きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「寒施行」__金曜俳句への投句一覧 
(1月31日号掲載=12月31日締切)

寒施行とは、餌が乏しい寒中に、野生の動物たちに食べ物を与えることです。呪術的な色合いが濃い行為になります。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年1月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【寒施行】
もうすこしだまされたふり寒施行
寒施行特配ミルクの話しされ
油揚げ匂ふ山道寒施行
山影に狐顔出す寒施行
小豆茹でお裾分けする寒施行
待つ間にも諍ひ合へる寒施行
草の間に長き鼻あり寒施行
寒施行黙して結ぶ握り飯
モノクロの景色に止まり寒施行
いのちへの思い繋げる寒施行
吾に握り飯彼らに寒施行
寒施行老女は終ぞ海を見ず
人生のおまけの時間寒施行
月明り届かぬ場所に寒施行
国道といふ名の径や寒施行
船を漕ぎ狸の島へ寒施行
寒施行せし大伯母の大往生
裏路地へ声の消え行く寒施行
旧街道月影著るき寒施行
美容院まで山ふたつ寒施行
寒施行ここらあたりと目星つけ
寒施行足跡傍で立ち止まる
寒施行もつとやる故諍ふな
寒施行ここは昔の防空壕
月明り寒施行待つ狐の尾
寒施行鯨の息吹や海深し
寒施行かたち多様な小豆飯
この村に禁忌ありけり寒施業
ブロッコリー芯は喰いまじ寒施行
朝食は子ども食堂寒施行
飼い犬にくすねられたり寒施行
青僧や寒施行して徳を積み
山風と潮風交り寒施行
寒施業して寒施業して死なせけり
ごんといふ名にまた泣けて寒施行
寒施行荒らす田畑は雪の下
土匂ふ風に吹かれて寒施行
本堂へ小さき足跡寒施行
寒施行狐のちさき鳥居かな
寒施行今の子供に語り継ぐ
子はゴルフ夫はパチンコ寒施行
さまざまな結界ありて寒施行
寒施行巣穴の闇に月さやか
少子化過疎化消えゆく知と技寒施行
寒施行駆ける足音の雪残す
側溝にて残りご飯の寒施行
寒施行古き地蔵を祀る町
寒施行なすべし野生生かすべし
寒施行餅かじる音耳冴ゆる
鳥だけは友ベランダへ寒施行
油揚げ軽しひとりの寒施行
寒施行川の流れのゆるやかな
寒施行白き羽音が闇を割る
熊除けの鈴鳴らしつつ寒施行
庭に抛る夕べの仏飯寒施行
寒施行麺麭くず食べるグレーテル
平かな石の皿には穴施行
鯨舟寒施行の波荒し
公園の銀杏に鳩や寒施行
暗闇に夜叉が来りて寒施行
領収書こまかく貰ひ寒施行
時を経て意味知る土地の寒施行
青空の青そらぞらし寒施行
どんぐりのぱらぱら落ちて寒施行
早立の遍路ころがし寒施行
ちやかりと陣取る鴉寒施行
寒施行私に何かできるなら
寒施行消えた供物の皿乾く
野良猫や寒施行にも顔を出し
野良猫に待たるる男寒施業
寒施行難所続ける最上川
寒施行寺の地蔵の二頭身
落武者の謂ひ伝えあり寒施行
寒施行凹凸多き上がり段
寒施行鯨の背に見ゆ星ひとつ
野施行を木から見下ろす鴉かな
寒施行騙さなければ騙されず
けだものはけだものとして寒施行
野施行や藪より知らぬ子らの声
散歩道外れる脇の寒施行
お祭にあらず揃ひて寒施行
切通し抜けて灯を消す寒施行
足跡に足を重ねる寒施業
幸せに暮らしています寒施行
寒施行きゃきゃと子らの声したる
荒野には寒施行する穴五つ
寒施行足元に見ゆごんぎつね
ふるさとは何にもないと寒施行
寒施行欠けたる地蔵洗ひをり
谿わたるけものの聲ぞ寒施行
海の幸知らぬけものに寒施行
うるわしき御厨子の腕や寒施行
寒施行都会の今を横に置き
寒施行巣穴と出逢う森の径
寒施行奥之院への九十九折
