きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「蛸」__金曜俳句への投句一覧
(5月31日号掲載=4月30日締切)

蛸は、日本近海に30~40種類ぐらいすんでいます。真蛸がよく知られています。大きめの歳時記でないと掲載されていない季語です。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年5月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【蛸】
自ずから人生の蓋を開けし蛸
蛸科蛸蛸目蛸と虚構華
船上にのたくる蛸や一掴み
噛むほどに味じんわりと蛸の足
蛸旨しオクトパスなる物怖し
財産があってもなくても蛸の足
大蛸や脚美しく干されをり
蛸を食ふ躓きやすき我が二足
看板に偽りなしの蛸の島
蛸ショーは水族館の贈り物
蛸さばく自信ないからリリースす
駅弁でテイクアウトや蛸の壺
雨晴れて盥に雲のごとく章魚
水槽に蛸の吸盤位並びて
蛸足を咥え引かれる酒の席
ぶつ切りの蛸や昨夜の諍ひの
茹蛸を酢味噌でどうぞ置きにけり
チューチューと鳴くタコ押え塩で揉む
煙幕自慢の蛸疑似餌飲み込み
フジツボに吸いつかれたる蛸の壺
ゆでられて赤くまるまり蛸一つ
湯釜より揚がる激怒の赤き蛸
蛸坊主波間に黒き頭みせ
議事録は蛸の話題が二割五分
おほだこのいつかは空に登るとも
仰ぎ見る蛸の干物の風物詩
熱燗に蛸のぶつ切りまず一献
蛸茹だる足先小さく巻き込みて
中空に吊られて蛸の形無し
リベラルを履き違へたる蛸がゐて
もう宇宙つぽい色をしてうかぶ蛸
一喜一憂占い蛸は壺の中
とことんまで揉みて叩きて蛸を煮る
蛸飯を勧める人と長話
特売日蛸は小さい蛸焼か
大蛸の一つ市場の休日に
上げてフフフ!壺に仲良し夫婦蛸
アフリカの海の匂ひの蛸を食ふ
蛸干して遥か彼方にポンポン船
生きたまま切ると美味しい蛸の足
指引張り蛸の身になる干物かな
飯蛸が盛り付けられて哀れかな
茹で蛸の足を噛じりし須磨の浜
茹蛸の交接腕と知らず食ぶ
飯蛸も姿隠したこの時勢
風乾く凧の形に蛸乾く
寿司を食う飯と蛸だけ残す人
島風に濡れたる蛸のまなこかな
壺中にて哲学せむと蛸言へり
若かった夢があったと蛸握り
蛸串が串になる金曜の夜
夏の蛸己を無にす擬態かな
たこさんだ弁当を見る子どもかな
逃げる蛸足動かしつ考える
船の上怒りの色で躙る蛸
蛸壺のいつだつてどこだつて夢
蛸釣の話だけにて酒を酌む
蛸を干す醤油の甘き漁師町
蛸だのみどつちの壺か好き嫌い
逃げまどい浜をかけるや明石蛸
拷問は足より責めよ蛸のぶつ
お通しは蛸の腹だか頭だか
足八本ぶつ切り蛸のあはれかな
墓じまひ決まりし夜や蛸を切る
トロ箱をはみ出す蛸や父のの午後
こらと言ひ蛸追ふ競りの朝
くねくねの八足蛸見つけ初夏の海
父に似る瞼の窪み蛸の角(つの)
たはやすく釣られし章魚の怒りかな
逃げるのか徘徊するかこの章魚め
虫偏のたこ魚偏のたこ恋しがる
タウリンを摂れと言われて蛸を買う
競艇で勝って現世は蛸でした
春日傘露店の蛸のやわらかさ
お下地に和えるぶつ切り蛸一杯
蛸壺に蛸や漁港は猫だらけ
舞ふやうな艶かしさや蛸の足
砕かれた恋の色して蛸の黙
大蛸や刑事は手錠ひとつ下げ
反戦の墨を吐く蛸吐かぬ蛸
駅弁や色取りどりにひっぱり蛸
ウツボに足喰われた蛸墨を吐く
カフカの『変身』のたうちまわる蛸
蛸揚げる母の長箸待つ卓袱台
壺倒れ蛸ぬるりんと広ごれり
海の蛸養殖の蛸と生簀蛸
居酒屋の蛸を酢味噌で勧められ
逃げ出して追はるる蛸となりにけり
章魚が這ふどこに行き場があるのかと
洗い機に一本欠けた蛸の足
検診の結果を待ちぬ蛸の鬱
八本の骨無き腕で縋る蛸
嘗て水ありし星より来たる蛸
タコ飯はいつも売り切れ三原駅
蛸を突きながら少年よくしゃべる
モーリタニアより迎えし真蛸ぶった切る
蛸ゆでて平和な昼でありにけり
軒下のバットマン蛸天日干し
蛸壺ややがて攻守を転じけり
水底の景色に蛸は身をゆだね
目眩まし忍者の如く消ゆる蛸
定年の花束置いて蛸を食う
悪友は大蛸茹でて待ちにけり
かたちなき蛸を突く銛尖らせて
蛸串の足はぐるぐる土曜市
