きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

新聞社に抗議を連発する財務省の思惑

<北村肇の「多角多面」(78)>
 財務省のホームページにいき「広報」に入ると、『朝日新聞』と『東京新聞』の記事に対する抗議文がアップされている。『東京』への抗議理由を見てみよう。

 東京新聞(平成24年4月11日付け朝刊)において、「『チーム仙谷』再稼動主導」と題して、「オール霞が関、後押し」との記事が掲載されています。~「財務省の勝栄二郎事務次官も野田首相に直接、再稼動を働きかけている。」との記載がありますが、そのような事実は一切ありません。また、当事者である当省は一切取材を受けておりません。本件記事に関して、4月13日付けで~厳重に抗議するとともに、内容の訂正など然るべき対応を求めました。~東京新聞政治部長から、取材には自信があり、訂正をする考えはないとの回答がありました。~誠に遺憾であり、早急に内容の訂正など然るべき対応を講じることを、改めて強く求めました。

『朝日』への抗議でも「『鳩山は総選挙直前、実は財務省の事務次官だった丹呉泰健や、主計局長だった勝栄二郎らとひそかに接触を重ねていた。』との記載がありますが、接触を重ねていたという事実はありません」と勝事務次官の名前が出てくる。勝氏は歴代事務次官の中でも図抜けて優秀と言われる。どうやら財務省は、このエース中のエースに関するスキャンダルにピリピリしているようだ。言うまでもなく、消費税率アップの実現は勝次官の双肩にかかっている。

 ここ数年、省庁がマスメディアに対して異議申し立てを行なう事例が目立つ。もちろん、事実と異なる報道があれば指摘するのは当然だし、抗議内容が正しければ新聞社は直ちに訂正などの対応をしなくてはならない。だが、記者経験者としての直感では、今回の財務省の抗議にはたぶんに「脅し」の匂いを感じる。それは両紙に向けてだけではない。他紙に対しても、「同じようなことのないように」とクギをさしているようにみえるのだ。『東京』『朝日』には、ひるむことのない、さらに徹底した取材を望む。ぜひ、財務省にぐうの音も言わせないネタをつかみ、報じてほしい。

 気になるのは他紙の動向だ。「権力の監視・批判」を責務とする報道機関として、まずは財務省の対応に疑問をもつのは当然だろう。だが、『東京』『朝日』を支援しようという雰囲気は感じられない。記者クラブの既得権を守る闘いでは足並みをそろえるのに、対権力となると、今度は自社のことしか考えないのだろうか。ちなみに、財務相の安住淳氏は『NHK』、副大臣の五十嵐文彦氏は『時事通信』出身である。だからどうっていうわけではない。何かを二人に期待したところで虚しくなるばかりだから。(2012/5/25)

石原都知事の名指し攻撃になぜかおとなしい『朝日新聞』

                                         
 石原慎太郎・東京都知事の記者会見の内容を、東京都のホームページが「正確に反映していない」ことを前回のブログ「石原都知事の発言を正確に伝えない東京都ホームページの不思議」で指摘しました。

 南京大虐殺めぐって石原都知事は、「昔、本多勝一ってバカがいたんだよ、『朝日新聞』の」と2月24日の会見で話しているのですが、都のホームページにある「都知事の部屋」(http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/index.htm)では、「昔、本多勝一(ジャーナリスト)というやつがいたんだよ」となっている問題です。

 この発言に続けて石原都知事は次のように話しています。
「結局、彼は最後に修正したけど、南京の占領の間だけで40万の人を殺せるわけがない」

 小誌連載「貧困なる精神――石原慎太郎東京都知事に訂正・謝罪を求める」で本多勝一編集委員が指摘しているように、本多編集委員は『朝日記者』時代もその後も「40万人説」を唱えたことはありません。そして、唱えていないのだから、もちろん「修正した」こともありません。

 では、当の朝日新聞社はこの石原都知事の「ウソ」発言についてどのように考えているのでしょうか。そこで下記の質問状を朝日新聞社に送りました。

(ここから引用)
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「南京大虐殺」について石原都知事が次のような発言をしています。

