兼題「春の風邪」__金曜俳句への投句一覧
(3月28日号掲載=2月28日締切)
2025年3月12日5:02PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
春の風邪は重くなることは少ないですが、長引くことがありますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年3月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【春の風邪】
屋根修理退散させし春の風邪
やさしくはもうしてくれぬ春の風邪
入試時期慌てて処方春の風邪
春の風邪管に繋がる白寿なり
洗剤と眉墨も買ふ春の風邪
皆勤賞春の風邪にて途絶えたる
薄桃のドライフラワー春の風邪
春の風邪窓に日差しの恨めしく
思ひ馳すいくさのゆくえ春の風邪
春の風邪会えない想い熱を帯び
沈黙の定例会議春の風邪
もう一年やってみるかと春の風
春の風邪ジェンダーフリーで訪ね来る
介護して疲れて残る春の風邪
母からのLINスタンプ春の風邪
春の風邪散らかっている家の中
春の風邪味の決まらぬ酢味噌和
家族みな優しくなりし春の風邪
春の風邪隣の居間の笑ひ声
春の風邪気儘なラジオ深夜便
春の風邪見えるものしか見えぬ窓
春の風邪癒えて爪染む夜の居間
春の風邪ゆく雲こころ持ち去りし
小恙と侮り難き春の風邪
春の風邪夫おろおろ役立たず
春の風邪子からもらいて親もひく
陽光に溶けゆく不安春の風邪
まなぶたにまなぶた重ね春の風邪
逃げる吾をつひに捕えし春の風邪
春の風邪タオルケットに囚われて
自販機にHOTもなくて春の風邪
欠勤の届けこそりと春の風邪
春の風邪「ばいきんまん」と言はれけり
缶切りの錆ゆくまでを春の風邪
自堕落も午後三時なり春の風邪
春の風邪米価の上がるニュースかな
星の絵の靴下いびつ春の風邪
採点の基準の揺らぐ春の風邪
春の風邪介護疲れを癒しけり
すりおろすものみな旨し春の風邪
揺れる影心模様に春の風邪
春の風邪もろともせずにスカートの娘
いざ選挙近付きたるぞ春の風邪
春の風邪十二単に一つ足す
サインペン風邪は私が恐れたり
春の風邪ひねもす猫の寄り添ひて
明日こそ明日こそかな春の風邪
夢うつつ遠き川音春の風邪
熱の児の離さぬゲーム春の風邪
おしるこの塩のやさしき春の風邪
春の風邪右往左往の父ひとり
もらつたら誰にもあげぬ春の風邪
厭わしき鼻のひとつや春の風邪
春の風邪ひねもすのたりのたりをり
弱アルカリ性の弟春の風
性悪き春の風邪施設閉鎖せり
春の風邪中留めゆくひらひらと
カレンダーをチラ見してをり春の風邪
桃缶をちびちび食ぶる春の風邪
風邪の子の指でなぞれる猫の尻尾
AIのいやに長引く春の風邪
母親に甘えてみたき春の風邪
遠出せし身軽な装い春の風邪
不覚にも薬に頼る春の風邪
一目の海をねだるや春の風邪
夜具強く抱きし目覚めや春の風邪
愁ひにも似た倦怠や春の風邪
春の風邪移し移され三姉妹
春の風邪帰らないでは飲み込んで
春の風邪ダミ声の妻医者の手に
春の風邪太つてしまふではないか
春の風鍵盤ハーモニカくさい
春の風邪箱にマスクはあと二枚
春の風邪スマートフォンを一日中
ひとつ咳恋の兆しに似たるかな
いいひとが優しさくれる春の風邪
そろそろか世代交代春の風邪
春の風邪いつになってもこの漢字
団地には留学生や春の風邪
春の風邪両手に猫をひとつづつ
春の風邪うす紫のうがひ薬
定位置を探す寝返り春の風邪
一番に春の風邪ひくおませさん
春の風邪穴あきそうな道ばかり
一話からドラマ見直す春の風邪
春の風邪ピザ一枚の重きこと
天井に幾何の定理や春の風邪
手洗いの汚れ気になる春の風邪
本ばかり積ん読となる春の風邪
鼻声の坊主の読経春の風邪
陰性の証明もらふ春の風邪
春の風邪ティッシュを使うこと五枚
春の風邪コンビニの灯もうるむかな
ものがたり終はり背筋に春の風邪
あなたこそ春の風邪よりじれつたい
大丈夫小さな嘘に春の風邪
目を閉じて旧居の名残り春の風邪
引きこもる身には眩しき春の風
チョコレート効果は微妙春の風邪
ハワイとのリモート会議春の風邪
春の風邪触れずにおくも思いやり
月欠けるやうにからだが春の風邪
窓にひき窓に癒えたり春の風邪
放哉の一人が谺春の風邪
甘つたれを演じ切つたり春の風邪
春の風邪サザンアルバム聴いてをり
頭の中にまんばう泳ぐ春の風邪
春の風邪味覚の消へし日の十日
春の風邪フォーの旨みも薄らいで
おくれ毛がひねも去らぬ春の風邪
春の風邪予定過密の三連休
春の風邪影を連れても花は咲く
すつと入る噂話と春の風邪
春の風邪二人患ひ内緒らし
春の風邪モッハイバーにヨーがない
金巾の肌ざはりよき春の風邪
祝宴で貰うてきたる春の風邪
埃舞う空またまぶし春の風邪
