兼題「刈田」__金曜俳句への投句一覧
(10月25日号掲載=9月30日締切)
2024年10月7日5:55PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
稲を刈り取ったあとの田が「刈田」です。そろそろ各地から稲刈りのニュースが伝わってきています。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年10月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【刈田】
車窓には飛びすぐ刈田ひとり旅
集う地に草花あふる苅田かな
千年の水は苅田へもどりゆく
刈田にはペットボトルの茶の残る
刈田まづ爺が下り来て孫を背負ふ
早々と刈田となりて鳥呼べり
何処より労ひの声刈田道
乾きゆく刈田の匂ひ勝手口
稲田刈田モザイクに見ゆ吉備路かな
相棒は風なのかもしれぬ刈田かな
切株の列新しき刈田かな
たにしつつく烏の姿や朝苅田
袋持ち蝗を追ひて刈田かな
鬼ごっこする子らもなし刈田原
ここんとこ疲れが溜まってもう苅田
としちやんちの刈田みんなで駆け回る
一輌のジオラマのごと大刈田
忙しなく雀横切る刈田道
刈田踏み広くなりたる我野かな
秩父路に群るる雀の刈田かな
ここはもう百年前の苅田かな
苅田では風神雷神一休み
刈田道泥点々とコンバイン
鎌研ぎし実りをつなぐ苅田かな
苅田吹く風芯ありて視野ひろく
影踏の刈田月夜の果てしなく
自転車漕ぐ苅田の匂ひ置き去りに
刈田振り返り見渡し手を合わす
刈田にて野球にならぬ野球かな
刈田道輝きつつ日は沈み行く
つやつやと光る鴉の刈田かな
苅田って主権在民だと思う
鳥が空掴みて去りし刈田かな
今はもうだれも遊ばぬ刈田かな
指笛に烏たばしる刈田かな
筑波嶺や刈田の果の耳ふたつ
後悔はしない約束刈田の香
写生会上手な人は刈田描く
刈田から良風を得て歩測伸び
どこまでも刈田となりて田舎道
年一度鼓笛隊行く刈田道
苅田だなついさっきまで金の浪
三角の刈田の隅の捩れけり
配達区全域苅田香りけり
方墳の角はつりたる刈田かな
ピーカンの刈田の空を烏かな
苅田から自転車見えるや子供らの
遠くまで見晴らし刈田延々と
濃尾平野さらに刈田が広げたる
捨てられぬ我の日記よ刈田かな
学校へ近道したる刈田かな
畦道は雨に光りて大刈田
吹き溜まり好きな場所あり刈田道
コンバインハーベスターが刈田道
刈田風田の神さぁのおわす郷
刈田から子供が去れば鳥が来て
老人が三人刈田で酒を飲む
朱鷺放鳥そっとエサ置く刈田かな
山を見て飛んで跳ねるや刈田の子
通学路短縮苅田横切つて
書を胸に少年急ぐ苅田道
ぐさぐさと刈田踏みゆく遊びかな
刈田風老人ふたり選ばるる
名無し草共に刈られた刈田かな
地方線刈田日和に鉄軌延ぶ
訥訥と話す子とゆく刈田道
かがやきが加賀の刈田を走り行く
いくたびも刈田に雀来ては去り
けふ急に刈田となりて空々し
大空の空腹風の刈田かな
リタイアの案山子ころがる刈田かな
刈田まであなたと歩く今日が好き
雨晴の刈田を駆けてゆく子ども
真実を知らされながら刈田道
失恋の野球部員よ苅田道
刈田はや芽のつんつんと揃ひ出し
八株の父祖より継ぐ刈田かな
手を振れば妣振り返す苅田道
東京の嫁と呼ばれて刈田風
手伝いの長靴並ぶ刈田道
千枚が一日にして刈田かな
姉継ぎし家へ刈田を横切りて
苅田から千手観音出で立って
いちまいの苅田を走る縄電車