LED筋交に飛ぶ寒施行
寒施行老は祠に握り飯
けものらの待つは確かや寒施行
藪漕ぎて寒施行せし径つくる
寒施行分け隔てなく笑顔かな
雀来て小豆飯つつく寒施行
切株へ届かぬ夕陽寒施行
野施行の風やや強く暮れにける
油揚げ烏が横取り寒施行
寒施行気を遣うのは穴二つ
狛犬やうしろの藪の寒施行
野施行や俊寛僧都御座す島
野施行や視線は鴉のみならず
人離れ荒れゆく山よ寒施行
屈みたる風の小さきや寒施行
柑橘の乾く間もなし寒施行
皺の手の差し招くなり寒施行
杭を打ち皿を乗せたる寒施行
これもまたいけないことか寒施行
野施行や視線は鴉のみならず
一年で靴履き潰し寒施業
寒施行熊スーパーに立て籠もる
野施行や供物は海へ流れをり
四阿の朽ちたるままに寒施行
月光の照らす墓地にも寒施行
甘納豆入れし赤飯寒施行
寒施業妙にまあるい石のあり
山痩せて減った狩人寒施行
野施行や自己責任といふ四文字
寒施行おいなりさんをそつと出し
寒施行終の住処は暖かし
わずかでも寒施行より金欲しい
深き森寒施行しか立ち入らず
穴が有る寒施行する決意秘め
寒施行みな口あけて空をみる
寒施行賛否の嵐聞き流す
寒施行山辺チロチロ野道の灯
尾根筋をすこし外して寒施行
戴く命侘びるも辛い寒施行
暗闇に光る目四つ穴施行
父と来し道を子を連れ寒施行
砂浜に山の幸置く浜施行
寒施行鍛冶屋の火と霜の音
寺の子と檀家の子来て寒施行
寒施行去る人影はみな黙す
或る村に残る野施行ゆるゆると
寒施行わたしにも呉れ何でもする
月明り鎮守の森に寒施行
走り根の窪みに盛れる寒施行
寒施行狭き車道を渡る鳥
樹木葬墓地に供物や寒施業
狐狸たちが過疎のお婆に寒施行
乾物の風に揺れたる寒施行
寒施行あたりに保存良き化石
寒施行けものの聲を聴く如く
ちちははのやさしさあふれ寒施行
寒施行ここら山城伝へる地
籾殻を寒施行にと二掴み
置きたてを鴉の狙ふ寒施行
獣道まで踏み込んで寒施行
祠ある山の獣に寒施行
二張の提灯提げて寒施行
お互いに生きておれよと寒施行
山彦を起こさぬやうに寒施行
寒施行まで高値の余波かぶる
幼子の手紙を添へむ寒施行
大小の赤飯置かれ寒施行
息を殺すものの気配や寒施行
足跡の向かふ本堂寒施行
展示梨テンが食い逃げ寒施行
寒施行竹筒の米消えにけり
野施行や安達ヶ原に鬼が棲む
泣き声の聞こえぬかユダ寒施行
寒施行けもの轢かれてけもの来る
迫り来る野生の復讐寒施行
月明り影に驚く寒施行
寒施行塩屋の浜にあら煮かな
何処より感ずる視線寒施行
寒施行赤き袋に鳥の餌
寒施行地蔵に赤き涎掛け
葉と枝を皿と箸とし寒施行
穴施行穴にあたたかなる闇が
今だからできたりもする寒施行
森といふ一つの宇宙寒施行
寒施行不思議の國に入る前に
雀らの軒に賑やか寒施行
寒施行山の神々目を瞑る
のっぱらのだだっぴろさよ寒施行
寒施行何をあげるか思案する
成長に神事は要らぬ寒施行
法螺貝を子に託す日や寒施行
豊作へ仏果欲張る寒施行
寒施行影すれ違う野の灯り
ひと家族食うに困らず寒施業
風吹くや余り物なる寒施行
誰一人降りぬ駅あり寒施行
けもの道雨に湿りて寒施行
この先は集落ひとつ寒施行
野施行の闇のねぢれて男去る
寒施行情けは人のためならず
戴(いただ)いた生命(いのち)に感謝寒施行
親は子を捨てて悔いなし寒施行
寒施行たぶんおそらく人がくる
好物の饅頭ひとつ寒施業
低き空明日もひとり寒施行
野施行の米粒少し靴底に
かさこそと小豆零して寒施行
夢の中狐になりて寒施業
寒施行懐かぬほどの餌を供へ
あるときは恋も芽生える寒施行
ささやかな祖母の親切寒施行
寒施行夢はぶつりと終はるもの
山風に油揚げ匂ふ寒施行
寒施行迷い入りたり獣道(けものみち)