兼題「万両」__金曜俳句への投句一覧
(11月29日号掲載=10月31日締切)
2024年11月9日10:27AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
万両は、やぶこうじ科の落葉低木です。千両と似ていますが、千両にまさるとのことで万両と名付けられました。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年11月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【万両】
遠き日のままごと遊び実万両
万両や裏木戸開く都度に揺れ
万両や猫にどうよと問ふ庭師
万両や汝(なんじ)海の子旅する子
風に揺れ無風に揺るる実万両
万両の値打ち惜(あたら)し荒れの庭
万両に雲の白さの映りけり
植木屋に女も混じる実万両
万両の囲いてゐたり鳥四五羽
かがやきのひとつひとつの実万両
万両を食べに来る鳥岩どかす
実万両翳り重たき侘と寂
実万両死の商人の首に降る
万両や青僧の吐く息の音
万両や概ね五角形の島
万両を買うて心の豊かなる
万両のたおやかさなる抑止力
わが庭に鳥の零せし実万両
ラジオから昭和歌謡や実万両
万両や葉陰に覗く紅玉珠
一両から億万両の仲間入り
実万両たわわ押し上ぐ小さな子
万両や散歩の猫の通り道
万両や整骨院の人体図
をちこちの野鳥の声や実万両
万両や万は言い過ぎではないか
万両を防風林の姫として
蒼ざめた山の姿に実万両
万両や紅殻格子古色めく
万両を見上ぐる鶏の動かざり
万両のほどの薬効あると見し
核持たぬ国のほほえみ実万両
犬小屋の名前隠して実万両
万両やちちははに告ぐ今朝の雨
キャッシュレスこぼるるほどの万両や
万両や雨滴まといて燦めけり
万両やもてあましたる足二本
万両や葉蔭にて実のたわわなり
古寺に監視カメラや実万両
廃屋に万両の赤房なして
子の背丈万両抜きて反抗期
さ庭辺の鳥達来る万両かな
万両や辺り一帯子沢山
また妻にほめられてゐる万両よ
万両や枯れる尽きると言ふ勿れ
万両の道もようやく暗くなり
万両や御籤の通り生きてみむ
左隣のお家には万両のみ
雨なくて土濡れてあり実万両
玄関の万両狙ふカラスかな
正月まで待てぬ鳥共実万両
佇むや狭し庭に実万両
一時金少し増えるか実万両
ホラーにはホラーは合わず万両見ず
キリストの葡萄酒ぽとり万両に
一粒は幾らになるや実万両
万両や母のスリッパ端に寄せ
万両を撮るスマートフォンそれぞれの
敗戦に万両じっと耐えている
思ひ出に色があるなら実万両
墓石脇に赤い粒々万両や
万両や闇を匂へる招き猫
万両や水子地蔵のうすびかる
万両の二尺ばかりを灯しをり
しなる程大豊作の実万両
和菓子屋は女系三代実万両
予告なき雨夜の客や実万両
万両やラフテー仕込む給料日
ベランダに万両仄か灯を点す
万両や偲ぶもののふ石の庭
今昔は万両の実には短くて
露溜めて佇む万両つぶらな目
実万両俯き上る女坂
空低く万両重く葉の陰に
万両や真っ赤な房の垂れ下がる
被災せし檀家を訪ぬ実万両
実万両静かなる夢一つずつ
万両や最近見なくなった犬
万両の実に冬の風そっと吹く
時折は手水に光る実万両
核と人間万両が笑ってる
万両や人には億の欲の枷
万両はなぜ万両か長話
交番の緩きスロープ実万両
万両に隠れてゐるぞ石仏
万両を円へ換算して春が
万両や嵩む営業外費用
万両の影のおびただしき巨刹
万両の露地に小唄の聞こえくる
江ノ電の小さき踏切実万両
白昼夢万両のふと面上ぐ
惜(お)しむらく手水(ちょうず)の傍(かたわ)ら実万両
今日だけは頑張るつもり実万両
万両は千草に紛れどこへやら
裏壁に消せぬ落書き実万両
初孫を迎へる朝の実万両
実万両庭師呼び止め長談議
女らの遠き道程実万両
野仏へ手向の万両瑞々し
万両や気持ち引きずる世の習ひ
山寺の玉蒟蒻や実万両
漁師町寺町ありて実万両
余生には万両の赤ほどの愛
鳴りさうな万両の房鳴らず揺る
車椅子畳むに慣れて実万両
ピース咲きたる集合写真実万両
庭のバイプレイヤーたる万両かな
重心を高く万両実りけり
万両のひとり立ちをり久女墓地
母笑はず万両の鉢もて訪へど
晩鐘や日を奉る実万両
大原の寺に赤々実万両
万両や早起きをする投票日
藍の鉢万両の実のどっさりと
万両や日めくりだいぶ薄くなり
万両は水路の水を憂えたり
墨堤に木歩の句碑や実万両
神棚が見守る帳場実万両
橋は石木の柵万両遠慮がち
万両や閉ぢて久しい鉄門扉
実万両山門先の宝くじ
深草の苑に紅の粒万両
子だくさん白亜の家に実万両
万両や雪見障子にがたのきて
厄年の集合写真実万両
万両や東シナ海碧過ぎる
万両の下蹲る鶏三羽
実万両朝果を終へし尼の寺
万両やつぶらの紅に陽を溜めて
御簾垣の向こうの静か実万両
万両や日差しわいわい降りてきて
万両の眼にしみ入るや石畳
万両を切つてしまひぬ師範代
万両の紅探すほど葉の繁り
万両と共に生きてる六十年
書簡集配列考え万両見る
華やかに万両しだれゐて淋し
万両の庭をゆるりと夫の杖
待ち人は間もなく来ます実万両
子ら遠くみな恙なし実万両
万両の彩り豊か禅の庭
万両も物価高なら春うらら
特養の中庭広し実万両
うたた寝をする万両の平和なり
みたらしの醤油は甘し実万両
万両や母誕生日介護食
押し競万両隠れて泣くな
物価高関知しないと実万両
もつさりと父の遺影の実万両
万両の実わさっと生りて運気上ぐ
万両や啄む鳥の飛来待つ
口さびしまずきを知るや実万両
万両や鋼の椅子を石の上
万両をクレパス描く満開よ
露溜めて葉陰佇む万両や
牡羊座亥年B型実万両
万両の上品を選り床に活く
廃園の茂みに万両みつけたり
万両の赤いプライド居間を刺す
ささやかな慰労の会や実万両
万両や臥す妻に紅乞はれたり
紅白の実万両愛で里暮し
参道を抜けし通勤実万両
馬鹿息子の妻は気楽や実万両
万両やこぼれこぼさる庭の景
万両や陰に枝垂れてなほ朱き
万両の実の二三粒揺れて落つ
万両や赤き肝煮て貪りぬ
万両のしたたる夜の運命線
万両の色づき雨のあがりけり
華道部に届く万両紅ひそと
万両や塞げぬ庶民の蔵の穴
杖つきてお寺詣でや実万両
沈香のかすかに揺れて実万両
万両を嫁ぐ娘に持たせけり
万両の鉢を届けるアルバイト