きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「夏炉」__金曜俳句への投句一覧
(5月31日号掲載=4月30日締切)

「炉」は冬の季語ですが、北国や山国など気温が低い地域では夏でも炉を焚くことがあります。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年5月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【夏炉】
テーブルに金槌ありし夏炉かな
奥飛騨の宿に思はぬ夏炉かな
こうだったあとは夏炉がないだけで
夏の炉や炎さらりと立上がり
夏炉炊く昔の恋の余韻ごと
夏炉燃ゆどの戦争も立夏かな
杣人の夏炉を囲む艶話
夕陽より紅き夏炉を焚きにけり
山上は夏炉とお喋りそして本
夏炉あり異常気象に惑わされ
夏の炉へくべる信玄公異聞
山あいの緑楽しむ夏炉かな
オロオロと歩く詩ある夏炉かな
ため息を大きく一つ夏炉前
驟雨なり濡れた肌身を夏炉に委ね
頼り無き子の便り開きて夏炉
古惚けし体内時計夏炉の火
夏炉辺の山の男の山談義
夏の炉や飲めば記憶の甘くなる
QRコード夏炉が動くかも
奥穂高入り日に燃ゆる夏炉かな
夏炉して一人この世の終りまで
山寺の夜露のがれて夏炉抱く
夏の炉のまわりに集い山談義
評決やまづは夏炉に手を翳し
五箇山にこきりこを聴き夏炉焚く
語り部を夏炉を囲む日中かな
叱責の矢面顔は夏炉向く
窓多き家に嫁ぎて夏炉焚く
夏炉の火集いて語る若き日々
夏炉とて静かな昼でありにけり
道東の釧路の家の夏炉かな
夏の炉の音のしづかに尖りけり
抱つこされ子守唄聞く夏炉かな
夏炉焚く心の重荷火にくべて
サイズMタンスのこやし夏炉の服
家独り夏炉はどこへ行ったのか
日めくりに祝福のメモ夏炉の火
百年の梁は墨色夏炉かな
北国の山奥一人夏炉かな
木の家の自慢の夏炉朱く燃ゆ
けふ釣りし魚の串立つ夏炉かな
夏火鉢つけても涼し不倫かな
最果ての山荘ひとり夏炉焚く
おくびにも手の内見せず夏炉焚く
縄文の夏炉の灰へ考古学
八月の地をはなれずに夏炉焚く
手に入れし古民家暮らし夏炉かな
辿り着き宿の夏炉に手をかざす
夏炉で餅焼く女官の夏炉冬扇
朝のバッハ炭香ばしき夏炉かな
僅かコークスに干物の匂う夏炉かな
雨が降り夜は夏炉の赤を見る
食って寝てあとは夏炉の暖かさ
夏炉端きろりとかなへび見ておれり
ちちははの蹠なまめかしく夏炉
コーヒーの香り漂ふ夏炉燃え
うつすらと夏炉の灰に時積もる
義姉さんと呼べば夏炉の遥かなる
熊撃ちの話わきでる夏炉かな
プーシキンの詩を回し読む夏炉かな
火を焚かぬ夏炉のどこか拗ねてをり
夏炉の火我が心の火燃え立たす
高山の夏炉まことにありがたく
河童見し話はずみし夏炉かな
猫臭き句友を照らし夏炉燃ゆ
靴箱に夏炉の熱の届きけり
信濃路や星まばたけば夏炉焚く
笑はない遺影を照らす夏炉かな
夏炉燃ゆひとりになりし電話口
夏の炉や人の字継ぎぬ飛騨の宿
緑濃くコーヒー味わふ夏炉かな
海女小屋は今朝も姦し夏炉燃ゆ
集まれば夏炉で魚並べ焼く
自在釘揺るる三和土の夏炉かな
山路に迷い驟雨や夏炉抱く
夏炉の火や肉の塊焼き上がる
夏炉焚く空の青さを讃へつつ
夏炉囲む昏き眼をした男どち
一度仕舞ったストーブ出して夏炉とす
薄暗き土間にちいさく夏炉かな
旅枕夏炉に残る火の匂
親友と原発論議夏炉燃ゆ
夏炉焚く居間に追悼式流る
奥美濃に我を迎える夏炉かな
納得の行かぬ火入れや夏炉の夜
夏の炉に焼きたき岩魚釣り上ぐる
青春の今一たびの夏炉燃え
定宿の我のこと思つて夏炉
白樺の宿は夏炉を焚き始む
年とりて夏炉もいまだ止められず
結核の祖父の足元夏炉かな
建替えの設計に消ゆ大夏炉
一年はあっという間の夏炉かな
我が妻にどこか似てゐる夏炉かな
山小屋の朝餉は熱し夏炉燃えて
夏炉焚き白馬三山眺めをり
山小屋にむさい男や夏炉かな
夏の炉へ靴下履いたままあぶる
だんまりを決め込んで焚く夏炉かな
塩飴を舐めて膨らむ夏炉かな
北の海苦労話の夏炉端
手を当てて夏炉に思う父母の顔
夏の炉や沸くものも無く自在釜
しおり抜き遠野の語り夏炉かな
うす暗き部屋も夏炉のたのもしき
夏炉の火迎へ山荘開きし日
