兼題「若葉」__金曜俳句への投句一覧
(4月25日号掲載=3月31日締切)
2025年4月16日3:58PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
春に芽吹いた木々が5月ごろになると新しい葉を広げてゆきます。美しいですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年4月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【若葉】
やはらかき影や日の斑や若葉風
交番の前に集合若葉雨
若葉雨名もなき村を歩きをり
消防署の点呼の声や若葉風
ニュースーツ出会う若葉の遊歩道
風立ちて若葉の光あふれ散る
若葉して墨田の川の古刹かな
茶種忘れ柿若葉かな古木かな
若葉してロダンの像の思慮新た
若葉風俳句講座にまた通ふ
夜風荒る若葉の眠りなほ深し
若葉光祖の眠る丘いかにせむ
青春の匂へるやうな若葉かな
退院しすべて若葉になりにけり
欅並木若葉中道渋滞中
初若葉上着を脱げば寒き風
解剖体慰霊法要若葉風
撃たれたる鳥の血を受く若葉かな
猿跳んで若葉の木々を揺らしけり
山風呂の股をくぐれる若葉風
女学生集う若葉の御苑かな
牛の耳ぷるると震へ若葉風
月欠ける音の密かに若葉雨
一葉のみ道に落ち来し若葉かな
誠実に暮らしています蔦若葉
暮れるほど風甘くなる若葉かな
若葉して窓干すごとく日当たれり
われを守る氏神さまの樟若葉
木洩れ日の葉裏に透ける柿若葉
いくら枝振っても落ちぬ若葉かな
硝子戸に店の名かすれ若葉雨
命あることのしみじみ若葉風
全身を洗われるごと山若葉
ひかり射し若葉ふたたび戦かな
雪解けに出会い若葉のころ別る
若葉風末盧国から伊都国へ
若葉目に復員船の伯父迎ふ
去年蔦の中に光の蔦若葉
ふるさとに父母いるような若葉風
若葉風目深にカラーガード隊
窓開くる列車に通る若葉風
若葉には汚れ無き身の娘あり
新しきインクの一字若葉風
若葉時サーカスと来し転校生
ここよりは木曽路若葉の雨上がる
嘘つけぬ光ありけり柿若葉
どうしても若葉を摘まむ人の性
みちのくの欅若葉となりにけり
雨粒のふくらんでゐて若葉かな
焼跡に残る双樹へ若葉雨
金髪のレンタル着物町若葉
若葉雨一方的に待たさるる
あなたとも笑顔はいつも若葉です
山裾で花梨若葉は瑞々し
人生の憩いの時間若葉かな
外歩き誘ひて光る若葉風
若葉みな墨に沈んで蝙蝠来
若葉雨父の手入れの鋤光る
若葉生ふ隣家に停まる救急車
夜行バス若葉の首都に突つ込みぬ
この先は集落ひとつ若葉かな
沢音の絶えて若葉の岨づたひ
御射鹿池水面の若葉やシャター音
若葉風背広以外も似合ふのね
若葉して造船の音昇りけり
若葉いづけふもきのふもまぼろしや
若葉して父に合わせる歩幅かな
若葉風漕げど進まぬバイシクル
厩舎まで満つ楠若葉の放香
若葉から力をもらうかろうじて
歯科に行く道工事中若葉雨
傷負ひしかの樟も若葉かな
わかばとは秦野畑にぬめり鳧
キャンパスに若葉の風とラケットと
老犬の影ちらちらと柿若葉
若葉風土の香りのトラクター
みちのくの若葉に呑まれゆく旅路
若葉しておもしろいことないかしら
ゆつたりと腹式呼吸若葉風
若葉して裏山肥り始めけり
若葉して指一本のソロパート
揚げ窓の一枚絵めく若葉風
出社して着席一番若葉かな
頑なに身をしばってる若葉かな
名も知らぬ花よ若葉よ我が恋よ
分校のすでに無人の若葉かな
藤若葉ゆっくり動く乳母車
夫逝きしよりの年月若葉光
横たへる老体梢には若葉
タックルの打ち身いくつか若葉風
寛解日若葉の色に染みにけり
メール打つ若葉薫りし木の下に
濃く淡く若葉の影す石畳
初若葉笑みの奥には何も無き
若葉かな根は地中深くダンスして
呼び捨てに呼び合う頃や若葉風
散り後れ若葉は損の世を生くる
蔦若葉を伝ふ雨粒足元に
朴若葉一本橋は我が身幅
若葉して影のあをさを深めけり
はからずも雨の若葉となりにけり
シルバーの若葉押しあぐ太極拳
若葉たち紺のスーツに身を固め
若葉の名つけてダルマへ目を入れる
お帰りと我を迎える夕若葉
樹間より武者行列や若葉風
ありがとう優しい連絡若葉だね