「昔、本多勝一ってバカがいたんだよ、『朝日新聞』の。結局彼は最後に修正したけどね。あんな南京占領の間に40万人を殺せるわけはないんだ」(2月24日)、
「彼の論では40万人もの虐殺という数字が論拠がないものだからね」、(本多氏は人数を書いていないという指摘に)「『朝日』も書いて、あちこちで書いている」(3月2日)。
 
  そこで次のことをお聞きします。

1)本多勝一氏の記事(見解)、もしくは別の朝日新聞記者の記事(見解)として、いわゆる「南京大虐殺」の死者(犠牲者)が40万人とする記事を掲載したことがありますか。

2)いわゆる「南京大虐殺」の死者数についてはどのような掲載をしていますか。

3)『朝日新聞』が犠牲者数を40万人とする記事を掲載していないとすれば、石原都知事の記者会見での発言は事実と異なると考えてよろしいでしょうか。

4)都知事の記者会見はインターネットやテレビなどで生中継され、また録画視聴が可能です。石原都知事の発言が「虚偽」だとしたら、訂正の申し入れなど貴社としてなんらかの対応を取られるお考えはありますか。また、すでになんらかの対応を取られている場合は、その内容をお教え下さい。
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(引用ここまで)

 続いて朝日新聞社広報部からの回答を掲載します。

(ここから引用)
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 いただいたご質問の「1」から「4」についてまとめてお答えします。

 南京事件での死者数について、朝日新聞はこれまで、様々な説があることを報じてきました。なお、お尋ねの件に限らず、個々の記者会見の内容について、紙面などで報じる以外に論評することは差し控えます。

回答は以上です。よろしくお願いいたします。
                               草々
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(引用ここまで)

 では『朝日新聞』は、今回の石原発言をどのように「紙面などで報じ」ているのでしょうか。私がさがした範囲では2月25日(土)の第3社会面に2段見出しで次のように報道している1本(写真参照)だけでした。河村たかし名古屋市長発言とその波紋については詳報し、3月8日には社説「河村市長発言 日中の大局を忘れるな」を掲載しているのと比べ、極端に扱いが少ないようにみえます。では、その記事の内容を見てみましょう。

(ここから引用)
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河村市長の南京発言、石原都知事「正しい」

 東京都の石原慎太郎知事は24日の会見で、名古屋市の河村たかし市長が南京虐殺を否定する発言をしたことについて「正しい。彼を弁護したい」と述べた。

 石原知事は、南京陥落の数日後に現地に入った評論家らから聞いた話として、「死体はあったけど、山と積むような死体は見たことがなかった」と指摘。「相手も無抵抗に近かっただろうけど、あれだけの(旧日本軍の)装備、期間で40万の人を物理的に絶対殺せっこない」と話した。

 石原知事は衆院議員時代の90年に米誌のインタビューで南京虐殺を「中国人が作り上げたうそだ」と発言している。
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(引用ここまで)

 いやぁ、驚きました。善意に解釈すると「南京大虐殺があったことを前提としているので石原発言の紹介だけでよい」と考えているのかもしれませんが、『朝日新聞』が攻撃されているのに、あまりにも及び腰だと感じるのは私だけでしょうか。

石原都知事の発言を正確に伝えない東京都ホームページの不思議

記者会見する石原慎太郎都知事
記者会見する石原慎太郎都知事

 石原慎太郎・東京都知事の記者会見は原則として毎週金曜日午後3時から都庁の会見場で開かれます。会見はインターネットで生中継されます。そして都のホームページにある「都知事の部屋」(http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/index.htm)の「過去会見」欄に「録画映像」とそれを”文字起こしした”「テキスト版」が掲載されます。この「テキスト版」が都知事の発言を正確には反映していないことをご存じでしょうか。

 たとえば2012年2月24日の会見。「テキスト版」では南京大虐殺をめぐって下記のような質疑があったと掲載されています。
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2012/120224.htm


(ここから引用)
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【記者】先日、愛知県の市長が問題発言というか。


