きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「秋の夜」__金曜俳句への投句一覧
(8月30日号掲載=7月31日締切)

秋の夜は長く、虫の音や雨の音などにもしみじみとしますね。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年8月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【秋の夜】
秋の夜の常にひとりのホームレス
前ゆくは昨日の吾や秋の夜
秋の夜木の葉も花も風に揺れ
相槌のあとのしじまや秋の夜
秋の夜は今もここいらどかと寝る
パリからの便り耳にし秋の夜
水路際秋の夜踏み水を見る
秋の夜の手風琴とふ音色かな
秋の夜や物置部屋に除湿機は
煌めける湾岸地帯秋の夜
三色ペン黒ばかり減る秋の夜
秋の夜ふと読み耽る太宰かな
秋の夜の夢の帳は幾重にも
秋の夜珈琲豆の封開けて
秋の夜の昔ながらの古本屋
秋の夜や少年ら一斉補導
日々に見る秋の夜には人ありぬ
夜の秋安心したる猫の顔
秋の夜夫婦で歩く散歩道
秋の夜に卓に臥せつて泣く子かな
書き終わらず読み終わらずに秋の夜は
手拭でさっと拭へる秋の夜
秋の夜や電池の抜けた置き時計
秋の夜や琥珀に虫の鳴くかたち
秋の夜カムパネルラと語った夢
針落としチャイコフスキー秋の夜
ベージュにはシャネルの五番秋の暮
月に鳴くもの変はりけり夜半の秋
秋の夜の鏡にうつる柱かな
両脚を毛布へ載せる夜半の秋
ガザの子ら眠りについたか秋の夜
肘枕左手に変え秋の夜
運動着繕う母の背秋の夜
携帯をただ眺めゐる秋の夜
さよならにああの一言秋の夜
字幕追ふ韓国ドラマ秋の夜
ペン胼胝の硬く固まる秋の夜
コンビニの小さき声や秋の夜
マンションの百戸の窓に秋の夜
後ろ髪恋さまざまな秋の夜
秋の宵太宰読みつつ人を待つ
秋の夜のビオラの弦を緩めやる
秋の夜のペンにインクを吸はせたり
疲れたるひと秋の夜を脱いでのち
秋の夜やすだきに飽かぬ宵っ張り
レシートを縦に揃える秋の夜
秋の夜ディフェンダーには不具合が
秋の夜遠回りして悔やし泣き
白髪染め落ち着く前の秋の暮
目覚めれば無音の闇や秋の夜
秋の夜や虫うるさくもそのままに
何を食ふ嬉しき迷ひ秋の夜
ごうごうと風の音聞く秋の夜
秋の夜や昔貰ったラブレター
秋の夜や風呂たまるまで目をつむる
秋の夜電燈の下家族あり
遠近の眼鏡手元に秋の夜
お月見の団子がおいしい秋の夜
秋の夜や今日はゆっくり独り酒
夕食も終わり木の葉の音を聞く
見る夢に雲一つ無き秋の夜
思い出も秋の夜なら確かなり
ウクライナへイマジン歌う秋の夜
虫の音にそっと気遣う秋の夜半
紙崩れ山容崩壊秋の夜
私小説書ける気がする秋の夜
秋の夜は明日明日へ明後日へ
文字にする君への想ひ夜半の秋
痩せ犬の波打つ肋秋の夜
音も無き夜を過ごすや秋の夜
秋の夜やつげ義春の対談集
秋の夜は読書三昧俯して
秋の夜や低音著きバーテンダー
秋の夜に皿洗ひをる定年後
秋の夜や樹々の隙間に青き空
秋の夜の時間たつぷりありにけり
木刀を振る左手涼し秋の暮
秋の夜に二人で訪ぬ「BE KOBE」
秋の夜の手摺のかたき光かな
秋の夜のエレベーターにもう一人
秋の夜のビール酵母の呼吸音
みちのくの秋の夜には父がいる
ティーカップ満たして秋の夜のサガン
町と町繋ぐ秋夜の竹灯篭
秋の夜雨音尖るトタン屋根
秋の夜の幸せ太りダイエット
秋の夜の記憶はちょうどこんなとこ
秋の夜に謝罪貰へず取り敢へず
チューニング狂ひしままや秋の夜
秋の夜のカスタネットの開く口
秋の夜星を眺める虫の声
茶葉開く秋夜のサガン彩りて
閉ぢた目を開く捨て猫秋の夜
駅壁のアンモナイトの秋の夜
灯ともせば色濃き畳秋の夜
読み終へぬ本の厚さや秋の夜
秋の夜の帰宅わが家の牛魔王
秋の夜や心の棘に手を付ける
町中華のラーメンすする秋の夜
読む明治すでに古語なり秋の夜
あの世からみれば秋の夜無間の世