老猫の浅き寝息や夏炉の火
行き暮れの小屋に沁みいる夏炉かな
夏炉奥団らん消ゆる一人鍋
怪談の後の夏炉を消しがたく
夏炉より離れたる早立ちの女
挨拶は夏炉の部屋で行はれ
肩すくむ寝起き夏炉にちろりかな
夏炉には故郷の色が潜んでる
それぞれに脱ぎ散らかせて大夏炉
夏炉焚く雲の狭間の青と蒼
待ち人を待つかの如き夏炉の火
夏の炉に友が爪切る夕べかな
松葉杖はずさぬ祖父や夏炉焚く
ほろ酔いに夏炉の音のやはらかし
山小屋ははや寝静まり夏炉消す
夏炉から故郷の話盛り上がる
ダム湖より風の鋭き夏炉焚く
旅人にゆたかなる火の夏炉かな
夏炉にて重荷を下ろす山女
リュック置き夏炉が誘う夕餉かな
北の果て夏炉はいまだはなされず
夏の炉に裸電球燃えてゐる
夏炉燃ゆ政治談義の土佐の宿
夏炉燃え近づくやうで遠ざかる
自在鉤手持無沙汰や夏炉かな
夏炉辺に絵日記を書く男の子かな
屋根に枝さやさやと鳴る夏炉かな
夏炉焚き夜勤の妻を待ちにけり
サスペンスあと百ページ夏炉の香
背をこごめ夏炉に当たる湿気かな
ログハウスハイカラめきぬ夏炉かな
ウイスキーグラスを揺らし夏炉焚く
木彫り熊出自はベルン焚く夏炉
遠泳の子らをねぎらう苫屋夏炉
ゆつくりと魚あぶれる夏炉かな
夕暮れて夏炉の緋色囲みけり
徳澤の峡空の星夏暖炉
夏炉冬扇灯油のポリに夏風
生業の知れぬ夫婦の夏炉かな
一匹を逆さに炙る夏炉かな
串さしの化粧塩美し夏炉かな
彼方より客向かひくる夏炉かな
雨を来て三和土を濡らす夏炉かな
夏炉守る人待ち顔の老漁師
口紅のあえかに温む夏炉かな
山の家薪ボンボンと夏炉焚く
宵長けて尽きぬ山路に夏炉夢み
遠き日の母の実家の夏炉かな
その男ひとり暮らしの夏炉焚く
夏炉焚く納沙布岬鴎群る
ウェットスーツまだ濡れてゐる夏炉かな
夏炉爆ぜ津軽じょんがらいま佳境
穴子焼き夏炉に団扇の炎立つ
山の宿日がな夏炉に滾る鍋
縦走図読む早暁の夏炉前
残り香を優しく纏ふ日の夏炉
場違ひの人までをりし夏炉かな
炎立つ夏炉に雨染む炭の音
仏壇と夏炉の匂ふ広間かな
夏炉焚く山小屋わが身ひとりなり
終バスの降りますボタン夏炉かな
夏の炉に焼べる憂ひや峡の宿
夜明けより夏炉焚きたる兜太の忌
去り難き夏炉のありて八合目
諂はず開き直らず夏炉焚く
夏炉には夏炉の影絵ありにけり
夏の炉の炎みつめる外は雨
山峡の吟行あとの夏炉かな
君夏炉意味のわからぬ幸せ人
終活や渦高く積まれし夏炉受験本
仕舞ひ時祖母の定むる夏炉かな
夏炉から営業職が去つて行く
吝嗇の祖父に似し顔伏せ夏炉
海女小屋の夏炉へ数多客迎ふ
夏炉焚き娘との再会待ちわびる
一輪もラジオのみなる夏炉かな
消ゆるまで語るはらから夏炉酒
蕉翁の奥より奥の夏炉かな
夏の炉に家庭教師を座らせて
夏炉たく心痛めし君がため
なんとなう夏炉のあれば寄りにける
膨張する宇宙の隅で夏炉焚く
二色(ふたいろ)の縞の靴下干す夏炉
なにもかも忘れさせてくるる夏炉
夏炉端俳句談義の始まりぬ
靴下を脱いで夏炉へかざす足
夏の炉や離れの媼起きて来し
夏の炉や口火を切らぬ名付け親
寒がりの亡き夫想い夏炉焚く
神聖な会議が有れば夏炉かな
まどろみて亡き友思ふ夏炉かな
夏炉焚きくるる訛の大き声
もてなしは夏炉を囲むコップ酒
若者に夏炉と言ってちと悔やむ
夏の炉や文庫本伏せうたた寝す
暮れなずむ山の家にも夏炉かな
折角の夏炉だけれど朝はパン
暑くても味噌汁沸かす夏火鉢
夏炉辺に山の雨音聞いてをり
客を待つ土間吹き抜けて夏炉焚く
剥製の多き屋内夏炉かな
地酒酌む頬に夏炉の火照りかな
夏炉焚く伯父の胡坐と疎開の子
寛ぎて先ずは夏炉でご一服
人の住む生家に夏炉燃ゆるべし
雨の家の燻り止まぬ夏炉かな
山小屋の夏炉の具合よき火勢
革命の小さきアジトや夏炉焚く
少年の脛のあらわに夏炉かな
玉砂利を踏む音届く夏炉かな
夏炉焚きみんな無口の老家族
高千穂の宿坊や夏炉に当たる
夏炉辺にしづかな炎這つてゐる
夏炉辺のシングルモルト夜の黙
中山道夏炉を護る媼の眼
俄雨飛込む小屋に夏炉の火
夏炉となり歳を重ねて自覚する
真昼間を着崩れてゆく夏炉かな
弟子屈町屈斜路コタン夏炉焚く
吊橋を渡り夏炉の夕餉かな
去年よりコレストロール下げ夏炉
夏の炉や花嫁の武勇伝など
辿り着く居間の夏炉の小座布団
夏の炉やいぶし続けし飛騨の宿