【知事】南京ね。あれは、河村(たかし)君の言うことが正しいと思います。色々な問題があるんだけど、昔、本多勝一(ジャーナリスト)というやつがいたんだよ。結局、彼は最後に修正したけど、南京の占領の間だけで40万の人を殺せるわけがない。あの時、陥落した2日後か3日後に、大宅壮一と石川達雄と林芙美子という、代表的な日本の識者が報道班員で入っているんです。林さんは、私はあまり親しくなかった、すれ違いで亡くなっちゃったんだけども、石川達雄というのはどちらかというと反体制的な人でしょう。大宅壮一だって非常に、シビアな評論家でしたよ。この人たちに聞いたら、「死体はあったけれど、山と積むような死体なんか見たことない。あれはけげんな話だな」と言っていました、彼らの滞在中も。本多君は、広州湾に上陸してから、南京に攻め込むまで40万人、中国側で被害が出たというけど、これもちょっと数字としてまゆつばなんだけど、少なくとも、あれだけの装備しかない日本軍が、敗れて、残った連中だから、無抵抗に近かっただろうけれども、あれだけの期間に40万の人なんて殺せるわけ、絶対にない、物理的に。それだけはっきりしておきたい。ただ、ああいう戦争のどさくさですから、無辜(むこ)な人を殺した数字もあったかもしれない。しかし、それをもって、大虐殺という、その裏打ちで40万人と推算されるのは、私は心外だと思うし、違うと思いますね。さんざん我々は検証してきたんだから。河村というのは、私の後輩で粗暴な男だから、何の根拠があってそう言ったかは知らないけれども、私は、それについては彼を弁護したいね。はい。
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(引用ここまで)


 ところが、「録画映像」では、このようなやりとりなのです。(文字起こしは小誌編集部、違っている主な部分を【】で強調しました)


(ここから引用)
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(前略)昔、本多勝一って【バカ】がいたんだよ、【『朝日新聞』の】。(中略)
【シナ】側で被害が出たと言うけれど(後略)
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(引用ここまで)


 作家の「石川達三」氏が、「石川達雄」になっているのはおそらく単純な間違いでしょう。
 さて、石原都知事発言の問題点については、本多勝一・本誌編集委員が連載「貧困なる精神」で批判を続けているので、ここでは別の問題を取り上げます。
 そもそも都のHPは都知事発言を「正確に記録する」べきではないでしょうか。そこで下記の質問を東京都知事本局に送りました。


(ここから引用)
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1)知事会見の「テキスト版」では、知事の発言を忠実に記録し、公開する必要があるとお考えでしょうか。
2)知事の発言の一部を修正したり、省略したりして「テキスト版」を掲載することは、「都民の知る権利」に応える観点から許されるとお考えでしょうか。
3)「許される」とお考えの場合、どういう事例、どのような理由によって可能なのか具体的にお教え下さい。
4)2月24日の会見で、石原都知事は「昔、本多勝一ってバカがいたんだよ、『朝日新聞』の」「シナ側で被害が出たというけど」と発言されています。これがテキスト版では「昔、本多勝一(ジャーナリスト)というやつがいたんだよ」「中国側で……」となっております。「バカ」を「やつ」に、「シナ」を「中国」に変えた理由と、『朝日新聞』を省略した理由について具体的にお教え下さい。
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(引用ここまで)


 この質問に対する東京都の回答が届いたので以下に全文を公開します。


(ここから引用)
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 定例記者会見については、会見終了後速やかに、会見映像をそのまま東京都ホームページに掲載しております。定例記者会見のテキスト版は、この会見映像に加えて、広く都民の皆様に、会見内容を分かりやすく伝えるため、掲載しているものです。
 その際、文章として読みやすくするため、話し言葉や俗語、一般的でない分かりにくい言葉などについて、文脈を損なわない範囲内で、文言修正や補足説明を行っております。
 また、特定の会社・団体等に何らかの影響を及ぼすことが想定される恐れがある場合、文脈を損なわない範囲内で、具体的な会社名・団体名を削除しております。
 お尋ねの2月24日の会見分についても、同様の考え方に基づき、文言修正等を行っております。
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(引用ここまで)