陽をひねるように掲げる真蛸かな
張り付きし蛸の重みに傾ぐ壷
揚げらるる蛸の目玉に怖き人
蛸足の恋する長き八本目
蛸壺に色も形も委ねけり
祝いの日欠けぬ酢蛸は母の花
タコ足で配線したら夏火鉢
一湾の明るくなりて蛸浮かぶ
茹でらるる蛸やぐにゅぐにゅ蓋を押す
蛸を噛むときは頷く子どもかな
蛸皿を持つ祖母の巨きな体
蛸壺や引き上げ機から重き音
二十億五才みたいな蛸の皺
甲板を顔色変えて逃ぐる蛸
蛸怯ゆ奴には顎が二つある
日本人海の怪物蛸食す
蛸刺身噛みて話の進まざる
一塊の凪のようなり蛸を引く
UFOキャッチャーの前に蛸売らる
蛸の腕あたまを失せし事知らず
蛸のごと自足食うかと腹きめて
蛸として墨を吐くほかなかりけり
トロ箱を蛸逃げ出でて海遠し
蛸茹でしかたはら雨月物語
蛸さばく手際に通夜の華やぎぬ
これはもう章魚と云うしかないうねり
たこ焼きで焼いて食べたい冗談を
大章魚の吸盤に血の滲みけり
蛸の足ほどに当たりる炎天下
どさつと落つ逃げ出す蛸の速さかな
老翁がガムのようだと食らう蛸
鉄板の上で暴れる蛸足かな
貼りつきぬ蛸の吸盤もてあます
蛸を釣るみんな真顔の男どち
ポリバケツゆさぶってゐる蛸の足
語尾やさし伊予のことばや蛸の足
夫婦愛蛸の足から離れずに
蛸壺に蛸壺重ね洲崎港
夕暮れを背にして蛸と生姜かな
大海を人に似せたる蛸泳ぐ
釣る蛸や幼子泣かす夏の宵
釣られたる蛸のリベンジ恐ろしく
干し蛸や蒼天へ吹き上るごと
コジラにはなれず今夜も蛸で飲む
蛸も皆今日の生命を燃やしてる
高潮堤に真蛸釣る父と子や
蒸し蛸やモーリタニアの漁師たち
詫び言ひにゆく一杯の蛸下げて
蛸壺にはまったような介護の日
鬼のごと大蛸茹でる父なりき
海中に忍者の如き蛸住みぬ
吸い付けば夢も叶うや蛸の恋
鞆の浦干さるる蛸に風青し
一本の足の千切れしままの蛸
蛸壺の雨に朱色の濃くなりぬ
生に茹で酢に味噌お米蛸尽くし
祭への蛸なり長き足を選る
食ひ初めし人ゐて蛸の足旨し
どの惑星も知つていさうな蛸そろり
ぬめり取る布巾のやうに蛸洗ふ
蛸乾くとうに命をなくしけり
べつたりと赤子俯せ蛸のごと
飯蛸を海に返した子供の頃
蛸飯や大橋くぐる豪華船
蛸議員壺にはまりて手足出ず
ぬるりきて鋭き歯のある夏の蛸
蛸涸るる炎天のなか一夜干し
蛸提げて空つぽのトロ箱虚し
居酒屋で足絡めつつ蛸を食ひ
茹でられて蛸のゆらりと足を出す
擬態して君の後ろに蛸がゐる
足一本パックに並ぶ蛸の生
子は蛸を百回噛めど飲みこめず
蛸壺へ潜り込みつつ出てゆけり
蛸を釣る兄の腕に力あり
這ひまはる蛸と嫉妬と色欲と
柳蛸やあし噛みしめて陽が落ちる
飯蛸を割りて友の忌過ぎにけり
蛸壺の蛸追ひ出して誰入らむ
白い皿蛸の白身の白を食ぶ
蛸壺も住めば都や夏の潮
蛸壺の空ばかりなる温暖化
蛸食へば昨夜の夢のことがふと
安酒と叶わぬ夢と酢蛸かな
蛸干すやきらきらきらと斎灘
一日に一度は嫌な事ぞ蛸
蛸をつつく妻水を弾く布巾
たこ焼きのあつあついつも舌やけど
水槽の蛸は思案の哲学者
蛸かいな蛸の漁師の二進法
水槽へ蛸を投げ入れ飛ぶことば
お蛸さんと尊ぶ姑花の影
水蛸をお酒と食べてうちわする
冷酒に茹だった蛸の顔煽ぐ
蛸をつつくおとうといもうとの声
シャンソンの夜や地蛸を炒めつけ
海峡の蛸はしまって美味となる
我が身喰ふ蛸や幸せ依存症
蛸を見て蛸は食べぬと思ひけり
蛸喰むや味わふ程に旨み増し
切られたらよく動きだす蛸の足
壺の章魚太古の声で鳴きにけり
蛸飯にそれはちゃうやろタコライス
舟揺れる追うレポーター逃げる蛸
蛸釣った彼一等で文句なし
蛸壺に無断で泊り逮捕さる
蛸を突く少年の目輝きて
蛸壺の中で眠るやラブホテル
浜風や傘開くよに蛸干さる
一杯で何人の胃へ蛸のぶつ切り
泣きながら蛸の足をば食い尽くす
大蛸を見つけ騒ぎた岩の上
蛸の足かめばかむほど味の良し
蛸壺に蛸眠りたる朝の雨
笑顔にて蛸にからまう漁師いて
笑ひゑの画題の蛸や喰はれしか
蛸飯や海の香少し濃くなりぬ
美し哉明石蛸焼き玉子焼き
子が釣りて父釜茹でる真蛸かな
早波に蛸のねむりの千切れたる
くらやみに蠢く蛸の白さかな
ぬらぬらと蛸の自在に生きてをり
幼子がタコ見て一緒に身をくねる
蛸島の蛸壺漁は太古より
蛸掲げ得意満面来訪者