きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「稲の花」__金曜俳句への投句一覧
(7月26日号掲載=6月30日締切)

晴れた日に花をいっせいにつける稲の光景は実りを予感させますね。午前中の2時間程度しか咲きません。みなさんは見たことがありますか。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年7月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【稲の花】
仏壇に新しき水稲の花
人生は稲の花より短くて
通学の自転車とほる稲の花
農に生き安堵の父や稲の花
嵐来る予報のありて稲の花
日の本の実りを照らす稲の花
越後いま青き籾割れ稲の花
楚々と咲く珠玉の卵稲の花
稲の花八十八の手間半ば
水道の水は節約稲の花
裏金の抜け穴残し稲の花
稲の花ひとかたまりにすきとほる
千枚田倖せ色の稲の花
軟水の運河ぬるぬる稲の花
昼時の畦へ放つ香稲の花
稲の花長さちがひの夫婦箸
稲の花やがてお米になる準備
まばたきの風をつぶさに稲の花
大雨の後の静けさ稲の花
星屑を探しに触れる早稲の花
純白は神聖な色稲の花
雨細く音たてはじむ稲の花
稲の花風に強弱ありにけり
県道を横切るバイク稲の花
君のためだけに咲くのさ稲の花
中小の賃上げ伸びぬ稲の花
稲の花母の寝顔を見舞ひたり
いねのはな雲のなかより雲生まれ
葬儀にも帰らぬ兄や稲の花
屋根屋根の遠く暮れたる稲の花
稲の花雨にも負けぬ強さかな
稲の花限りなく深海に咲く
むつとする風なき朝の稲の花
川下の友が来ており稲の花
ほんとうのことは言わない稲の花
稲の花乗客をらぬバス行きぬ
風吹くと波打つ生成り稲の花
地の匂ひ真水の匂ひ稲の花
おおらかに紫煙吐く背や稲の花
稲の花恋路見るなど野暮と知る
稲の花また野良猫に傷増えて
裾野まで見渡す限り稲の花
稲の花天の卵を孕みけむ
朝ぼらけ神の加護受く稲の花
稲の花地産地消やありがとう
籾よりもまこと小さき稲の花
蔵町の坂のうへより稲の花
ジーパンの刺繍のほつれ稲の花
声嗄らす候補者稲の花白し
一円に喜びを敷く稲の花
稲の花二百十日の穂先かな
稲の花両手で開ける井戸の栓
稲の花次の命を教へをり
流木にまだ緑あり稲の花
合鴨の育てる里の稲の花
優曇華の夢を紡ぐや稲の花
泥に立ち実りを隠す稲の花
稲の花咲き初む郷に思い馳す
予定日の三日過ぎたる稲の花
稲の花寺社の喧騒ふと聞こゆ
養生テープはがすよに治癒稲の花
稲の花最寄り駅まで三十分
風いくつ落として稲の花盛り
登校の歌声囲む稲の花
稲の花楽譜のように咲いた咲いた
幼子の指で弾かれ稲の花
稲の香や花の咲く日を疑はず
細やかに一つ翳りて稲の花
稲の花散りて伺う水の色
去り止まぬ母の面差し稲の花
居酒屋で初恋談議稲の花
一つ咲き二つ咲きゐる稲の花
雨に散るさだめの稲の花なりし
知られざる恋の駆け引き稲の花
穂に透ける慶事の初め稲の花
気づかぬまま開花と受粉稲の花
稲の花飽きずに歩く子犬どち
神様が授けてくれた稲の花
ひらがなのおほきメールや稲の花
稲の花孫の重みを認識す
唐突に野わたる汽笛稲の花
畦道を鬼ごっこして稲の花
出生率連続減や稲の花
豊作を祈りつ眺む稲の花
つましくも確かなる実に稲の花
稲の花神様たちに追い出され
小流れは風の遊び場稲の花
神様とワルツ踊ろよ稲の花
実りある旅の途中に稲の花
寺の子は郵便夫なり稲の花
