兼題「霜柱」__金曜俳句への投句一覧
(12月20日号掲載=11月30日締切)
2024年12月10日1:42PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
霜柱は、地中の水分が凍って、細い柱状の固まりになって、地表の土を押し上げるものです。暖冬のためか、関東では見る機会が減ったような気がします。みなさんの地域ではいかがでしょうか。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年12月20日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【霜柱】
霜柱だれも継がない芋畑
霜柱踏む音までも虚構めく
俳人は味も試すか霜柱
早起きの古都の眩しき霜柱
霜柱朝陽に砕け地に還へる
霜柱白馬三山三段紅葉
霜柱名もなき村に現るる
霜柱踏みてストレス失せにけり
双塔の相寄るとなし霜柱
霜柱11月だが冬かしら
霜柱踏めば覚ゆる力かな
西高東低朝霜柱立つ
かるからぬ石を持ち上げ霜柱
ざくと踏む霜柱まづ犬を埋め
担架持ち霜柱の上踏んでゆく
脇役の生き方でよし霜柱
ハワイからメール吾の踏む霜柱
霜柱朝刊はなめらかに来る
荒れ畑に微光放つや霜柱
ふる里の声が聞こえる霜柱
踏散らし迫るゴジラか霜柱
街中にあら珍しく霜柱
無人駅合唱をする霜柱
霜柱踏んで行けない寝坊の日
人生の憩いの時間霜柱
押し上げてやがて消えゆく霜柱
ザクザクと霜柱踏む子らの列
霜柱街のこはれてゆく速度
小一の帽子がのぞく霜柱
霜柱手荒に踏んで学校へ
霜柱味知らぬ吾も歳不足なし
たまゆらの土の背伸びや霜柱
庭先に一斉蜂起霜柱
ざくりざくりと軍靴霜柱踏む
霜柱立ちて張り詰む発射場
靴底の形に消えて霜柱
霜柱びっしり売れぬ宅造地
霜柱少し地球を持ち上げる
足裏は氷河期となる霜柱
霜柱魅かれて踏めば叱られて
霜柱どんな味かと挑む友
さくさくと踏みて登校霜柱
荒凡夫転ぶぢべたや霜柱
霜柱火を吐く真似の子が壊す
踏みつぶす少年の快霜柱
霜柱眩しき朝となりにけり
霜柱溶けてもきっと明日がある
霜柱車輪の跡はくっきりと
この地では霜柱でも水つなぐ
霜柱踏む厚底のスニーカー
白い息霜柱踏みランドセル
霜柱踏みどの国を憎むべし
伊耶那美の眼がのぞきゐる霜柱
じつくりと霜柱踏む子どもかな
味噌煮込み饂飩と御飯霜柱
土になり父の小言か霜柱
霜柱かりり厄割石さくり
生かされてもう還暦か霜柱
霜柱ぐじゃりと潰す役員車
夫の字の焼失届け霜柱
瓶しまふあまたの扉霜柱
土曜日の学童へ踏む霜柱
長靴のいさんでいくや霜柱
霜柱踏みて少女の顔になる
朝風を支へてをりぬ霜柱
霜柱踏んでやさしくなりにけり
霜柱生えて地球も鬼になる
誠実に暮らしています霜柱
霜柱遊びの群れの近く過ぎ
霜柱ひかり犇めく玻璃めける
歌詠みが愛されて踏む霜柱
墓じまひせしそのあとに霜柱
さまざまの朝を刷るかな霜柱
踏まれても霜柱立つまたあした
今はまだ水にはならぬ霜柱
霜柱ばりばりスニーカーの母
霜柱踏めばごみ収集車の帰る
霜柱一時間目は持久走
地下足袋の庭師早起き霜柱
飛び起きて音を楽しむ霜柱
霜柱立つ宮殿のクリスタル
蹴飛ばしてあたり見渡す霜柱
蹲て柱状節理や霜柱
霜柱踏みて心に喝を入れ
霜柱立つ能登にユンボが動き出す
瞑りをる死者を起こすな霜柱
霜柱踏んでひとつの墓のまへ
霜柱帽子の似合ふ子はだあれ
父母住まふ黄泉(よもつ)比良坂霜柱
霜柱生るる声して真夜の庭
霜柱ざくざく踏んでやつて来る
段取りの良き棟梁や霜柱
踏みしめる反発してる霜柱
霜柱俳句は感をはじめとす
深々と闇にしんしん霜柱
霜柱見ゆる二重の窓の外
霜柱奈落で回す舞台かな
新聞の溜まりし家の霜柱
医師恐れ霜柱の味知らぬまま
新聞を配る自転車霜柱
霜柱キャタピラ車はや始動せり
女には玻璃の天井霜柱
立ったんだクララとツララ霜柱
歯軋りの踏み拉かれて霜柱
霜柱意気揚々と出たけれど
霜柱踏みていつものコンビニへ
