兼題「鯨」__金曜俳句への投句一覧
(1月31日号掲載=12月31日締切)
2025年1月14日5:56PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
鯨の肉は、かつては貴重な蛋白源でしたね。白長須鯨は体長25メートルにもなります。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年1月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【鯨】
海鳴りに鯨の影のうねりかな
岬へと急げ鯨の来る予感
灯台のかたき光を初鯨
鯨帰る後えに遠く牟呂の山
天泣や鯨はひそと翻る
黒潮を街道旅の鯨かな
鯨食らふ金剛頂寺供養塔
海の色にはかに膨れくぢらの背
大洋を喰らひし鯨湾に死す
キャンパスでナガスクジラと呼ばれた師
「絶滅の危惧種」となりし捕鯨船
青空へ潮噴き上げる鯨かな
岩を割るごとく鯨の目が開く
鯨見に出かけた海は荒れ模様
浅瀬へとはぐれた鯨目に涙
大洋を喰らひし鯨湾に死す
くじらって山みたいだね倒れるね
もりづつの照準は今涵泳の鯨(げい)
荒波はロディオのごとし捕鯨船
おらんくの池に潮吹く髭鯨
親子連れヒトと変わらぬ鯨かな
海流の磨く玉なる鯨かな
ぐんぐんと波迫り来て鯨かな
太平洋一撃したる鯨の尾
白浜へ鯨くたりと打ち上がり
ピノッキオ呑んだ鯨や痛かろう
逆波の沖を乗継ぐ鯨船
背美鯨骨格標本遙かなり
鯨よる太平洋の向かう岸
夕間暮れ海を漂う夏鯨
言葉なき巨体を運ぶ鯨かな
一品の鯨ハリハリ熱燗で
こつそりとビクビクと受く鯨肉
この星の七割くぢらほしいまゝ
星の砂鯨の背の黒光り
鯨舞ふ月と戯れるやうに
鯨食み遠き昭和の味語る
海に飽き空を飛ぶ鯨の一家
初鯨空の低さに背伸びする
春遠く鯨の声の深青へ
御喋りもHz(ヘルツ)とHz(ヘルツ)鯨たち
雲割れて日の当たりたる鯨かな
大いなる鯨を解いて感極む
鯨の絵はみ出しそうなはがき来る
ふる里の囲炉裏を想う鯨汁
鯨寄る七つの浦を呼び集め
大空に両手を広げ鯨の尾
鯨肉のカレーライスや母の皺
一吹きの鯨の息に虹かかる
遠浅の砂紋を崩し鯨漁
懐かしの胃袋満たす鯨かな
海掃いて鯨の群れの通る道
巨大さの頂点仕切る鯨かな
白鯨に挑むが如く受験する
跳び上がる大海原に鯨の尾
「白鯨モゥビ・ディク」共に生きよう太平洋
追われずに鯨悠々印度洋
朝の浜濛々と湯気鯨の血
槍を持ち鯨追う海朱に染まり
鯨見に目立たぬ漢に誘われて
箸止めてみなが静まり鯨肉
飛雨に身をゆだねてはぐれ鯨かな
目を眇め鯨ねじれて海を穿つ
朦々と血の湯気上がる鯨漁
ディズニーに誘われたかと鯨来る
鯨浮く水族館のシヨウの沖
風の無き静かな夜に泣く鯨
初鯨どれだけ待てばいいですか
山上で鯨見物する旅行
ヤケ酒や鯨尾の身の噛応へ
すこしづつ陸に戻りたがる鯨
鯨跳ぶ水平線の瘤となり
星きれひ鯨の骨の眠る丘
鯨より若き漁師が鯨捕る
二十年勇魚追はへて一戸建て
鯨死す岩松川に迷ひ込み
鯨にも捨てがたき夢波の果て
山風が黒潮追へる鯨かな
朝の浜鯨解体絶叫す
黒並び喝采のごと鯨啼く
巨頭鯨(ごんどう)や敗戦国に戦前来
ゆっくりと鯨潮斬る偉大な尾
ひうひうと鯨ウオッチング南氷洋
黒潮に遊びホエールウオッチング
見てみたい潮吹く鯨瀬戸内で
円周を鯨ぐるりと水の星
ゆつくりと且つ雄大に鯨らは
ホエールウォッチング海は明るいか
そらみあげあるくあおぞらくじらぐも
一湾に鯨の唄の響きけり
給食の鯨サイコロに見えて来る
まるごとの生態系や鯨の胃
銀河より鯨に届くパルスかな
くろぐろと鯨の摩羅の据へてあり
鯨骨や有象無象のほぐしをる
食べられぬ鯨シェパード比較する
潮吹きて星となしたる夜の鯨
波の影背負ひて泳ぐ鯨かな
踏ん張って砲手鯨に照準す
初鯨浪花の海が気にかかり
鯨には高すぎる空海の果て
コッペパン脱脂粉乳また鯨
鯨鳴く声なき声を聴きゐたる
てんのたまふくぢらはうみををさめよと
男らしさと女らしさと鯨
死を見せに打ち上がり来し鯨かな
