兼題「子規忌」__金曜俳句への投句一覧
(9月27日号掲載=8月31日締切)
2024年9月22日11:13AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
子規忌は9月19日です。新聞記者や俳人、歌人、随筆評論家として活躍した正岡子規(1867~1902年)の亡くなった日です。俳句の革新的偉業を残したことで知られます。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年9月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【子規忌】
空青し子規忌はたまに雨しどど
銀輪にはまるボールや獺祭忌
どの坂を下りても根岸獺祭忌
獺祭忌雨の根岸に友を待つ
俳句ネタ決まらぬままに子規忌来る
子規の忌や夜半に登る湯築城
山盛りの果物を置く獺祭忌
座布団の表裏返している子規忌
へちま水使い初めにし子規忌かな
藤ならぬ糸瓜のすゑに子規忌哉
伝統を壊して殘す子規忌來る
子規逝けり足裏なまつちろきまま
手鏡で頭頂部見る子規忌かな
子規忌かな壁にボールの縫い目あり
六歌仙子規忌にも待つ郭公
一瞬のインクジェットよ子規忌くる
一句詠み子規忌に帰る音は無し
子規の忌や駱駝に五つ座り胼胝
道後の湯子規忌思いて首までも
これほどの膝痛なんぞ子規忌哉
犬連れて川原道行く子規忌かな
子規の忌のややぎこちなく歩く杖
放し飼いするため貯金子規忌かな
子規忌には忘れたことを思い出す
坂の上の雨雲ははれ糸瓜忌に
野ボールの翔平を観る子規忌かな
黄色かな赤かな西瓜割る子規忌
会社では違う顔する子規忌なり
恋という重き患い子規忌の夜
子規忌には二人して喰む羽二重餅
子規忌なり明治は遠くなりました
蚊を打ちて痕の哀しき子規忌かな
鶏頭のがさりと赤き子規忌かな
白球は届かぬと知る子規忌かな
腰痛にまなならぬ一歩獺祭忌
亡き兄の寝間着を洗ふ子規忌かな
妹に謝つてゐる子規忌かな
文机に及ぶ日差や獺祭忌
襟足の剃り跡青き子規忌の夜
糸瓜忌や食べ放題の洋食屋
やまびこの谿のざはつく獺祭忌
糸瓜忌や座敷に墨の匂ひけり
子規忌には牛乳五勺ココア入り
糸瓜忌や付箋だらけの古書を買う
牛が塩舐めによりくる子規忌かな
子規の忌や何を食べてもおいしくて
子規の忌や座り机と狭き庭
通院やけふは子規忌と夫の言ふ
縮みゆく脳殴打する子規忌かな
子規の忌や妹と云ふ女と逢ふ
子規の忌や我の横顔惚れし妻
枕カバーかへる子規忌の朝なれば
子規の忌や神保町を巡りたし
脚色を加へ子規忌の物語り
子規の忌の用具貸し合ふ野球かな
子規忌なり大谷でかいホームラン
一間に命の写生子規忌かな
子規忌来る応援してる甲子園
妻とまた些細なことよ子規忌なり
子規の忌の病牀にある鬱屈を
楽しみも自由もある身獺祭忌
旧るほどに子規は近くに獺祭忌
泉水で句会開くや子規忌かな
子規の忌の買物メモにパンと菓子
白球のための青空子規忌なり
北窓の明し子規忌の海老フライ
子規の忌やドナーカードの否に〇
子規の忌の十五万石句碑巡り
糸瓜忌のぎうと消したる煙草かな
銀匙に黄身潰したる子規忌かな
名も知らぬ雑草生える子規忌かな
行き付けのカフェの朝食子規忌かな
子規の忌や野球指導を受けたかり
ノボさんはオータニを観に獺祭忌
獺祭忌島影ふわと揺れてゐる
子規の忌の夕日へ放つ決勝打
食い物へ執着しめし子規忌かな
じゅげむじゅげむ子規忌の寄席は空いてゐる
子規忌なり今日も同じく家を出る
子規忌くる愛媛は遠し柿蒼し
マッチ箱三回擦る子規忌かな
枕辺にモニターのある獺祭忌
うみ風は喉の奥へと子規忌かな
墨を擦る子規忌の卓の我の無我
松山の闘ひを終へ子規忌来る
糸瓜忌の医局は左側通行
ふし穴も星座屋根裏から子規忌
子規の忌の甘味処の賑はへり
志し高くあれよと獺祭忌
とりあえず明日まで生きる子規忌かな
墓の横議論を交わす子規忌なり
部屋の端子規忌のゴミ箱まで這う
子規の忌や六尺と云ふ小宇宙
獺祭忌命尊ぶ日となりぬ
子規の忌の俳句の里を訪ねける
