きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「冬薔薇」__金曜俳句への投句一覧
(12月20日号掲載=11月30日締切)

薔薇の花の盛りは初夏と秋ですが、暖かいと12月中旬まで咲き続けます。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年12月20日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【冬薔薇】
婚期逃し春待つ私は冬薔薇
冬薔薇孤高の香り出して咲く
冬薔薇ほのほのやうに散りにけり
ベランダに光集めむ冬薔薇
陽だまりの路地ほんのりと冬薔薇
簪を差して踊り子冬薔薇
冬薔薇に語りかけてる柱時計
冬薔薇故郷までの道しるべ
夭折の女優の供花に冬薔薇
反抗期真つ只中やふゆさうび
冬薔薇雨の仮設に投票所
冬薔薇や新郎の父大欠伸
冬薔薇に触れてはならぬ赤き糸
妹も同じく負けぬ冬薔薇や
時といふ静けさの中冬薔薇
怪しげな夜の魔法や冬薔薇
冬薔薇祖母の面影一輪に
冬薔薇にわが腎臓を食はせたし
冬薔薇やパンの留め金捨てられず
通人の試すワインや冬薔薇
ひたひたと鄙町をゆく冬薔薇
住人を見かけぬ館冬の薔薇
薬もう効かず冬薔薇みづみづし
袖かすめ乾いた音立て冬薔薇
風景の色衰えて冬薔薇
冬薔薇と共に彼女を迎え入れ
冬薔薇や瓦礫の街を歩きをり
冬薔薇の文字を見すぎてゲシュタルト
冬薔薇開ききるまであと少し
冬薔薇一枚に書く遺言書
妻への謝何を贈れば冬薔薇
冬薔薇は我と同じく俯いて
冬薔薇背骨の語る孤独かな
一輪に力いつぱい冬薔薇
ここは何処だろうか冬の薔薇ひとつ
冬薔薇惜別急ぐことなきと
冬薔薇まだ圧のある足運び
珈琲の香よりはつきり冬薔薇
冬薔薇や少女のやうな八十歳
冬薔薇銀婚式の密やかさ
あの家もまた人去りて冬薔薇
薄日さし朱豊なり冬薔薇
冬薔薇抱いて乗込むミニクーパー
冬薔薇や故郷遠し夕間暮れ
透き通る白き昼月冬薔薇
色止めて幹に日矢射す冬薔薇
冬薔薇海限界の蒼放つ
冬薔薇や島の墓標は海に向く
冬薔薇やインフルエンサの嘘は何
言の葉にしてからの事冬薔薇
孤独てふ腐臭の窓辺冬薔薇
凛として天を仰ぐや冬薔薇
冬薔薇汁冷ますため御飯入れ
ビーカーに挿した冬薔薇の不安
三年の思ひ出綴る冬薔薇
冬薔薇の鉢で迎える友遠地
雨に濡れ光溜めたる冬薔薇
冬薔薇無言の主張敢然と
冬薔薇闇に紛れてかくれんぼ
冬薔薇や凍ってくしゃりとばらばらに
冬薔薇兄に倣ひし悪遊び
紅鈍く冬さうびより暮れそめぬ
冬の薔薇午後の紅茶の濃く匂ふ
咲きながら干乾びながら冬薔薇
古カフェのテラス彩る冬薔薇
裸婦像を包むごとくに冬薔薇
ランボオの詩集の脇の冬薔薇
冬薔薇のまどろみのなかに陽射しあり
パナケアは神の霊薬冬薔薇
冬薔薇寒暖の差に抗いて
須臾の間の陽だまりにあり冬薔薇
冬薔薇どちらか一つ未来向き
指を切る欠けた刃の冬薔薇
