◆新しい社会、新しい国づくりの年になる2013年◆
2012年12月19日4:10PM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<北村肇の「多角多面」(107)>
◆新しい社会、新しい国づくりの年になる2013年◆
戦争を望む人間がいるだろうか。孤立死を望む人間がいるだろうか。放射性物質による汚染を望む人間がいるだろうか。仮にいたとしても、砂丘に落ちた一本のピン程度だろう。なのに、多数の有権者が、憲法9条廃止、増税路線、原発容認の政党を選択した。
前回も述べたが、当たり前と思ってきた議会制民主主義や政党政治が崩壊しつつある。この冷厳な事実を受け入れるしかない。それが、今回の総選挙における、議席数とは別の「結果」である。そもそも選挙自体が違憲だった。最高裁は昨年3月、1票の格差は違憲状態と判断した。なのに、1年9カ月も放置した上で、野田佳彦前首相は解散に踏み切った。自民、公明も違憲状態お構いなしに解散を迫った。三権の一角である立法府が司法権を踏みにじったのである。民主主義の否定といってもいい暴挙だ。
一方、政党政治もまた陽炎のごとき姿をさらしている。民主党大敗の理由の一つは、「烏合の衆が集まった」ことへの批判だ。個別の政策について意見が割れるのは当然である。しかし、たとえば「コンクリートから人へ」という政権獲得時の大方針に反旗を翻す議員が、それも野田氏を筆頭に幹部議員から大量に出たのでは、これを政党とは言わない。
自民党も同様である。いまや多くの有権者が疑問とも思わなくなっているようだが、公明党との連立は本来、ありえない。片や国防軍をつくろうと党首が叫ぶ党、片や「平和」を根底に据えた党。水と油の政党が手を結べるのは、政党の目的が「政権奪取」にしかないことを露骨に示している。
かような「哲学」なき政治に対し、私たちはなす術がないのだろうか。そんなことはない。今回の投票率は史上最低の59.32%。棄権者は約4200万人に達する。私は、この大半は積極的棄権とみている。無関心ゆえの消極的棄権ではない。熟考の上、あまりのことに投票先を決められなかった、考えれば考えるほど、どの政党、どの候補者に託していいかわからなかった。この「考え」「悩んだ」末の棄権票はこの先、どこに向かうのか。
わずか20%の支持しかない自民党が政権をとった。ひずみは遠からず露呈するはずだ。そして、その時は「考え」「悩んだ」有権者が立ち上がる。福島原発事故以降、全国で生まれたデモや集会。そこに参加した、あるいはエールを送った彼ら/彼女らがじっくりと熟成した思いが実を結ぶのだ。この国を救うのは、覚醒し、自分の足で大地を踏みしめる自立した市民。つまり私たちひとりひとりの意志と情熱である。2013年を新しい社会、新しい国づくりの年にしなくてはならない。(2012/12/21)