兼題「千両」__金曜俳句への投句一覧
(11月29日号掲載=10月31日締切)
2024年11月9日10:16AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
千両は、せんりょう科の小低木です。ちなみに万両はやぶこうじ科です。
冬、赤い実が愛でられますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年11月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【千両】
千両や風力発電の微音
何処からか中庭に黄実千両
千両を活けて歳時記爪繰れり
葉の上にたわわに赤き実千両
千両の人知れぬ身の清々(すがすが)し
千両の朱白塗りの朝の庭
日和下駄千両の実の色づけり
逆光の千両の実に鳥遊ぶ
千両の水にこぼれる恋飛脚
千両を二万両ごと結はへたる
千両を空に捧げし枝太し
退院を寿ぐやうな実千両
人形の家に古りたり実千両
千両役者はみな千両が好き
千両を折ればなお美し両手かな
千両の在庫増え過ぎれば綺麗
千両や日当りて緋のくすみたる
銀山の裾にこぼるる実千両
とまり木にひとり千両嗜めり
千両や見合い話も尽き果てぬ
老女にも小さき反乱実千両
千両の色を動かす鳥見つけ
千両のめでたきしるし頬染まる
縁側の小一時間や黄千両
千両の実に真心のありにけり
千両の染めし庭ある古家買ふ
活け終へて千両でんと収まりぬ
祝事少しく有りき実千両
千両の名前負けせぬ福来る
一人産んで千両の庭さまよへり
九体の仏眩しき実千両
少納言より式部の似合う実千両
過去赤らむ千両を活ける夜
実付き良き千両こぼる青畳
千両やにはかに赤の恐ろしく
千両の種こぼれて増える仲間達
昼酒はあくまでひそと実千両
千両つやつや延命を断りぬ
ちょこボラの草の中見ゆ千両かな
千両や四方転びの台に活け
実千両聡太を見習ひ将棋さす
いずれ来る白い世界を待つ千両
千両の箱入り娘と呼ばれけり
千両へ千手のごとき夜雨かな
鳥除けの網の目越しに実千両
稽古着の隅を合はせて実千両
千両の緑の葉と実根締よし
幼き日苦きを知るや実千両
実千両宅配便の目印に
黄千両畳の部屋の車イス
実朝の小さきやぐらや実千両
鵯や千両も万両も喰らふ
千両の赤き実照らす冬の陽よ
千両や楽屋のれんの白き文字
千両の言万両の慈言かな
ままごとや千両集めていただきます
食べよとばかり千両の御人好し
シンバルに震えこぼるる実千両
実千両恋人未満やもしれぬ
千両の赤い実突く鳥も来ず
遠い日を思い出させる実千両
子どもには子どもの矜持実千両
実千両別れた奴は皆美男
千両の赤あくまでもそらぞらし
千両や郵便受けに届く赤
千両の実を摘む手から母を知る
千両や檀家巡りのスクーター
千両を活けし蕎麦通通ふ店
せせらぎや海まで遠き草珊瑚
記帳せむ千両五鉢売れた筈
千両の実を零しつつ床に活け
実千両宙乗りの夜の澤瀉屋
千両の実と知りつなぐ赤ビーズ
吐きだしてほつと一息実千両
千両のじっと見つめる勝ち戦
テープ尽き千両眺める余裕なし
灯は錆びて千両の夜となりにけり
千両にルーチンワークの道変える
千両の実赤くなりて又一年
落日の端を千両のみなぎるや
実千両はつきり「はい」と言ふ本音
実千両粋な軽さのジョークなど
撮影は邪魔され千両見ずに行く
北に開く百葉箱や実千両
千両や間口の狭き京町屋
蔓草を取りて欲しくて実千両
千両は鳥の餌なり石どかす
実千両起立の椅子の余熱かな
惜しいかな庭の隅生る実千両
飛んで来し実生千両実をつけり
寝たままの母黄千両赤千両
もてなしの膳に小枝の実千両
千両や闇に灯りのついたよう
千両を小さな金庫の上に挿す