冬薔薇一輪挿して母見舞ふ
冬薔薇ゴミの分類捨てぬ物
一輪のスポットライト冬薔薇
冬薔薇誰のものでもない眠り
冬薔薇や黙して語らず自己主張
冬薔薇あかに魔力のありにけり
病床へ送信したり冬薔薇
冬薔薇や学業成就成し難く
冬薔薇の置かれし今朝の交差点
冬薔薇ピンク色して空仰ぐ
女坂とげを磨きぬ冬薔薇
改善は過去に頼れり冬薔薇
冬薔薇や今朝の光に凛と咲き
艶やかな一輪ひそと冬薔薇
一粒の泪冬薔薇の縁
売地札門扉にからむ冬薔薇
冬薔薇や美とは何かを問いかける
指に触れてガラスの音立て冬薔薇
冬薔薇や首のうしろに日がつめた
母さんが名字戻した冬薔薇や
冬薔薇や受験ピリピリ和ませる
太陽の射程圏内冬薔薇
冬薔薇やテレビに映る大リーガー
晴天の空へ一輪冬薔薇
冬の薔薇どれも桃色つつましく
冬薔薇の空を蝕む哨戒機
冬薔薇あの人はまた嘘を吐く
冬薔薇の強張りつひぞ解けざりき
あをぞらを裂き一輪の冬のばら
冬薔薇見えなきものは見たきもの
冬薔薇時期を外して墓参り
冬薔薇を手折りて髪に飾りおり
無人駅綺麗な魔法冬薔薇
冬薔薇妻はやさしく老いにけり
こだはりのひとつやふたつ冬薔薇
時代おくれの洋服まとう冬薔薇
冬薔薇外灯ほのと点きにけり
冬薔薇過ぎて刑法概論B
冬薔薇のうなじに弱き陽の当たり
冬薔薇できっかけつかむ仲直り
さらけ出す骨身や冬さうびひとつ
冬薔薇の夜をたゆたう運指表
冬薔薇まだまだ放置する虫歯
船入に納むや庭の冬薔薇
冬薔薇棘も覆われ守れるか
曇りたるフラスコに挿す冬薔薇
日溜まりに色を深める冬薔薇
冬の薔薇一輪挿して母のベッドに
メビウスの輪に囚われし冬薔薇
妻と同じくらいの冬薔薇の棘
冬薔薇や寒さと棘が私を刺す
冬薔薇や一際目立ち紅き色
冬薔薇洋書専門絵本店
裸木にぬーと顔出す冬薔薇
雑草の庭を許せよ冬薔薇
昭和めく珈琲館や冬薔薇
残されし女王陛下の冬薔薇
空き家とて気位捨てぬ冬の薔薇
冬薔薇のしぼめる中に光閉づ
退院を待って待っての冬薔薇
薄き日を洩らさぬやうに冬薔薇
三つ編みの娘の抱く冬薔薇
冬薔薇最後に風を描き入れて
冬薔薇秋田美人の生あくび
冬薔薇の咲けずはかなき蕾かな
冬薔薇やゆるがせにせぬ師の教へ
咲きて散る一人暮らしの冬薔薇
冬薔薇が「もう帰りなよ」と吾に云う
濃く咲いて淡き香りの冬の薔薇
不機嫌を仕舞ひきれずに冬薔薇
冬薔薇陽に膨らんでゆく気力
冬薔薇佇む平野啓一郎
冬薔薇も色間違えるこの気象
黄色のみ残して捨てし冬薔薇
ボート漕ぐうしろうしろに冬薔薇
一桁の温度に真つ赤冬薔薇
冬薔薇還らぬ兄を今も待つ
冬薔薇を見つめる父と車椅子
冬薔薇蕾のままの矜持かな
凛として影の深きや冬薔薇
ボサノヴァは娘の恋を冬薔薇
冬薔薇の棘もておのれ主張せり
島ひとつ照らす光芒冬薔薇
冬薔薇昨晩空けたジンの瓶
健気さを見せたき姿冬薔薇
冬薔薇耳にシャンソン消さぬやう
冬薔薇や飛行機走り子供たち
渾身の色を深かめて冬薔薇
横顔は他人のごとし冬薔薇
寒い日は冬薔薇よりも豚バラだ