獺祭忌柿と羽二重餅を食む
糸瓜忌やつるを差し込む一升瓶
あんぱんに塩気たしかむ子規忌かな
仰臥にも食ひて知りたき子規偲
子規忌いま鶯谷は斯様なり
好き嫌いしない食欲獺祭忌
うつくしき誤字に付箋を子規忌の夜
時を告ぐ鳥のひと鳴き子規忌かな
さん付けの呼び名親しむ子規忌の夜
鶏頭のやうな寝ぐせの子規忌かな
夜空にも横顔映る子規忌かな
刈草の乾く匂ひや獺祭忌
仕事明け携帯知らせる子規忌かな
子規の忌や家族・ジェンダー・介護のこと
被災地に家傾ける子規忌かな
血を絞る言葉子規忌に便り出す
子規忌かな卓上メモに子規庵へ
文机に切り込み残る子規忌かな
腰下ろす便座冷やりと子規忌かな
筆順を違えて子規忌暮れにけり
ホームラン打ちてベースに子規忌来る
城上に秋雲ありて子規忌かな
糸瓜忌やひとり子規庵大の字に
志望校ひとつ落として子規忌なる
風少しあまれることも子規忌かな
掻き混ぜる匙の重さや獺祭忌
糸瓜忌や弔事のごとく川を見る
子規忌来て日影の花をまた生けて
子規忌には灯籠さえも影濃くし
野ボールを楽しみをりぬ子規忌かな
好き嫌ひ激し子規忌の遺族会
子規忌来て覚悟の散歩を敢行し
愚陀仏の画を誉める我鬼子規忌かな
ようやっと一人になれた子規忌なり
糸瓜忌のなぜか食欲不振なり
若き人見ゆる子規忌の俳句欄
大谷の偉業のスコア子規忌かな
道後温泉足湯につかる獺祭忌
子規の忌や大和路の旅句に残し
妹は兄より気丈獺祭忌
子規の忌の武蔵水路の句碑ふたつ
子規忌ゆえ須磨寺あたり逍遥す
六尺の雲と遊んでいる子規忌
君と僕子規忌を想う無人駅
子規の忌やアルミサッシに綿埃
封印の酒と薬と獺祭忌
糸瓜忌の風のつれなくぶうらぶら
子規の忌や病人として我ここに
ホログラフ居ない人見る子規忌かな
大リーグの試合中継獺祭忌
子規の忌や悪球を打つ草野球
庭に声子規忌に響く雀かな
病棟は支流のごとし獺祭忌
クラス写真子規似が並ぶ獺祭忌
卒寿超え新たなる日や子規忌かな
子規の忌の熱を持ちたる乾燥剤
糸瓜忌や枕灯りを遮らず
山脈の裾海に入る獺祭忌
新しき国語教科書獺祭忌
書いてすぐ丸めて反古に獺祭忌
子規の声聞いてみたな獺祭忌
満塁の子規忌の雲へホームラン
思ひ出はいつも横顔子規忌かな
糸瓜忌に庵の糸瓜を見上げをり
子規忌かなみそぢの子規の句をずんず
認知症機能検診子規忌かな
山盛りのパン屋のトレイ獺祭忌
糸瓜忌や引き継がれゆく写生の風
星の子が生きる意味知る子規忌かな
子規の忌の破れ饅頭甘過ぎず
自家製の糸瓜コロンや獺祭忌
不治といふ病も多き子規忌かな
靴紐も靴も子規忌の地にまみれ
頭のみ冴えて臥しおり今日子規忌
子規忌来て見開く頁の全句集
虫鳴きて空羊雲子規忌なり
子規の忌のオオタニさんを見る外来
つややかに子規忌の墓の竹の青
学会の原稿仕上げ子規忌かな
品数の多き子規忌の晩御飯
掃き寄せて籾殻しろき子規忌かな
令和にして遺稿見つかる子規忌かな
子規の忌の句会お題に伊予銘菓
異状なき身を賜りし子規忌かな
墨跡は子規忌鮮やか句碑の前
古井戸を覗き子規忌の水の音
月仰ぎ子規忌に似合う静寂や
子規忌には食欲が湧き自伝読み
寅彦の遠縁として子規居士忌
糸瓜忌や色葉はりつく岩畳
糸瓜忌や座机に子規の影
犬の背の丸き模様や子規忌くる
餡パンを供へ子規忌の夜が明ける
子規の忌やインクの漏るるペンを手に
亡くなつて決まる晩年獺祭忌
真っ白なノート子規忌を描けずに
釣果なく禁漁間近獺祭忌
かご一杯の茄子もぎて子規忌かな
糸瓜忌や溢れしままの茎の水
くさぐさを映す子規忌の水鏡
続けることを忘られぬ獺祭忌
子規の忌や久しく硯使はざる
子規の忌や合せるやふに鶏頭散る
忌日とははじまりの日ぞ子規の忌も
糸瓜忌にわづかに甘い痰を切る
子規の忌やいまだ使ひし文机
旅先で初めて句贈る子規忌かな
最善を考へ子規忌は明るくて
糸瓜忌や一筆箋の挿絵にも
マップ見る子規忌の遺伝子含まれず
糸瓜忌の午前四時なる小糠雨
しき島の道ふみ亂すあ子規の忌
子規忌来るペナントレース押し詰まる
苦吟する我を見つめる子規忌かな
横顔の似たる老僧子規忌かな
天井に飽いて子規忌の指を見る