◆安倍首相の求める国家像や国民像は矛盾だらけ◆
2013年1月23日3:14PM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<北村肇の「多角多面」(110)>
安倍晋三首相の「期待する人間像」はこんな感じだろうか。
▼お国のためなら命も捧げる。つまり「個」より「公」を重視する。
▼天皇を尊崇し、日の丸・君が代を大事にする。
▼国家、両親特に父親に忠誠をつくす。
▼日本民族が世界に冠たる民族であることを忘れない。当然、先の大戦は侵略戦争ではなくアジア解放の聖戦であることをしっかりと認識する。
まだ考えつくが、気持ち悪くなったのでここまでにしておく。いずれにしても、かような国民をつくるためには、お上の命令をきちんと実践する子どもの養成が欠かせない。要は「右向け右」教育の強化である。小さなうちからたたき込めば、個人の権利を剥奪し国民の義務を押しつけても反旗を翻す国民は出ない、ということだ。そこで素朴な疑問が沸いてくる。「国家統制」という観点からみるならば、安倍首相の理想は、同氏が敵視する中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)になってしまう。「自由、民主主義、基本的人権といった価値観を共有する国との関係を深める」という価値観外交を強調してきた安倍首相。そのあたりの整合性をどう図るつもりなのか。
この矛盾はかなりの危険性をはらむ。何故なら、中国や北朝鮮が日本を同一路線の国とみなすことがあれば、戦争の危機が高まるからだ。上からの国家統制や国民統合を追求するとき、他国との衝突は決して負の選択とはならない。「相手も同様」なら戦争に踏み切る敷居が低くなるのだ。
日本対中国あるいは北朝鮮は、資本主義対共産主義という構図ではない。むしろ、このままいくと、絶対主義国家同士の争いに発展する可能性がある。何しろ、国防軍を始めとして安倍首相の出すメッセージは、「アジアにおいて日本は覇権国家を目指します」というサインにしかみえない。むろん、背後には米国がいるので、「アジアにおいて日本は米国の下請けとしての覇権国家とします」が正確な表現だ。
アルジェリア事件で政府の対応はいかにも心許なかった。おそらくは米国の指示や指導がなかったのであろう。同国自体が態度を決めかねていたからだ。その米国はかつて、安倍氏が「従軍慰安婦」問題などで歴史修正主義的発言をした際、強く反発した。米国はあくまでも日本を自国の主権下に置きたいわけで、突出した国粋主義を認めるはずもない。米国の属国である限り、安倍タカ派政権の抱える矛盾は解消しない。TPP問題も含め、いろいろな面で同政権に綻びが生じるのはそう遠くないだろう。(2013/1/25)