秋の夜ラヂオで落語聞いてをり
想ひ出を補ひあふも秋の夜
秋の暮肘に乗せたる頭ぽとり
人形に鉢巻締められ秋の夜
秋の夜の電話ボックス陽の匂ひ
新聞紙もの思い居つ秋の夜
秋の夜やひとり静かに見上ぐ空
秋の夜書を繰る指も夢の中
浮気やや本気へ変はる秋の夜
秋の夜に一つ聞かれて一つ言ふ
パソコンのラヂオ鳴らせし秋の夜
まないたを打つ音かろし秋の夜
秋の夜落ちて来そうな星をみる
連載の終はる雑誌や夜半の秋
昂れる潮の音遠し夜半の秋
混信の多きラヂヲや夜半の秋
明け方にゆらり小鳥が秋の夜
秋の夜の遠ざかりゆく酔っ払い
秋の夜やレコードの音のやはらかし
秋の夜のショパン聴き入るラジオかな
秋の夜に野良をさがして草繁る
秋の夜の水木しげるの妖怪画
行きつけにほんのり灯る秋の夜
秋の夜埴谷雄高を積み上げる
秋の夜松ぼっくりを思い出し
秋の夜雨音徐々に高くなり
踏切の音の微かに夜半の秋
秋の夜の暖簾褪せたる蕎麦屋かな
四時間の映画を流す秋の宵
秋の夜のラヂオ師匠の江戸落語
秋の夜の終るともなき無言劇
遠吠えの犬撫でほぐす秋の宵
秋の夜や清張は死者三人目
秋の夜の葡萄酒のその芳醇を
自販機の声に和みし秋の夜
秋の夜に検索しつつ読む俳誌
秋の夜に初恋談義酒が友
秋の夜携帯鳴らし時を待つ
秋の夜や書店は地下にあるがよし
秋の夜の風は海へと荒々し
物語読んで深まり秋の夜
エアコン切り無心で眠る秋の夜
秋の夜に早死に憂ひ爪を切る
秋の夜の妻との会話苦痛なり
秋の夜へ塔のそり立つ大都会
離婚後のしづかな家の秋の夜
西国の空まだ赤し秋の暮
背景も夏過ぐスマホ秋の夜
爪に花明日は花嫁秋の夜
くしゃみする母気遣いし秋の夜
老眼鏡外してスマホ秋の夜の
秋の夜風も軽く心も軽い
追伸の言葉を探す秋の夜
秋の夜や未来を語るじじとばば
秋の夜や要らぬものだけしまふ棚
パズル解く十分すぎる秋の夜
地図なぞりエア旅に行く秋の夜
秋の夜や浅川マキの夜が明けたら
秋の夜にコソコソ動く落とし物
積読の背表紙読むや秋の夜
秋の夜やシャッター街の痩せ鴉
秋の夜桂馬の一つ見付らず
秋の夜破られて行く紙の束
浅草に焼きそばの香や秋の夜
秋の夜や煙草をやめて半世紀
秋の夜や地図のE5に赤きマル
管弦の響き密なる秋夜かな
百の窓カーテン揺らぐ秋の夜
秋の夜のサガン心に一滴
秋の夜に耐へ得る厚き本を買ふ
資本論かたはらに置き秋の夜
ロボットではないと答へし秋の夜
秋の夜は生活の柄を唄います
城達也聞こえぬ秋の夜を重ね
電話していつも留守電秋の夜
秋の夜や知恵の輪小さき音たてて
馬追いのチョンで寝入るや秋の夜
秋の夜やひとり祝はシャンパンと
ここよき煮物の音や秋の夜
秋の夜本を開いて芋食べる
秋の夜に母の歳時記めくりけり
庭先に小さき鳥居や秋の夜
秋の夜は声出して読むリルケの詩
騒がしきいくさ今なき秋の夜
コンビニのミニケーキ買ふ秋の夜
秋の夜や木彫りの熊に彫り師の名
秋の夜や貧乏暮し板に付き
いつ会える暫く無理に秋の夜
秋の夜のアトリエに踊子の影
秋の夜やいつもと同じ場に座る
秋の夜やネットニュースは無音の血
まとめ買い読書三昧秋の夜
秋の夜の天地返さぬ砂時計
秋の夜のコンビニ経由塒行き
秋の夜や男の探す片ピアス
高揚も雨も落ちゆく今は秋の夜
秋の夜を独り愉しむ手酌かな
秋の夜や白黒の血の新聞紙
笑むひとのありて越えゆく秋の夜
秋の夜の人工衛星頭上過ぐ
秋の夜は上司に下手媚びを売り
言い訳の無限軌道や秋の夜
プルースト全集めくる秋夜かな
秋の夜頁繰る指夢の中
秋の夜間遠に聞こえ水の声
秋の夜に電気ケトルのブザーの音
秋の夜はゆらりささやく虫の音
秋の夜空を眺めて風薫る

【不明】
吾子の寝る前ルーティン月探し
台風か寝床で吾子の背をさする
夜なべして友らと作るショー衣装
スーパーの塩焼きサンマ食卓へ
黄のピンポンマムをお供え十五夜よ
虫の音や移りて夜道秋の楽
秋を背に夜の路ゆき長々と
星月夜故郷の空はいかばかり
晴れ願う体育祭の前夜かな