週刊金曜日 編集後記

1328号

▼5月某日、老親にかわって、高齢者対象の新型コロナのワクチン接種の予約取りにチャレンジ。期待はしていませんでしたが、案の定、全然つながりません。電話をかけたり、予約サイトにアクセスしたりしているうち、1日は終わりました。コンサートチケット争奪戦みたい(笑)。
 いつも思うのですが、申し込みが殺到するのはわかりきっていたことなのですから、このような「申請方式」ではなく、「あなたは○月○日○時に○○でワクチンを接種してください」と通知し、「都合が合わない人や、ワクチンを打ちたくない人は連絡ください」方式にしたらいいんじゃないかと思うのですが、ダメですか? 今の方式だと「申し込んだ人しかワクチンを受けられない」ということになり、それによって人々は焦燥感に駆られ、結果、電話が殺到してしまうのです。
 1年超もコロナに右往左往させられている私たち。行政や政府には、もう少し智恵をつけてほしいです。1年経っても「想定外」が多すぎて、リスク管理ができていないのはどっち?(渡辺妙子)

▼IOC・バッハ会長の来日見送りの報には呆れた。「負担をおかけする」(橋本聖子東京五輪組織委会長)からと言うが、緊急事態宣言の期間延長が決まった途端だ。17日間という当初の短い宣言期間はバッハの来日に合わせたから、といった大方の批判が図星だったことを逆に証明したようなものだ。
 新型コロナの感染拡大対策を二の次にしてまで五輪の開催を優先させる日本政府は、まん延防止等重点措置を5月9日から適用した北海道・札幌でも市民の不安を無視して5日、マラソンのテスト大会を強行した。このままでは、「人類が新型コロナに打ち勝った証」(菅義偉首相)とする東京五輪は「人類が生命より五輪を優先した証」として歴史に刻まれよう。
 本号「風速計」で東京五輪開催中止を訴えている本誌編集委員の宇都宮健児弁護士が、5日から開始したオンライン署名「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」は、9日には早くも30万人を超えた。詳しくは以下を参照ください。URL・https://utsunomiyakenji.jp/stoptokyoolympic/(山村清二)

▼46歳で大学院に入学した私は59歳の今も奨学金を返している。月額8000円の返済は、あと3年4カ月続く。大学院の修士課程2年時に奨学金を借りた。修士論文を書くためにアルバイトをセーブしなければならなかったからだ。奨学金は学費や研究費、生活費などに使った。バイトをしない分を研究時間に割けたおかげで、修士の学位も取得できた。奨学金制度には感謝している。しかし、博士課程に進んだ際には奨学金を借りるのをやめた。これ以上借金をする自信がなかったからだ。それでも幸い学費の半額免除制度が利用でき、博士課程の学生への給付金ももらえたので、博士論文を仕上げ、学位も取得した。博論をもとにした新書も出版し、『週刊金曜日』編集部で働かせてもらっているから、奨学金も返済していける。しかし、大学や大学院修了後に就職が決まっていなければ、どうやって返済していったらいいのか。さらにコロナ禍でバイトの収入が減り、日々の生活にも困る学生たちが増えている。本誌4月2日号の奨学生の特集を読んで、事態の深刻さに愕然としている。(文聖姫)

▼3年間、新刊書籍を発行していないので、現在の単行本売り上げは既刊本によるものです。これらは出荷と返品の増減を繰り返しながら在庫僅少になった際、商品特性と市場在庫等を鑑みながら終息させるか、重版をして継続販売していくかの決断をしています。
 今回、2006年8月に発行した『この日、集合。』を重版することにしました。同年5月3日、井上ひさしさん、永六輔さん、小沢昭一さんの3人で東京・紀伊國屋ホールに、とりあえず集まったイベント名が「この日、集合。」。本書は当日の模様をまとめた一冊です。すでに3刷を重ねているロングセラーですが、各種集会では良く売れるものの、書店では着実な売り上げに留まるため、コロナ禍で販売機会が減っているなか、その判断に少し悩みました。ただ平和への思いを自由に語る亡き3人の言葉は、15年を経ても色あせることなく、さらに悪化した時代状況の下、積極的に売るべき商品だと思いました。来月、定期購読に書籍の申込用紙を同封しますのでご利用ください。(町田明穂)