きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

◆安倍首相の求める国家像や国民像は矛盾だらけ◆

<北村肇の「多角多面」(110)>
 安倍晋三首相の「期待する人間像」はこんな感じだろうか。
▼お国のためなら命も捧げる。つまり「個」より「公」を重視する。
▼天皇を尊崇し、日の丸・君が代を大事にする。
▼国家、両親特に父親に忠誠をつくす。
▼日本民族が世界に冠たる民族であることを忘れない。当然、先の大戦は侵略戦争ではなくアジア解放の聖戦であることをしっかりと認識する。

 まだ考えつくが、気持ち悪くなったのでここまでにしておく。いずれにしても、かような国民をつくるためには、お上の命令をきちんと実践する子どもの養成が欠かせない。要は「右向け右」教育の強化である。小さなうちからたたき込めば、個人の権利を剥奪し国民の義務を押しつけても反旗を翻す国民は出ない、ということだ。そこで素朴な疑問が沸いてくる。「国家統制」という観点からみるならば、安倍首相の理想は、同氏が敵視する中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)になってしまう。「自由、民主主義、基本的人権といった価値観を共有する国との関係を深める」という価値観外交を強調してきた安倍首相。そのあたりの整合性をどう図るつもりなのか。

 この矛盾はかなりの危険性をはらむ。何故なら、中国や北朝鮮が日本を同一路線の国とみなすことがあれば、戦争の危機が高まるからだ。上からの国家統制や国民統合を追求するとき、他国との衝突は決して負の選択とはならない。「相手も同様」なら戦争に踏み切る敷居が低くなるのだ。

 日本対中国あるいは北朝鮮は、資本主義対共産主義という構図ではない。むしろ、このままいくと、絶対主義国家同士の争いに発展する可能性がある。何しろ、国防軍を始めとして安倍首相の出すメッセージは、「アジアにおいて日本は覇権国家を目指します」というサインにしかみえない。むろん、背後には米国がいるので、「アジアにおいて日本は米国の下請けとしての覇権国家とします」が正確な表現だ。

 アルジェリア事件で政府の対応はいかにも心許なかった。おそらくは米国の指示や指導がなかったのであろう。同国自体が態度を決めかねていたからだ。その米国はかつて、安倍氏が「従軍慰安婦」問題などで歴史修正主義的発言をした際、強く反発した。米国はあくまでも日本を自国の主権下に置きたいわけで、突出した国粋主義を認めるはずもない。米国の属国である限り、安倍タカ派政権の抱える矛盾は解消しない。TPP問題も含め、いろいろな面で同政権に綻びが生じるのはそう遠くないだろう。(2013/1/25)

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)報道の立ち位置

<北村肇の「多角多面」(81)>
 いわゆる「右翼」の人と話す機会は意外に多い。公開での討論もある。そのこと自体を批判されるときもある。でも、誰とでも言葉でやりとりするのがジャーナリストの仕事なので気にはしない。それはそれとして、あるとき右翼の人に真顔で言われた。「『週刊金曜日』は中国から財政的支援を受けているのでしょう」。のけぞった。戦争責任の問題と中国共産党政権への評価は違うと、本誌の具体的な記事をもとに説明した。とりあえず「誤解」は解けた。「左翼雑誌」=「無条件に中国支持」と頭から信じていたようだ。もちろん、こんな「話しのわかる」人ばかりではない。

 北朝鮮に関して、「左翼は無条件に支持している」と故意に喧伝する人たちがいる。「あんなひどい国を支援する左翼はひどい」との構図だ。もちろん、本誌の場合、全面支持の立場をとるはずもない。ただ、意図的で政治的な北朝鮮バッシングを容認するわけにはいかない。何しろ、日本政府は「衛星打ち上げ」の際、まるでミサイル攻撃を受けるかの如くに大騒ぎした。衛星打ち上げ技術がミサイルに転用可能なのは事実だ。だが、弾頭に「衛星」(仮に玩具のようなものであれ)を積んであれば、それをミサイルとは言わない。

 もっと異様なのが高校授業料無料化や補助金の問題。朝鮮学校に対する政治的嫌がらせそのものだ。子どもたちを外交問題に巻き込むのは許し難い。こうした主張に対して「拉致も認めるのか」という言葉が返ってくる。まるで次元が違う。拉致はとんでもない国家犯罪だ。許せるはずがない。しかし、横田滋さん、早紀江さんも指摘しているように「教育は教育の問題。拉致とは別問題」なのだ。(本誌6月15日号参照)。

