兼題「新涼」__金曜俳句への投句一覧
(7月26日号掲載=6月30日締切)
2024年7月8日3:18PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
秋になって実際に涼しく感じるのを「新涼」といいます。一方、「涼し」は夏の暑さのなかで感じられる涼気をいい、夏の季語となります。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年7月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【新涼】
新涼やボーンチャイナにレモンティー
新涼の道歩き来る君なりし
宅配のドアの開きて新涼よ
新涼や手の窪ひやり化粧水
活動がやや不活発新涼だ
新涼や第二ボタンをはめにけり
新涼や芝のきれいなスタジアム
新涼やガラスの器漂白す
新涼や睡気とろとろ浜の家
整備後のハンドル軽し涼新た
新涼や東西の山健やかに
かさぶたに新涼の吹く帰り道
通院の道にカフェあり涼新た
新涼の子規庵訪ふて子規と座す
新涼を突き刺すやうにコルクの木
一桁の背番号得て涼新た
新涼やブルー・ジーンズ着こなして
新涼の手首に留めるカフスかな
新涼の風のページを捲りをり
新涼やアルバトロスも狙えそう
新涼や登山電車の窓開けて
愁ひなき新涼の身の軽き
新涼や空つぽの消火器かたす
新涼の花のあふるる手水鉢
新涼や今年はどんな爪痕が
秋涼しゼリーにくるむ粉薬
新涼やいつもの径のたがふ風
新涼の尾根に影濃し道標
客人の帰し後の涼しさよ
作業場が新たに涼し十八度
新涼のメンバーチェンジ下半期
新涼や払いの決まる筆の文字
新涼やひかりに乗りて上京す
くたびれたジャケツ新涼の箪笥
張り出し窓開け新涼の風入れる
鬱然と茂る垣梳く新涼や
新涼やローランサンの女たち
新涼の風少し入れ路線バス
苔寺や右も左も涼新た
文具屋の鉄の地球儀涼新た
新涼や枝より薄き枝の影
新涼や炊き込み飯と焼き魚
新涼に海を拝みし顔になる
新涼や食事制限続きをり
後輩できて初めて涼し作業量
新涼や水辺に舟のうらがへり
新涼やメモ新しきカレンダー
濃く淹れる茶も澄みてをり新涼なり
新涼やウォーキングも心地よく
新涼を待ってた汗の警備員
新涼の腿をあらわにチューバ吹く
新涼や気遣ひてつく嘘ひとつ
新涼や人の流れが変わる頃
漕ぐ足の坂道満ちる新涼よ
新涼や青きインクの乾きたる
新涼のその先かぎりなくしづか
新涼やおニューの着物藍淡し
新涼や行方定めし風の向き
新涼の潮位見守る監視員
新涼や劉備玄徳入蜀す
新涼や流るる雲を追い越して
新涼や峠を越える大自然
新涼の空にゴルフを打ちにけり
新涼やあれだけ暑い夏を乞う
新涼や野草の疲れ癒しをり
新涼の風に吹かれて金の野辺
床屋出て新涼の風髪撫でる
大いなる水玉膨らむ新涼明
秋涼しカリンバ弾く(はじく)蚤の市
新涼や乳房豊かに張つてをり
ホコ天に人が満ちゆく新涼や
新涼やビル風吹かぬ川辺出る
新涼や草草の名を特定し
ぱりりんとゆで卵剥け涼新た
新涼の崖線を行く喜寿の会
新涼の香り渦巻く浅草寺
「新涼」の文字が迎える洋品店
新涼にふと覗き出す本の棚
新涼や墨田川見る芭蕉像
新涼や旅先に買ふ白髪染
涼新たシャンプーリンス取り替える
新涼の舟べりすこし湿りをり
新涼の縦笛を組む子どもたち
時間給プラス十円涼新た
新涼の珈琲の香のあたらしき
一発で決めるホチキス涼新た
風音の音は置きざり涼新た
新涼や初日の朝の移住の地
新涼のくしゃみが誘う笑い声
絶倫は新涼の中で駄目になる
五輪過ぎ選手の貌に新涼よ
新涼や朝の白湯飲む咽の音
新涼や萎える心にありがたく
新涼や雨の匂ひの立つ舗道
新涼に富士従へる
新涼やするりと入るリーバイス
改札をさらりと抜けて涼新た
新涼の講演子らのこゑ高く
新涼や先生いつも青ジャージ
新涼や吹く風ぬめり運んでる
少し減るHOTの文字の新涼や
新涼や戦終わるの声聞かず
新涼の風生まれ出る朝浄め
新涼やまだ湿りたる馬頭琴
新涼の風に抱かれて墨を磨る
新涼の街透明に俄雨
新涼に飛び込む森のジップライン
走り出し新涼感じる足元に
新涼やスープとろりと喉を過ぐ