いちいちに御座す日の神実千両
やはらかな日差し千両あかあかと
千両や万両も宇宙(そら)の果て
寝こみをり千両の実の赤きこと
古書店の路地奥灯る実千両
千両や午後四時を告ぐ鐘の音
心付け実千両など褒めながら
千両や下から読めど市川市
千両の実は山盛りにおままごと
千両の確かな赤でありにけり
京町家苔むす庭に実千両
さびしさや千両の赤くつきりと
生け花の指導の度に落つ千両
千両や実生で育て膨らむ夢
迷つたらとりあえず千両と答えます
生垣や鳥差し招く千両へ
甥っ子は部長さんらし実千両
千両のほかは一面銀世界
千両や母の遺せし藍の花器
千両の庭に埋まりぬ良き報せ
千両の赤を見上げる黒子猫
紋付けし鳥が来てをり実千両
床の間に恵比須大黒実千両
千両は大きな石を近付けず
さにつらふ千両三粒掌に
碧空と雪の白さと実千両
千両やマレーシアにも咲いていて
千両の叢より離しても千両
蹲の水面に映える実千両
千両を褒めつつ朝の回覧板
千両や屈託をまだ知らぬ顔
痛み止め残り何錠実千両
辺りの気清浄にして実千両
被災地の庭に色差す実千両
実千両数多集めて竹鉄砲
庭師との話弾むや実千両
千両や庭の色物縁起物
千両の釘ひとつなき母屋かな
千両やいまかいまかと雪待つ子
入院の間も明るく実千両
定年の廊下に喫す実千両
千両の実がきっかけの仲直り
千両の日向に天を仰ぐ朝
和室にもカーテンありて実千両
白川に湖のよすがや実千両
寸胴に反る松に添う実千両
いま千両あったと話す五年生
千両や里の駐在所の夕べ
陽を受けて千両の赤軽く揺れ
紅を千切ってあげよう千両に
飛石の濡れ身かがよふ実千両
日めくりの柱に薄し実千両
千両って何と子が問う秋日和
馬鍬おく農家民宿実千両
実せんりやう葉よりこぼる光ほろり
千両に舞い降りたいと白い雲
姿見に写る千両美容院
子のことはそろそろ放つ実千両
深酒の木戸は重くて実千両
雨の中ショッカーを見る千両見る
千両や裏庭といふ居心地に
セロ弾きは水車小屋住み実千両
ひっそりと陽の光溜まる千両や
千両や影深まりて夕暮れに
今朝も又啄ばまれしや実千両
水彩と和装の世界実千両
母白寿庭の千両瓶に挿す
始めて身に刃を入れる日や実千両
千両を静かに猫のよぎるなり
千両や円らな瞳輝かせ
千両や揚げたてコロッケ辛子付け
魔法かな素粒子そそぐ千両よ
千両や終の住処と言ひしものを
荒れた野に我は負けじと草珊瑚
また妻に叱られてゐる実千両
これは千両なのか万両なのか
千両や隣家の妻の美しき爪
千両の価値あり雲海下に見る
靖国の母が活けたる実千両
千両でも万両でもどつちでも
千両や満員御礼国技館
赤い爪千両を手招きす
雨の空明るくなりぬ実千両
錫杖も雪もシャクシャク実千両
千両や名所旧跡魅せられし
さ庭辺に千両集める友の顔
葉に音のあり雨になし実千両
ことごとく塀の穴から実千両
金銀の枝あしらはれ実千両
千両や登城の坂はまた曲がり
千両を活けたる奥に水墨画
千両を売り捌くホワイトカラー
千両を要に束ね楽屋花
真っ赤なる家計実千両の赤
折角の千両のため庭手入れ
今日のこと話す千両の帰り道
古井戸の脇に艶めく実千両
接吻も別れも実千両の庭
千両はわれを試してゐるらしき
うつむく背庭の千両見て正す
千両や私信に俳句添えてあり
卓上の微震に気付く実千両
千両の傾く部屋に荷をひらく
実千両一枝卓に孤食かな
寒暖差に抗ふ五体実千両
実千両開け閉めに落つ青畳
日向千両日陰万両
千両や赤い実と葉の立役者
千両の実結ぶころ散財す
千両や玄関脇にハレの日を
右隣のお家はなぜか実千両
しゃがみ込み千両拾ふ藪の中
千両や分相応に暮らしきて
薄明の庭の千両眩しけり
おかしみの中に哀しみ実千両
実千両千羽なくても千羽鶴