寝乱れて鯨の匂いの女かな
潮吹いて鯨は北に進みゆく
商店街子らが行列鯨カツ
鯨跳ね寒き月夜を裂きにけり
白亜紀の森ありし海鯨啼く
鯨の竜田揚げと脱脂粉乳
海原を潮吹き渡る鯨かな
懐かしき鯨食はせるメニュー表
給食の馳走となりし鯨かな
白鯨は時のはざまに出没す
鯨の潮吹きに少し遅れて笑ひけり
老人のことごとく鯨の背に
押し寄せる地球の嘆き聞く鯨
給食に鯨でたころおかつぱ頭
鈍いろの空へ勇魚の潮を吹き
馬の目に似たる優しさ鯨の目
荒海に小さき眼鯨汁
群鯨の夜を超へゆく背中たち
鯨見て水族館は丸く見え
その骨の遊具めきたる鯨かな
すき焼きと言えば鯨の時代あり
暮れかかる鯨尾をふる写真館
水平線果での死闘なる捕鯨
子鯨といへども雄々しく潮を吹く
セルフレジ通過しました初鯨
子鯨の親に寄り添ふばかりなり
海原に鯨母子の無心なる
荒れる海見渡す地なる鯨塚
きゅいと鳴く鯨は海を選びけり
落日の影を辿れば鯨塚
啼き交はす鯨の声の胎児まで
鯨啼く漁港で今日も君を待つ
灯台に潮を吹きかけ鯨來る
懐かしい経木開けば鯨かな
その鯨波より高くダイビング
眼も口もまるで笑つてゐる鯨
親子連れ鯨消えゆく水平線
子鯨迷い込み人の波すべもなし
白長須鯨の尾鰭が立ち上がる
五種盛の土佐鯨鍋おもてなし
地球から宇宙へジャンプ初鯨
海とほく鯨の墓場ありと聞く
灯は沖に流れて暗し背美鯨
ひと蟻のごとく集って鯨解く
溶けながら流るる今際なる鯨
遠き日の給食うまき鯨かな
波叩く鯨の尾つぽ上機嫌
内海をはぐれ勇魚の彷徨へり
可愛いと鯨評する女子高生
海原の幸せ探す鯨の日
手を筒に覗く海原鯨行く
クリック音あたりに満ちてぬとくぢら
黙の酒鯨尾の身の噛応へ
よもやもの星の水面を鯨かな
一碗の鯨つるりと胃に沁みる
船傾ぐうしほ吹きゆく初鯨
大海が設計製作した鯨
すんなりと捕鯨船団買へるとは
歌声は鯨のヘルツ漁師町
彷徨える白鯨見たり漁の果て
空泳ぐ鯨や年末商戦かな
冬岬鯨の影を追う鴎
雨風に任せて泳ぐ鯨かな
足を断ち手を鰭(ひれ)に変へ鯨生く
吹き上ぐる虹ひとかけら初鯨
届かない五十二ヘルツ鯨鳴く
鯨揚げノスタルジーを醸し出す
海溝へ落つる鯨の骸かな
人遥か太古の海に帰し鯨
翻り残像となるくぢらの尾
恵比寿さま鯨へ受肉して泳ぐ
地図にない海に鯨の秘密あり
遠鳴きの鯨の音消ゆ冬の果て
廃プラの海に鯨の恋の場所
弧を描き太平洋を鯨跳ぶ
鯨跳ぶ二色の躰翻し
髭面で鯨に合わせる顔がない
土佐沖を鯨ゆたりと泳ぎをり
うっ血の色した鯨肉を焼く
鯨カツそんな話の同期会
鯨鳴く五十二ヘルツの集合
鯨肉竜田揚げ昭和思い出し
一頭の鯨五十の漁師追う
寄生虫宮本武蔵つく鯨
隕石の落ちたる音を知る鯨
土佐湾の鯨のうんち網の中
濃紺の画布の向かうを鯨去ぬ
幾たりの人を救ひし鯨塚
鯨追ふ大地の町の追い込み漁
牛鶏がアウトの娘鯨肉
鯨飛ぶ自転車に翳落としつつ
鯨啼きわだつみの声の彼方へ
淀川に鯨沈める腐臭かな
鯨らを見物に行く捕らぬ海
海底に鯨の骨のありにけり
大鯨や現(うつつ)の海に草原の夢
大海の島と見紛ふ大鯨
小鯨の骨格標本海遠し
鯨見るために再び船に乗る
鯨尺に明治の日付冬至かな
鯨知る地球滅びる時の音
寒いから鯨みなとへ迷い込む
鯨見に行こうとこんな雨の日に
沖の波再び変はり鯨啼く
海広し鯨は番ふ寂しくて
卓袱台に野菜ばかりの鯨汁
見しことの無きも親しき鯨かな
惑星にマウリの鯨潮を吹く
食卓の鯨の肉の色が濃い
歩道橋鯨みたいと言う子供
海中に見開く目玉鯨かな
鯨去りしづかな海となりにける
鯨観る自然の脅威打ち震え
鯨追ふ水平線に潮吹けり
髭鯨南海トラフ沿いの村
紀州沖海呑み込んで鯨啼く
鯨鳴き八方に波広がりぬ
グリーンピース鯨守って大暴れ
海霧の囁きあへる夜の鯨
爆弾として座礁する鯨かな
追詰めるキャッチャーボート鯨哭(な)く
鯨一頭謎の海へと死の旅路
電灯に鯨の影の跳んでゐる
打ち上がる迷い鯨の超音波
胸のすく話多かり勇魚捕り
鯨に乗って水平線を超えて行け
【不明】
背ゆるやかに浮かぶ雲の中
関東煮コロが頑張る生きている