稲の花一斉に咲く一反歩
稲の香に昼の箸取る親子かな
雲間よりかそけきひかり稲の花
人知れず開いてをりぬ稲の花
稲の花神仏ともに村興す
棚田より零るるやうに稲の花
千枚の田にやはらかき稲の花
稲の花渇き覚ゆる農夫どち
生きるのは幸か不幸か稲の花
待ち人の稲の花からあらはれる
昼からは地区の寄合稲の花
農の文字田を耕して稲の花
糸底をまず洗ふ碗稲の花
妖精は津軽弁らし稲の花
育つよう富草の花ぬ祈りをり
抱きしめるためにある腕稲の花
風にかしぐ細きうなじは稲の花
稲の花鳥居の白の清々し
猫の目の眩しそうなり稲の花
稲の花ぷちぷちと咲くビオトープ
亡き父と共に植えし稲の花
アンダンテカンタービレや稲の花
母の介護すこし怒って稲の花
水音がして水みえぬ稲の花
減便の能登路に匂ふ稲の花
稲の花視線の奥の御岳山
細密に鉛筆で描く稲の花
稲咲いて苦労安堵の昼餉かな
カレンダーめくりぬ稲の白き花
稲の花いくさの大地広がれり
炊きたての飯の匂ひや稲の花
秋津島黄金となる稲の花
言われぬと見過ごす自信稲の花
変声期だんまりつづく稲の花
白鷺の尾羽根に揺るる稲の花
稲の花絞り出されて恋をする
稲の花いつもの鳥の声がして
合鴨にかはるロボット稲の花
稲の花祈り見つめる農夫かな。
寄合の議題は祭り稲の花
稲の花道路に落ちて居る死体
舌鋒は鋭し稲の花やさし
泥の海微笑み写す稲の花
老人は歩くが仕事稲の花
だとしても世辞は言はない稲の花
豊作の予感孕むや稲の花
ひと時の静けさ稲の花なびき
稲の花また工場が建つ田舎
稲の花女子高生の若白髪
ふるさとに郵便夫老ゆ稲の花
未だ見ぬと噂をすれば稲の花
稲の花ルーペ使って観察し
長江の稲の花てふ刹那かな
稲の花みな控へ目な農家族
稲の花あはき実りに夜汽車かな
稲の花揺れて我家の一年分
稲の花ゆうべは咲かざりしものを
百年の学校田や稲の花
稲の花黄金の海を約束し
あくまでも静かな村の稲の花
孫帰る遠い汽笛や稲の花
稲の花咲いて豊作待つばかり
よく見えずルーペ必須の稲の花
稲の花数分毎の新幹線
きらきらと雲の切れ間を稲の花
稲の花言い方に棘あるかもね
稲の花中途半端を憎みけり
期待ほど揺れてはくれぬ稲の花
稲の花ハウスマヌカンだつた妻
坂越えて田の面の香り稲の花
郵便夫触れて自作の稲の花
稲の花石を拾ふにかがまりて
面白きすがたの雲や稲の花
それぞれに神の宿て稲の花
特急列車毎時見送る稲の花
稲の花その一言を聞き返し
稲の花そよぐ程度に風のあり
立ち昇る田水の温み稲の花
稲の花喜んでいる祭人
道祖神の笑ひごゑ聴く稲の花
急行は風を残せり稲の花
バス停へ風さらさらと稲の花
田園のよみがえる夢稲の花
稲の花仏の顔の農夫かな
祝福は我から君に稲の花
朝歩き続けて久し稲の咲く
大水のあしたに泳ぐ稲の花
みづおとの力強さよ稲の花
日曜はバスの来ない日稲の花
近道の畦道通る稲の花
達者なる農夫手にする稲の花
水が沸き稲の花には未来有り
生色とは生きる色なり稲の花
稲の花白くほのかに青田かな
ここからが正念場かも稲の花
犬小屋にすずめ来てゐる稲の花
稲の花神には神の都合有り
惣領を押し潰しをり稲の花
田に溢る水面に映る稲の花
稲の花小稚児のやうに見つめをり
稲の花可愛い我等の糧ならむ
稲の花運動場に万国旗
ありもせぬ円き未来や稲の花
合唱部女声響くや稲の花
稲の花挿すや尾鰭のつく訃報
嫁の乳の豊かを憎む稲の花
対岸の弦楽かすか稲の花
スーパーとコンビニはさみ稲の花
稲咲いて花水満つる田の面かな