三回忌窓から注ぐ春の風
休校を悦ぶ孫も春の風邪
寝床からパソコン叩く春の風邪
そこひなき風の嗤いや春の風邪
アパートの家族五人の春の風邪
差し水にフォーしづまりし春の風邪
春の風邪吾子のいや増す食好み
春の風邪一輪挿しの花開く
高音の声の掠れて春の風邪
喉飴の黒糖味や春の風邪
普段せぬマスクを着けて春の風邪
てのひらの薄きところの春の風邪
春の風邪とは大げさのずる休み
合谷のツボに爪あと春の風邪
自堕落もはや午後三時春の風邪
らしいどうもそうらし春の風邪
春の風邪上がらぬ熱に熱冷めて
埃舞う空は白々春の風邪
三重苦コロナ花粉に春の風邪
節々や朝のゴミ捨て春の風邪
朝電話春の風邪など召されたか
春の風邪食後三種の処方薬
春の風邪心の奥に灯をともす
菓子パンをまた食べてゐる春の風邪
春の風邪何の暗示か電話鳴る
一人旅地酒ぶら下げ春の風邪
子のごとく居留守をつかふ春の風邪
春の風高輪ゲートウェイ漫ろ
春の風邪ひいて年休取得せり
汽水湖の満ち干にひけり春の風邪
ボーダー花壇近くて遠き春の風邪
ベッドから妻見送れる春の風邪
春の風邪ひたすら妻の言葉待つ
はるのかぜゆとうよとうがごっちゃごちゃ
速報に成年式や春の風邪
手紙など引っ張り出して春の風邪
うつうつと夢の中まで春の風邪
春の風邪眠れぬ夜の独り言
春の風邪スリッパ赤く縞々で
夫と子と寝癖まで似て春の風邪
百薬の長以て制す春の風邪
開花前にことなほる日や春の風邪
戀のごと微熱の続く春の風邪
早退のバスはがら空き春の風邪
九分九厘妻より春の風邪もらふ
恙なき消息に癒ゆ春の風邪
遺されし人皆喪服春の風邪
贅沢な春の風邪にはゴディバチョコ
春の風餃子のやうな耳である
積読の長編を読む春の風邪
大袈裟な父の嚔や春の風邪
春の風邪開けたカーテンそっと閉じ
脱衣所に忘れし下着春の風
春の風邪犬の散歩を端折りつつ
必須事由二つ折して春の風邪
ゆつくりと焙じ茶を飲む春の風邪
眠るでもなくぼんやりと春の風邪
春の風邪軽い嚔も淋しけり
手と足が遠くにあれり春の風邪
窓を開け邪気を払えや春の風邪
上げ膳と据え膳つきで春の風邪
寒暖差ついていけずに春の風邪
春の風邪名もなき村にひとりゐた
この気持ち駄々っ子みたひ春の風邪
一日をアガサクリスティー春の風邪
春の風邪漢方苦きばかりにて
春の風邪ひいては治りまたひいて
鼻声のなほ美しく春の風邪
春の風邪食器に隠れひそむ泡
膝痛や苦チョコレート春の風邪
おそろしくもさめがたき夢春の風邪
耳が扉を飛び出してゆく春の風邪
接吻で汝に移せり春の風邪
三組の学級閉鎖春の風邪
隣家また宅配来たり春の風邪
春の風邪佳き一冊を読み了へし
また拭う眼鏡の曇り春の風邪
春の風邪みぎ手がめ手に触れたがり
春の風邪言ひ訳にして終る戀
花粉症だと喝破され春の風邪
春の風邪静かに世代交代す
通勤にふと足踏みの春の風邪
春の風邪母の子守唄遠き春
うつむけば咳にこぼれる花の影
無精髭をすり抜ける猫春の風邪
サモワールひかりて春の風邪心地
春の風邪寡黙に啜る卵粥
春の風邪なうまんぞうがおりてくる
牛乳を膜ごと啜る春の風邪
いたずらに鼻奥居座る春一番
キッスより拾ひてきたる春の風邪
春の風邪何をしたかと聴かれても
闇の中墜ちてゆく夢春の風邪
やめられぬ一人暮らしや春の風邪
春の風邪向こう三軒両隣
公園のベンチひとりの春の風邪
入口の検温マシン春の風邪
春の風邪葛根湯の出番なり
カーテンの襞を数えて春の風邪
唇にジャムひやひやと春の風邪
辻立ちと選挙集会春の風邪
唇にひやひやとジャム春の風邪
声優のハスキーボイス春の風邪
ウヰスキー少し温む春の風邪
孫なんかいらない春の風邪を抱く
風邪なのか花粉症なのか鼻の出て
公園のベンチで読書春の風邪
咳やまずひかり眩しき春の風邪
白磁器の降る心地して春の風邪
足伸ばし春の風邪用オマジナイ
笑ふ子も笑はない子も春の風邪
ふと気付くいつかの風がまた吹いた冬明け来たる長い一年
寝床(ねどこ)にて想(おも)ひわずらふ春(はる)の風邪(かぜ)
春の風邪不足して来るセキュリティー
窓辺から寝床を離す春の風邪
眠りても眠りても尚春の風邪
好物をねだつて余す春の風邪
春の風邪布団周りに菓子袋
まひるまを時報いくつも春の風邪
春風邪の気配混み合ふ朝のバス
つらつらと剥くゆで卵春の風邪
黒マント纏ひし人に春の風邪
春の風邪二人仲良く夫婦かな
微熱にも染まる桜の気配あり
春の風邪誰にも言はず気付かれず
流し目の春の風邪引くいい男
おくれ毛がひねもす嬲る春の風邪
春の風邪パステル調の模様替へ
春の風邪元の木阿弥彼を呼ぶ
目覚めればまたもわたくし春の風邪
春の風邪麻婆茄子で治りさう
陰性の侮りきれぬ春の風邪
春の風邪喉に残りて寡黙夫
春の風邪地図を片手に歩きをり
風単衣はおりて春の風邪もやう