盲ひれど散歩の犬や夕若葉
高校球児の庭のバリカン若葉晴
神田川土手の古木の若葉かな
魚を焼く厨の外の夕若葉
渓若葉この絶景は教へない
遊歩道若葉の影を手で掬う
母子ともに産院を出て若葉風
それとなく若葉目にするテラス席
目薬ののちの眩しさ若葉かな
若葉風浦の山畑撫で降るる
若葉光汐入川へなだれ込む
磐の上の堂を見当てに若葉山
生い茂る若葉を抜けて大通り
断崖の五百羅漢や若葉影
大地には希望の風向き若葉冷
標識へ多重螺旋の蔦若葉
若葉の香風に運ばれ人癒す
若葉なお埋め尽くせぬ木曽路かな
たちまちに壊れるひかり山若葉
濡れてゐし若葉の碧鮮やかに
菊若葉石を見て居る土は疎らで
しばらくは髪濡らさしめ若葉雨
老境や若葉待つ間のミルクティー
吊り橋に交はすあいさつ谷若葉
色鉛筆ころころ揺れて若葉濃し
若葉にも悩みはあるかこの季節
若葉風異国情緒の学生街
欅若葉ここは幼児の決まり場所
若葉照り母子像の眼は子に注ぐ
右折時に前の若葉を応援す
青銅の騎士に若葉の翳のさす
陽光を優しく揺らす若葉かな
夕若葉眠れば重き背中の子
若葉でもできないこととできること
若葉風テニスラケット薄く持ち
区画整理図 若葉の森を貫きて
老人のスニーカー行く若葉風
妻の眼球界隈に若葉かな
楢若葉古城に残る暗黒史
銘のなき墓に若葉の蔭優し
若葉の葉見てて安らぐ秋ですね
若葉風大往生といふ知らせ
若葉萌ゆ名札にはまだ名前無く
抱擁のひろげるかいな朴若葉
白鳩もブーケも空へ若葉風
分校の土俵の子らへ若葉の香
簡単に若葉外れてしまひけり
始まりの若葉はいつもあなたです
山若葉ラインズマンの転びけり
病室の窓より見ゆる若葉かな
谷若葉せり上がり来る橋の上
パスからの母校煙りて若葉雨
キヤンパスを自転車抜ける蔦若葉
若葉行く車イス押す散歩道
若葉吹く風に意味などなかりけり
若葉雨木の葉に玉が光る道
明日へと若葉の道を踏み出しぬ
若葉寒工事フェンスの拡がりぬ
こぐま亭特製若葉サラダ食む
老僧に檀家の若葉眩しけり
活き活きと少年匂ふ若葉して
葉より励まし受くる学ぶこと
白スニーカー若葉の野を走り去る
若葉寒一献今宵も一人酒
仙台の青葉通の若葉かな
足もとも軽く弾むや若葉風
枝伸びて若葉びっしり先までも
せせらぎの音まさりたる若葉かな
屋根葺きの内談すすむ若葉雲
若葉冷ゆひとの声なき寺の庭
老いてなほ札所巡りや若葉栄ゆ
予報士の示す指先若葉かな
青空の透けてみえたる若葉かな
若葉さん清々しさを身に纏い
若葉生え町全体をはずませる
全山が若葉の寺に結願す
若葉萌え山が膨れるひとまわり
鬘にもカットシャンプー若葉風
若葉風猫の足形残りけり
山裾まで若葉の囁き届きをり
老いた身に魔法をかける風若葉
表札のなき家多し柿若葉
谷山を埋めて広がる若葉かな
溢れない掛け流し湯に浮く若葉
門前にかめ屋うさぎ屋若葉風
蠢いてみな痛さうな若葉の芽
舌絡め麒麟若葉を反芻し
旅の宿青葉若葉の窓全開
若葉より若葉へうつる光かな
風の来て若葉光らせ消えにけり
肺腑初むる為に登れる若葉山
若葉風少しは黙れ女学生
ゆらゆらと水と流れる若葉かな
若葉萌ゆ見えぬはずなる風の色
色の名の単語帳繰る山若葉
まわりにはフォトフレームの若葉かな
ガーリックソテー若葉に澱みなく
若葉光川の流れに高低差
物干に真白のシーツ若葉風
若葉風ひかりの粒を撒くごとく
黄昏を二階に待ちて若葉風
若葉して瓦の黒き生家かな
若葉光つたふ雫の軽ろく落つ
多羅葉の若葉の裏にスキと書く
若葉風村の郵便自転車で
銭湯の出口で待てる若葉雨
二年目の挨拶受けし若葉かな
七曜だけ景色若葉に染まる頃
いつもはね知らないけれど若葉だね
ともすると夜の若葉の恐ろしく
求職中若葉の下で腰伸ばす
そら色の歴史教科書若葉風
若葉見ゆおのの若葉の何処なり
唇に若葉を当てて恋の歌
カデンツアから始まるピアノ蔦若葉
若葉風アジりに型のありにけり
口笛のふつと止みたる若葉かな
公園に放ちたる子や若葉風
主居ぬ書斎に今も若葉風
若葉萌え空のヒバリの声高し
輝きしカーブミラーや若葉光
マイナスの心地上書きして若葉
甚だに身軽な老婆谷若葉
山道の踏み固められ若葉かな
転生は欅こそ良し若葉風
若葉山越えたる先も若葉山