あのときも走り回った刈田まで
刈田今オアシスとなり風透けし
対角線すたすたと行く刈田かな
窓際の机の花や刈田あと
将来のベッカー刈田はスタジアム
刈田見て今日の夕餉を予想する
かくれんぼのための藁あり刈田かな
レプリカの埴輪が踊る苅田道
刈田にて暮れて鴉(カラス)と褻(け)に戻る
凹凸の陽を延べてゐる刈田かな
笛太鼓苅田の上をはしゃぐ声
苅田では誰も秘密を守れない
御祖からいでやめでたき刈田かな
関が原地平線まで刈田かな
刈田径秋季大会ベスト4
刈田刈田傷口速やかに乾く
すぐ鳥の領分となる刈田かな
この国の米政策を問う刈田
輪作の刈田次には何植える
一枚の刈田を鷺のうつくしや
みちのくの地雨にけぶる刈田かな
九九の表開きたるごと刈田かな
刈田には長靴型の潦
郵便のとばされてゆく苅田風
災害を案じ刈田に立ちにけり
自づから一筋となる刈田道
一枚の刈田に残る千手かな
農道の右も左も大刈田
賑やかな刈田ツアーの雀たち
号外の破れ刈田へ流れ着く
苅田では土偶が地下で鬼ゴッコ
米不足少し早めの刈田かな
コンバインよりも小さき刈田なり
里の子等刈田にあがるホームラン
刈田面すこし暮色の遅れて来
苅田ではお米の神様の昼寝
千枚田千の風吹く苅田面
野球帽飛ばし父子の刈田風
刈り終えて田の株撫でる日焼けの手
故郷出づいつか刈田の乾くまで
はればれと棚田の刈田くだりゆく
就農者迎えし刈田三年目
刈田見るこんなに広いとこだっけ
刈田あぜ掘りてどじょうを探す人
祖父の田を継いで刈田の画家となる
刈田から見上げる空も同じ色
歌詞カードのようにあかるい刈田かな
子の声は遠し刈田の空深し
大仕事先づはこの地の大刈田
飛ぶ虫は刈田に愛想尽かしたもう
半分は風の刈田となりにけり
ひとすぢの煙と尽くる苅田かな
二時間で刈田いちまい生まれけり
黄金の実り刈田となりぬべし
来年は誰が起こすだろう苅田
一面に切り株並ぶ夕刈田
眼をとどめ刈田に銀の夜雨かな
アウディの急加速する苅田道
隣組苅田の畝に集ひけり
稲の株残りし刈田広々と
鷺一羽人より隔つ刈田かな
刈田行くまだぶかぶかの革靴で
用水路横の苅田の轍かな
刈田跡農夫大の字笑ひをり
海風は海に還るや刈田原
集配のバイクの唸り刈田晴れ
アイヌにはアイヌの星や大苅田
ころぶまで走ってみたい刈田かな
朝焼けの赤富士眩し大刈田
刈田道浮島のごと墓地ありぬ
刈田跡転がつている童子かな
晩年といふ匂ひあり刈田道
株踏みにわざわざ入る刈田かな
刈田道親子のやうな義母と義夫
甘木線車窓は刈田風わたる
土地争いありて入り組む刈田かな
刈田原胸撃ち抜かれたるごとく
刈田暮れ殻焼く煙母の声
刈田踏み抜き泣き出す子さざめく子
商家の子仲間外れの刈田かな
大苅田助っ人の今到着す
田うないの畔の一服刈田なか
ここらへん熊は出ないと刈田踏む
刈田踏む名字戻した母の背や
一斉に千枚どれも刈田かな
奥能登の豪雨に流さる苅田道
背をこごめ鳥ついばめる刈田かな
白鷺の舞ひ降りて来る刈田道
子ら散って夕暮戻る刈田かな
都市近郊刈田見渡すカフェを置く
残り香によれば特A新刈田
車内では時間気にする刈田かな
どこかなつかしき匂ひや刈田あと
迷ひなく風吹きゆける刈田かな
鷺舞えば泥鰌が踊る刈田かな
放鳥の朱鷺の学校となる刈田
車椅子の母や刈田を見に来たる
どかどかと入りたくなる刈田かな
足裏に切り株痛し夕刈田
遠近の苅田賑わう鳥の群れ
刈田にも田んぼアートの名残かな
星空のしろかね匂ふ刈田かな
知らぬ間に郷は刈田となっており