 つまり、「バカ」「朝日新聞」「シナ」という石原都知事の発言は、東京都によると、「話し言葉や俗語、一般的でない分かりにくい言葉」であるか、「特定の会社・団体等に何らかの影響を及ぼすことが想定される恐れがある」ので「文言修正」した、ということなのでしょうね。石原都知事発言を東京都職員がどのように判断しているかが浮かび上がったのではないでしょうか。

[この国のゆくえ17……歴史をつくるのは市民の運動だ]

「原子力の父」と呼ばれた正力松太郎氏。弱小新聞だった『読売新聞』を買い取り、『朝日新聞』、『毎日新聞』と並ぶ三大紙に巨大化させ、さらには『日本テレビ』を立ち上げたメディア王でもある。彼の目指すところは総理の椅子にあった。米国CIA(中央情報局)との深い関係を使い、「原子力発電」をそのための“道具”にしようと目論んだのである。

 一方、米国は、日本を“反共の砦”とするため核兵器持ち込みを急いでいた。そのための心理戦――「原子力の平和利用」をアピールすることで「核アレルギー」を払拭する――に躍起だった。ところが、1954年に「第五福竜丸事件」が発生、ビキニ環礁の水爆実験で被曝した無線長の久保山愛吉氏が亡くなったことで、日本中に反核運動が広まった。「この流れを断ち切るにはメディア利用が欠かせない」と考えた米国は、正力氏との関係を強化。かくして、『読売』は「原子力の平和利用」キャンペーンに一層、力を注いだ。

 上述の史実は、米国の機密文書開示により明らかになったことだ。結局、『読売』を使った米国の心理戦は大成功を収め、原子力発電は「夢のエネルギー」としてもてはやされ、市民の間に定着していく。膨大な予算が注ぎ込まれることで、原発は“カネのなる木”となり、政・官・財だけではなく、原発立地自治体をも巻き込んでいく。そして、『読売』にとどまらず他のメディアも取り込まれていき、ついには足抜けできないところまでズブズブになっていったのだ。

「3.11」は、これらの闇の歴史を改めて引っ張り出した。米国が、日本人のヒロシマ・ナガサキ体験を薄めるために、「毒(原発)をもって「毒」(核)を制す」戦略をもちいたことも、多くの人が知ることになった。それはまた、日本が依然として米国の占領下にあるという現実をも浮き彫りにした。

 いま、米国や日本政府が恐れているのは、戦後一貫して続いてきた「支配構造」が白日の下にさらされ、崩壊することだ。政府だけではない。財界やマスコミの一部も同様の危機感を抱いているはずだ。彼らも、米国を中心にした支配構造の一翼を担い、甘い蜜を吸ってきたからである。

 第五福竜丸事件の後、東京・杉並区の女性たちを中心に始まった反核運動は、前述のように、巨大なうねりとなり3000万人の署名を集めた。これにより、米国が「無条件の核持ち込み」をあきらめたのも一方の史実だ。市民が立ち上がれば社会は動く。支配構造を変えられる。少数の権力者だけに歴史をつくらせてはいけない。(2011/7/1)

トヨタ自動車が記者会見で指名を逃げた新聞記者?!

2月17日、本日の午後5時からトヨタ自動車の記者会見があり、豊田章男社長と佐々木眞一副社長が出席した。

モータージャーナリストのOさんから緊急メールをもらい知った。一部記者の間では豊田社長の辞任もすでに噂になっているというではないか。これは!と思い、編集部のYと参戦した。

(さらに…)

『朝日新聞』医療記事に神奈川保険医協が抗議

2009年2月27日付『朝日新聞』

2009年2月27日付『朝日新聞』

 

神奈川保険医協会の3月4日付け声明では、2月27日付『朝日新聞』掲載の医療記事を<医療不信を助長する朝日記事「『保険村』」の闇 一知半解ではなく、木鐸たる筆を望む」と題して激烈に批判している。

「一連の記事は、基礎的な事柄の理解を完全に誤り、事実誤認を出発点に論が進められている」「総合性がなく一面的でバランスを欠いており、ある種の悪意が底意として透けてみえる」というのは序の口ですが、簡単に検証してみましょう。 (さらに…)