 核開発に関していえば、北朝鮮でもイランでも許容できることではない。これについては逆に左派の人から、米国を始めとした核大国との「二重基準」はどうなるのかと詰められることがある。論理展開がおかしい。あくまでも、目的は地球上からすべての核をなくすことだ。現保有国に廃棄させることと、これ以上の核保有国をつくらせないことは矛盾するものではない。かつて、一部で唱えられたような「米国の核は汚い、ソ連、中国の核はきれい」のような間違いを犯してはならない。
 
 強者と弱者がいれば、ジャーナリストは常に弱者に寄り添うべきだ。だから、米国と北朝鮮なら北朝鮮の側に立ってものをみる。しかし、それは黒を白と言いくるめる姿勢ではない。あくまでも事実に基づき客観的に判断するのが当然だ。また、例外なく為政者は強者、市民は弱者である。その意味で、「金王朝」や「中国共産党」は批判・監視の対象である。どんな報道においても、この立ち位置は変わりようがない。(2012/6/15)

菅首相、いまこそ平和外交に立ち上がりなさい

<「北村肇の多角多面」9>

 なんで、こういつも絶妙なタイミングなのか。「風が吹けば桶屋がもうかる」ではないが、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が世情を賑わすたびに、日本の保守派(特に日米同盟堅持派)に利益がころがりこむ。おそらく沖縄県知事選にも影響を与えたであろうし、近く出される防衛大綱の議論にも響くはずだ。武器輸出三原則の見直しが進んでしまうかもしれない。

 さらにイライラするのは、「武力には武力を」という態度が真っ当なものとされかねないことだ。北朝鮮の行為を容認することはできない。しかし、それを引き起こした「原因」についても目を向ける必要がある。自国領土から肉眼で見える海上で軍事訓練を展開される気分はどうなのか。韓国政府もまた「力」を誇示していたという事実を見逃すべきではない。とどのつまり、朝鮮戦争を終結しない限り、緊張関係の解消はありえないのだ。そして、その解決の手段を「武力」に頼るべきではない。

 米国は砲撃事件を受け、直ちに韓国との合同訓練を実施した。これは同国にとって渡りの船だ。中国の南シナ海への進出に対し、米国は苦虫をかんできた。黄海(西海)での米韓合同訓練を何度か試みたものの、そのつど中国の猛反撃にあい断念してきた。だが、今回ばかりは格好の大義名分が出来たのだ。全長333メートルの原子力空母「ジョージ・ワシントン」は北朝鮮を威嚇しただけではない。中国に対する強烈なメッセージである。

 さらに見落としてはならないのが、同空母は横須賀から出航したという現実だ。日本は確実に、未だ休戦状態である朝鮮半島の緊張関係に当事者として関わっている。そのことが明々白々になったのである。

 すでにマスコミは「ますます日米同盟が重要」という論調で報じている。日米同盟とはすなわち、日米軍事同盟のことだ。対中国戦略の一環として日本列島の米軍基地化は一層、進み、思いやり予算どころではない多額の税金が「米軍再編」に注がれるだろう。

 さて、日本はどうするのか。今こそ、憲法9条を活かさない手はない。米国型武力外交とは真逆の日本型平和外交を確立するのである。民主党政権にとって、こんな絶好の機会はない。武器輸出三原則の見直しなどとバカなことを言わずに「自分たちは自民党政権とは違う。憲法に基づき仲裁外交を目指す」と宣言べきだ。菅直人首相に言いたい。もっと市民を信頼しなさい。あなたが平和外交に立ち上がれば、多くの人間がともに立ち上がり、支えますよ。(2010/12/2)

【ざっくりメディリテ講座  『産経新聞』編】 一面トップで報じたニュースを事実とも誤報とも認めずっておかしくないすか?

2月17日付『産経新聞』1面。

反共、反北という色が明確な『産経新聞』。その目的にあった記事を取材、報道しており、それは価値観の自由ですから批判するつもりはありません。他メディアの逆張りを行なって『産経新聞』だけが正しいということもたまにありますしね。だが、事実無根はまずい。

『産経新聞』当該記事の詳細は下記のリンクを参照していただきたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100217/stt1002170131000-n1.htm

 

そこで、同社広報部に質問をしてみました・・・・・・・。

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