兼題「春コート」__金曜俳句への投句一覧
(3月29日号掲載=2月29日締切)
2024年3月22日4:57PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
春コートは、「春の服」の傍題です。春らしい色彩のコートもありますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年3月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【春コート】
袖のタグ付けたまんまの春コート
春コート敦賀止まりに途中下車
春コートこころ百倍軽くなり
コートだけ小脇に挟みサングラス
やはらかな肢体とほして春の服
まだ寒い試合後羽織る春コート
春コートふはりこれからショッピング
コロンボか裾のほつれる春コート
春コート少女のよふな妻となる
うっかりが似合わぬ色の春コート
春コートまだ着られるはこれひとつ
土までも優しい郷を春コート
ぬか雨に傘ささずゆく春コート
階を駆けつて行けり春コート
道楽や探索の朝春コート
畑には春コート脱ぐ雰囲気が
春コート雨の匂ひの地下通路
春コート海からの風つつみこむ
校門に配るチラシや春コート
円心の柱にもたれ春コート
春コートふわりと軽し空の色
窓越しの時間途切るる春コート
春コート壁に吊らるる吾の形
風なびき春のコートで闊歩する
母九十四ふたたびの春コート
ポケットにラジオを入れる春コート
人さはの出発ロビー春コート
若き芸妓の肩がけの春コート
春コート遺した考は今いづこ
捨てられぬ昭和の型の春コート
ふうわりと身を翻し春コート
六法と鉢植え買うて春コート
泣くやうにして春コート席を立つ
春コートの母のメイクの恥づかしく
瓦斯灯の影は朧に春コート
遠くより妻に見ゆるや春コート
文鳥を購う日暮れ春コート
人混みにさらりと消ゆる春コート
独り言みんな知つてる春コート
ポケットに飴玉一つ春コート
紅灯をこぼさぬように春コート
春コートふわりふわりと飲み歩き
浜風や手を繋ぎをる春コート
春コート黄色が似合う琵琶湖には
駅で待つ淡き草色春コート
家のこと今日は忘れて春コート
春コート鏡の中は細かりし
春コート妍艶妍媚妍姿かな
足どりの弾んでいたり春コート
バゲットを2本抱えし春コート
春コートふわりと学舎後にする
偏奇館在りし辺りを春外套
軽くせし旅の鞄と春コート
誇らしげ初任地へ発つ春コート
春コート手にぶら下げて気もそぞろ
完全にそのまま妻を春コート
唇の赤き銀座の春コート
モンローの気分ではおる春コート
前髪を短く切つて春コート
翻る人の噂や春コート
着るべきか着ざる日なのか春コート
春コート俺か私か僕なのか
探偵の気付かれてゐる春コート
春コート襟立て捲る脳トレ本
春コート羽織りてゆかんノーガザ
目眩くやうな恋して春コート
春コート河馬の欠伸を見てをりぬ
春コートタグつけたまま帰宅せり
旅立てる棺を囲む春コート
短くも長くもないと春コート
本社から来たる上司の春コート
春コート脱がずに挙手の別れかな
ゴッホ展着て行く出番春コート
正直は亡母の教へ春コート
ママ友もマシュマロ色の春コート
シャンプーの香りが残る春コート
ヒロインになつたつもりで春コート
春コートおくれ毛の見え隠れして
春コート外を嫌いになどなれぬ
春コート父亡き後の防虫香
春服に風がメリーゴーラウンド
新しき部屋の見取り図春コート
ヨーソロー翻りゆく春コート
春コートどれにしようか悩む靴
お隣のはじめて見たる春コート
海鳴や明日へと向かう春コート
いつになくヒールの鳴るや春コート
春コート支綱切る斧光りけり
大股に裾ひるがえす春コート
活き活きと萌黄色なる春コート
断ち切れぬ思い募らせ春コート
色競ふクローク棚の春コート
うきうきと春コート着て当て所なし
よみがへる街のざわめき春コート
居酒屋の壁埋めつくす春コート
メロンパン切り株に敷く春コート
地下鉄の風も洗礼春コート
シャンゼリゼ翁と媼春コート
春コートふはりと希望あつめをり
淡き嘘上目遣いに春コート
形見なる着物倒して春コート
春コート再就職は週三日
高らかに靴音を踏む春コート
春コート清清と本名に生きる
大股に歩廊をゆけり春コート
雨風に抗ふ定め春コート
風が舞う雨音ゆかし春コート
艶然に戦ぐクリオネ春コート
校門を永遠に去る日や春コート
バス停の朝それぞれの春コート
延伸に一つ乗換え春コート
春コート靡かせ車道側の人
神様の気まぐれによる春コート
逢えるかもしれぬ空色の春コート
春コート傘に濡れつつ傘たたむ
春コート翻し去る汝の背追う
強風にきらり煽られる春コート
春コートウルトラビーム放ちけり
舶来品裏地もおしやれ春コート
パステルの色調淡し春コート