冬の薔薇生命保険のポイント貯まる
咲き満ちて色失へる冬薔薇
暗き夜に灯り点せよ冬の薔薇
いつ死ぬと判れば易し冬の薔薇
生涯を妻とニコイチ冬薔薇
絶望の視界に冬の薔薇溢る
冬薔薇の自分の重みで垂れし首
冬薔薇や羽根の折れたるトゥシューズ
漢字まで棘棘し冬薔薇かな
冬薔薇ハーフの孫の砂遊び
冬薔薇ひとひらは墨配されて
冬薔薇ひらけば人の貌のある
ただ一輪物言う如き冬薔薇
ブラインド上げ秘書室の冬薔薇
狡休み部屋は獄なり冬薔薇
フィギア終へリンクに赤き冬薔薇
アトリエは岬の付け根冬薔薇
バリケードテープや赤き冬薔薇
冬薔薇懐中電灯電池切れ
雪山にツララ冬薔薇霜柱
光より影ある街の冬薔薇
冬薔薇や問わず語らずゆれており
鈍色の空に紅刺す冬薔薇
ついうつかり力抜けたる冬薔薇
冬薔薇キーウへ至る重装備
冬薔薇威風凛然貴婦人如(ふゆそうびいふうりんぜんきふじんにょ)
教卓に一輪挿しの冬薔薇
ゴルゴタの丘に深紅の冬薔薇
ショーファーの詰襟固し冬薔薇
「黙祷」の声に俯く冬薔薇
ともすると赤わざとらし冬薔薇
冬薔薇蕾膨らみ花弁舞ふ
亡き母のルージュの色や冬薔薇
綻ぶる前に朽ちたり冬薔薇
眼科出てプリズムの街冬薔薇
冬薔薇口寂しくてまた煙草
玻璃天井剥離の破片冬薔薇
冬薔薇散りたい時に散りなさい
自らを罠にしてるや冬薔薇
あけすけな妻との会話冬薔薇
園児らに褒められてゐる冬薔薇
斎場のにほひかなしき冬薔薇
ことさらに赤おそろしき冬薔薇
冬薔薇パン屋つぶれてまたパン屋
目つむれば赤き闇あり冬薔薇
王子さま故郷の星に冬薔薇
紅白にまたもはずれし冬の薔薇
気を付けてゐて指に棘冬薔薇
アルビノーニ聴くかに傾ぐ冬薔薇
人類も托卵すなる冬薔薇
あの空の向かうに戦冬薔薇
風已んで一片落とす冬薔薇
折り取りて隙間淋しき冬薔薇
心臓弁の開閉真っ赤冬薔薇
平和賞禎子の像の冬薔薇
その赤さ吾れにも欲し薔薇薔薇
くれないの冬薔薇ひとつホテルロビー
冬薔薇いよいよ風の尖るなり
冬薔薇の覚悟あるやに開きたる
冬薔薇風強きゆえ両の手を
冬薔薇を抱いて三拍子の歩調
一輪の冬薔薇挿して誕生日
冬のばら制限付きのやさしさよ
冬薔薇ポケットに手と銀の馬
母白寿冬薔薇一輪赤く咲く
冬薔薇より真白き手紙届きけり
明日のすぐ近くに赤き冬の薔薇
冬薔薇女神降臨して立てり
鉛色の空押し上げる冬薔薇
冬薔薇や茶髪ピアスのウエイター
冬薔薇最後の旅の富士見かな
立像のなまめく臍や冬薔薇
少女やさし心痛めし冬薔薇や
戴帽式の冬薔薇の真紅なる
冬薔薇やプリズムに星くすむ夜も
温室の欠けたガラスに冬薔薇
冬薔薇母と歩調を合はせけり
カプセルに未来を冬薔薇少し揺れ
痛みもておぼゆる人や冬薔薇
冬薔薇の庭開け放つ誇らしく
冬薔薇の棘うつくしく剪られけり
冬薔薇招きいれよと窓のぞく
一人っ子冬薔薇の葉に似て一枚
あからさまに老いを読むなと冬薔薇
赤く咲く冬薔薇ひとつ庭の片隅
気高さや冬薔薇咲きて手を合わす
いつの日か報いあるかな冬薔薇