草を摘む人如何に今朝の雪
若草や明日を生きる山羊の群
若草や鳥ゐぬままの籠があり
手付かずの地割の跡に若草野
若草やスパイス八種類カレー
踏まれてもぬかれてもなほ草若し
若草や遊ぶシーソー音やわし
若草を雨のやさしく打ちにけり
若草の地平線まで届きけり
若草や鶏を平飼してる庭
廃館の国民宿舎草若し
若草を嗅ぎ分け朝の老犬は
若草の野を穿ちたる演習地
若草や土手に寝ころび風に問ふ
若草に膝擦り剥きし子の眉毛
若草や糸でんわなら言へること
若草や腰のぐるりとその下の
坂道の草踏み倒し気に掛かる
若草や散歩の犬は伏せたまま
子供ごち素足ではねる若草や
若草や追つて追われて登校児
若草や下校する名も知らぬ君
若草や鳥のくちばし深々と
若草を摘んで孫とおままごと
若草に手足伸ばして生きるとわ
若草の勢い欲し眺めをり
若草やリュック担げば緑なす
若草の匂う牧場に後継者
若草に包囲されたる町工場
新しき乳に匂ふは若草野
若草やオレンジ色の妊婦立つ
若草の匂ひいっぱい新学期
若草や不発弾など埋まらぬ地
若草のまだ大方は土の属
若草の高さを猫の跳びゆけり
若草や離婚し親友喪いぬ
若草の色やはらかく恋あはく
ハーネスの猫や若草踏みしめて
若草や句会に筆名提示する
若草を踏んで少女の立ち上がる
若草を踏みて歩めば土匂う
若草や畑へ気のせくばあばなり
若草の萌えだすあたり飛鳥寺
若草や新しい事始めをり
若草の色香ばしき野となれり
若草や吾子の夢中の昆虫記
若草の既に錆ある線路敷
若草や老人ふたり通り過ぎ
若草や東雲滲む鳥の声
篠笛のカンタービレや若草野
絵手紙に若草を貼り付けてみる
雀来てかくれんぼする若草野
若草や湿り気のある恋心
若草のサラダ有ります百狸亭