霜柱踏めば轍の軋む音
駐屯地歩哨小屋今朝霜柱
躊躇ひしすゑに避けをり霜柱
霜柱家長借金棒引きす
遠き日の野面(のもせ)に踏める霜柱
踏み潰す音の光りて霜柱
屹立し瓦礫背負うや霜柱
霜柱舐めて老犬歩き出す
みごもれるナース歩くや霜柱
ザクザクジャクザクサクザク霜柱
グルコサミン飲んで踏んでる霜柱
単色の夕餉おかず霜柱
霜柱うんとこどっこい石を上ぐ
幼子に全能感や霜柱
ねじり口飛び石ほのと霜柱
人の地のささくれとして霜柱
黒土は育くむ土や霜柱
霜柱崩れて土に帰りけり
耐震に偽装ありけり霜柱
野の道の葎萎れし霜柱
柱とはならず崩れし霜柱
霜柱折られ倒されなほしづか
等圧線カルマン渦や霜柱
ざくざくと踏み音堅し霜柱
軽々とノリで担がれ霜柱
いつの世も悔しさは糧霜柱
アスファルトに囲まれてゐる霜柱
ギィと哭き返す力も霜柱
霜柱押してつぶれぬ堅さかな
霜柱待ってましたと農作業
霜柱われ剣山の一輪に
霜柱ダイエットしろと押し上げる
踏む音のひび割れてゐる霜柱
ミサイルの下に抗ふ霜柱
霜柱やハンドル取られ横転す
芸術は破壊するもの霜柱
霜柱走れば解決出来ぬもの
霜柱湿り気剥がし辛きもの
東京に巣食ふ淋しさ霜柱
ペナルティエリア解け出す霜柱
霜柱踏む靴々よネット暴力
ザクと吾のシャリと妻の音霜柱
ついでの合掌墓石の脇に霜柱
学僧の素足覚えし霜柱
なんとなくむしゃくしゃする日霜柱
霜柱あの足音は兵隊さん
ともに居る老いの安らぎ霜柱
ふつくらと土盛り上げる霜柱
雑草と霜柱には敵わない
地に鞠が触れてまはりの霜柱
霜柱滅びしけものの睫毛かな
もう一度踏み直してみる霜柱
信号機変わるまで見る霜柱
霜柱火星の地表に思い馳せ
霜柱踏まれるために生まれたる
踏んばるか墓の重さへ霜柱
霜柱踏んで気力の出でにけり
身の丈程上げる石ころ霜柱
北行きはキャンセル待ちや霜柱
地表よりほつほつ出でし霜柱
霜柱グシャリの音は肥満なり
一晩の叫びの跡や霜柱
淵に日が沁みて蛇籠の霜柱
彫刻の台座のまわり霜柱
青馬の蹄まぶしく霜柱
停車場の上に残月霜柱
背伸びするラジオ体操霜柱
一ポンドハンマーで霜柱割る
黒き虫つつまれてをり霜柱
句のために霜柱踏む朝の山
霜柱けふの呪文もケ・セラ・セラ
霜柱さめた地球を割りにけり
立志とは次第に澄みる霜柱
山荘の辺りは静か霜柱
霜柱関東平野を踏み潰す
二か月後の手術日決まる霜柱
霜柱ぐしゃり靴跡戦禍かな
この先は集落ひとつ霜柱
霜柱音たて壊れまた立てり
土洗ひ落としたくなる霜柱
霜柱立つ踏む力疾うに無し
開け辛きカプセル霜柱踏みて
霜柱吾より先に立ち上がる
地球とはとゑらふ星ぞ霜柱
孫を呼びざくざく出来る」霜柱
霜柱土天井を押し上げよ
吾ながら足腰弱し霜柱
霜柱踏んで定年延長す
霜柱よくよく見ると魔界かな
霜柱朝刊配るバイク音
霜柱踏み倒されるラッシュアワー
一列に進む子が踏む霜柱
ケンケンパケンのあたりの霜柱
墓域まで霜柱の香纏ひつく
霜柱見せるほどではないけれど
古里の通学路ゆく霜柱
一村を押し上げてゐる霜柱
サクサクと霜柱踏むナイキかな
ひたひたと茂る古園の霜柱
霜柱この星のやや膨らめる
粘土採る地に埋没の霜柱
霜柱立つ五箇山に紙を漉く
霜柱富士見ゆるまで気の澄めり
女たちの革命果てし霜柱
待ち人を待ってる間の霜柱
霜柱アップルパイをひと口で
あくまでも水の地球の霜柱
霜柱猫の足形残りけり
霜柱持ち上げらるるくず野菜
手弱女の溜息として霜柱
ホームレスさりげなく踏む霜柱
工場を出づれば静寂霜柱
朝まだき霜柱踏み入行会
引きこもりすることあるぞ霜柱
勇気要る霜柱の味なめる友
霜柱ジョギングするや親子連れ
子鼠の死を置く猫や霜柱
土たちの呼吸ひそやか霜柱
霜柱みんなで並んでおはようと
庭先の小さき稲荷や霜柱
霜柱居場所求めて夜を歩く
悲喜劇の合間霜柱立ちぬ
柔らかき愛犬の墓霜柱
首都になき霜柱踏み出勤す
霜柱ふむためらいや足止まるや
霜柱月の光を孕みおり
研ぎ汁のやさしき朝や霜柱
戦争の狂気へ正気霜柱
霜柱踏む音響く山峡の朝