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笹川財団の名誉毀損提訴――仏政治学者の勝訴確定
2011年2月14日7:45PM
A級戦犯容疑者であった笹川良一氏が設立した笹川日仏財団が、フランスの政治学者カロリーヌ・ポステル=ヴィネイ氏を名誉毀損で訴えていた裁判で、笹川財団が二〇一〇年九月の敗訴後、控訴期限であった同年一二月二二日までに不服申立てをしなかったことで、財団側の敗訴が確定した。
訴訟の発端は〇八年一二月、フランス国際関係研究所(IFRI)が笹川日仏財団の資金援助によって行なった日仏外交一五〇周年を記念する学術会議だった。この会議について、日本および東アジアを専門とする学者五〇人余りが、「かつてA級戦犯として逮捕された笹川良一が関係する団体が後援する会議に、(フランス)外務省が関与すべきでない」と、嘆願書を発表。それを受けて同省は独自に笹川日仏財団を調査し、後援を取り消した。
ところが同財団は〇九年三月、署名運動を進めた学者の一人であるポステル = ヴィネイ研究員を名誉毀損で提訴し、巨額の損害賠償を請求した。こうした財団の反応に対し、フランス国内の学術研究団体らはいっせいに批判の声をあげ、彼女を支援する国際的な支援運動を展開。その結果、五八〇人の署名が集まった。
翌一〇年九月、パリ裁判所は財団の全ての請求を却下し、訴訟手続き費用と弁護費用の支払いを命じた。同財団について判決文には「アジアを専門とする国際関係の研究指導者が他の人々に働きかけて、(中略)当シンポジウムの主要賛助団体が日本の歴史において特に論争の的となっている人物の名を冠した財団であることに注意を促すことは正当なことであり、フランスでは一般にあまり知られているとは言えない当財団とその人物について情報を提供することが同様に正当であった」と明記されている。
この判決を認めたくない財団側は、「危機管理コミュニケーション」を専門とするコンサルタント事務所を通して、訴訟が財団の勝利で終わったという(判決文の内容とまったく異なる)声明を流したが、財団は結局、控訴申し立てを諦めた。
(本誌編集部、2月4日号)