透き通るショットグラスに飲る新涼
新涼の雨にそのまま濡れにける
新涼の風旅立ちの朝清か
新涼の縁に汗かくグラスかな
新涼や始発電車の我ひとり
新涼や一段落のランドセル
新涼の街遠くまで澄み通り
小刀で尖る鉛筆涼新た
新涼や網戸の夜風部屋に入る
新涼の部屋に残りし鉄アレイ
新涼のふらんすぱんに蜜垂らす
新涼や昼の蕎麦屋のにぎはへる
新涼の檜を削る鉋かな
新涼の古書店街に古道具
新涼の背筋ただしく一輪車
盲導犬足音軽ろき新涼よ
新涼の余白の広き句帳かな
新涼やハグといふもの良かりけり
新涼や黄昏時の満潮位
新涼や図鑑の鳥のひだり向き
収穫の朝やうきうき新涼よ
新涼の来たる彼方に北磁極
小説は下巻へ入り涼新た
新涼の書斎へアールグレイの香
新涼のおおらかに塗る肖像画
立食ひのかけ蕎麦一杯涼新た
新涼に鈍色の海振り返る
涼新た手足軽々目覚めけり
新涼のペットボトルのくびれかな
新涼のこのとき仕事捗らす
新涼や床々毎の踏み心地
処方箋見せ新涼の道を行く
新涼の柳生経て大柳生経て
新涼を連れて富良野の兄来たる
新涼や同じ箇所また読む文庫
新涼に脂汗して我を産めり
さはさはと新涼に揺れ名無し草
毛筆の梵字を和紙に涼新た
新涼や山見える日も見えぬ日も
新涼や時差ぼけの町朝まだき
推し活や新涼生るるエネルギー
新涼や縁台将棋の沈黙す
新涼の夜を五台の暴走族
新涼のピアノの響く駅広場
新涼のシャンパンの泡吹き上がる
新涼の朝に取り出す文庫本
新涼の先は見えない夜も世も
油絵に白のひと塗り涼新た
新涼や風と舟ゆく多島海
新涼や道草寄り道帰り道
新涼やドーナツはこぶ化粧箱
新涼の白川郷に紙を漉く
涼新た海を通つてくる小石
あの人が髪色変えた新涼や
新涼の風に吹かれて芒野や
新涼や燗酒呑みて蕎麦啜る
新涼を待ちわびる庭青い空
新涼や清拭さるる首背中
新涼や川藻に沿いて魚のひれ
新涼の?落としや鏡獅子
新涼やコンビニ近くなる穂先
新涼や猫と居眠竹床几
灯籠に遊ぶ葉影や涼新た
熱帯びし囃子の稽古涼新た
新涼やそろばん塾の音すがし
新涼やこんな川にも川明り
新涼へ痺れる四肢を踏み出せり
朝の月天窓ひらく新涼や
日は暮れて我れ新涼の風となる
新涼やいつもの径のたがふ風
新涼や窓を閉めると明し月
新涼や書き込みなしのカレンダー
新涼の青が飛ぶ蝶豆畑
球投げて放物線の涼新た
新涼の風を迎える机かな
新涼の鳩ざわざわと飛び立ちぬ
新涼やカフェの木椅子のやや固し
シュレッダーぶつと止まつて秋涼し
新涼やアセムブリイの隙間風
新涼や瑠璃に暮れゆく水平線
鬱蒼と茂る垣透け新涼や
くるぶしに触るる新涼夕散歩
新涼や星にも父母のおはすらむ
図書館の真面目な明かり秋涼し
新涼や古地図と照らす宿場町
白檀香に気の整ひて涼新た
夜の雲白し新涼星の空
夕星の新涼の空高くあり
新涼やチーズが臭くなる呪い
新涼の通院の道しゃべりつつ
一瞬で終わる新涼翌日は
新涼の昼飯少し遅く食べ
新涼の匂い運ぶや遠花火
恋人の筆跡真似て涼新た
新涼の子のすぐ眠る絵本かな
新涼の海の扉の詩集かな
新涼や正拳突きの後ろの手
新涼やもの思ふこと多き夜
新涼や音なく落ちし鏡掛
長髪を後ろで束ね涼新た
新涼や流れはじめる砂時計
大漁旗はためく浜や秋涼し
余白とは秋の涼しき土踏まず
新涼に嫁入りの菓子撒きを待つ
※掲載漏れがありました。申し訳ありません(7/12追加)
新涼の小鋏ぱちと響きけり
新涼や流るる雲を追い越して
新涼や筆を走らせ締切日
新涼や軽々動く両手足
新涼に荒野は富士を従へる
新涼やマトリョーシカの頬赤し
新涼や始発電車の我ひとり
新涼やズマホの画面無味無臭
新涼の採点ペンのよく滑る
新涼や発掘されし縄文人
新涼や芭蕉稲荷の庵の跡
新涼の近つ淡海うねる波
新涼や一日思ふ君の事
新涼や銀髪たゆとう煙管の香
花手水なみなみとして涼新た
新涼の神戸の夜景ジャズピアノ
新涼や襖を閉めてごろ寝せし
新涼やうそつき襟は葡萄鼠
新涼や縋らず同じ距離でゆく
新涼に海を拝みし顔になる
新涼や喉越し旨きロゼワイン
締め直す紺のネクタイ涼新た
さはさはと新涼に揺れ名無し草
乾きたる柝の音の響き涼新た
新涼のその先かぎりなくしづか
新涼や目標上げる万歩計
新涼やムスクのかほり強くなり