雲溶けて移り香淡し春コート
天王州アイルより乗る春コート
涙目で鼻水拭う春コート
春コート八十路迎へて夢数多
ピンヒールかつかつ風の春コート
クロークに残る一枚春コート
国境を定めし風や春コート
ポケットのコインの重さ春コート
缶バッチ裾に付けをる春コート
新任の部長の紅き春コート
水換えを忘れる偶に春コート
延煙管秘めて渚の春コート
春コート袖を引つ張る小さな手
春コート着てないような軽さかな
春コート少し寒いはご愛嬌
春コート同窓会なら着て行こう
春コート昨日今日もまた明日も
君の背が初めて羽織る春コート
ポケットに文庫一冊春外套
カジュアルなダウンになった春コート
伴侶逝き匂ひと歩む春コート
信号の青の点滅春コート
春コート着れば就活の娘の凛と
亡き父の遺品とまとう春コート
口紅の色を選びて春コート
春コートふはり防虫剤匂ふ
すつぴんの明るき眉や春コート
緋の裏地外し昭和の春コート
春コート肩を寄せ合ふ足湯かな
春コート袖だけ少し汚れてる
ハネムーン春のコートのピンク色
飴玉を忘れたままの春コート
咲き誇る女人高野の春コート
八十路来て色はピンクの春の服
春コート買えたとばかりに吊るされる
魅力ある女の恋の春コート
空を切る自分のこぶし春コート
春コート次は高輪ゲートウェイ
躊躇ひてのちの冒険春コート
片耳にティアードロップ春コート
春コート風をあつめてからのこと
旅慣れし人の歩幅や春コート
スプリングコート一番似合ふ街
貼るカイロ剥がして腕に春コート
春コート手にして日射す街歩く
歳を経て春コートすら断捨離し
あつちからまたこつちから春コート
コート抜ぎ片手に持って坂道を
浮き上るやうなステップ春コート
取り取りに四人姉妹の春コート
春コート希望と不安の袖の裏
東京は坂の街なり春コート
漣の湖の汀を春コート
春コート考の残り香感じをり
春コート一駅歩く帰り道
緋裏なる反乱兵の春コート
犬が尾を振る春コートまつはりて
今度ので何着目かな春コート
春コート身も心をも隠しけり
春コート羽織りつ告げる別離かな
ハチ公へ駆来る君の春コート
沖合へ風を孵すや春コート
コンビニへパジャマにさつと春コート
春コートイソップよりもアンデルセン
戻ったね自由の動き春コート
春コート腕を通すと弾む肌
止まり木で水平線を春コート
春コート裾ひるがえすためにある
木洩れ陽と午後の紅茶を春コート
ポケットに孫の手重し春コート
春コート午後の紅茶を熱くせり
陸橋にはためいてゐる春コート
春コート乳の匂ひを隠しけり
ハンガーのガウン押しのけ春コート
花粉邪魔だね左手に春コート
じゃれながら猫が戯れ春コート
春コート大桟橋より出帆す
春コート掛けてあかるき仏間かな
春コート隠し切れざる胸の内
駅弁を食べ歩く旅春コート
春コート大女優にはなれずとも
行先を決めぬ散歩や春コート
春コートデモに行く日は薄曇り
それなりに胸元あける春コート
肩に掛け鏡で気取る春コート
快速通過煽られて鳴る春コート
まだ似合ふつもりの色の春コート
還暦や春のコートのAライン
春コートずっと前から決めていた
初めての行き先ひとつ春コート
紙テープ袖に絡まる春コート
春コート中の制服真新し
ほほゑみはアシンメトリー春コート
春コート宙へと玻璃の昇降機
中継の新人記者は春コート
アルバムに若草色の春コート
パステルに光を受けて春コート
七星の斗魁の舟や春コート
春コート能登半島の海淡し
吸う息の予感を誘う春コート
母云えぬ豪華なコート父選び
ビル風に花びら舞って春コート
春コートまといAI睦み言
ピンクの春コート喜寿は通過点
社歌うたう緊張つつんだ春コート
デパートのエスカレーター春コート
ふんわりと前髪ふわり春コート
保険金おりて春コートのピンク
健診の結果の重し春コート
踏切に空気は鎖され春コート
高架下だけの鼻歌春コート
春コート気持ちも少し軽やかに
ホームレス今日からこれが春コート
退院の母を包みし春コート
青空に風さわやかや春コート
まだ着れる姉のお下がり春コート
黒テンのコートしまいて春コート
取材記者アイパッド手に春コート
スプリングコートガス灯けぶる街
微風や茶髪なびける春コート
春コート上る石段かろやかに
いつも乗るバスに見慣れぬ春コート
春外套風を愉しむ路上カフェ
春コートポケットに飴詰め込んで
出会ひのころの春コート髪をきる
足早に追ひ抜いてゆく春コート
騎士道の敷いて野原の春コート
母が逝き春コートのみ残される
春コートを着て煩悩を捨てさる
みちのくを喜寿の二人は春コート
気分だけ一歩先ゆく春コート
慕われたねこ駅長の春コート
春コートと看做し羽織るビリジアン
【春ショール】
春ショール街角ひとり真知子巻き
春ショール花束抱えて連絡船
地下街を風吹き抜ける春ショール