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福島原発事故の第2次刑事告訴・告発状に1万3千超の人々――検察は政府関係者も聴取へ

2012年12月6日6:13PM

福島地検への告訴・告発状提出には、全国から200人を超える告訴人たちが結集した。(撮影/明石昇二郎)

 一万三二六二人――。一一月一五日に福島地検に提出された第二次の刑事告訴・告発状に名を連ねた人々の数である。

 東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問う集団告訴は、今年六月に先行して行なわれた福島県民による刑事告訴(一三二四人)と合わせ、一万四五八六人分にも達した。一つの事件でこれだけの規模の告訴・告発人が現れるのは、日本の刑事事件史上、むろん例のないことである。

 今回の集団告訴では、北海道をはじめ東北、関東、中部、甲信越、北陸、関西、西日本、九州など、全国から告訴人と告発人が続々と参集。今年二月に福島県いわき市で始まった集団告訴の動きは、翌三月の「福島原発告訴団」の結成を経て、ついに国民運動にまで発展した感さえある。

 この間、東京電力は一〇月に、同社の第三者委員会「原子力改革監視委員会」の場で、従来の「津波は想定できなかった」とする主張を撤回。

「事前の備えができていなかったことが問題で、対処は可能だった」

 との見解を明らかにし、津波対策の不備を認めていた。

 これは、「対処は可能」としない限り、同社の柏崎刈羽原発の再稼働に目途が立たないためだ。

 しかしこの方針転換は、事故の刑事責任を自ら認めることにほかならず、文字どおりの「諸刃の刃」。経営陣らが訴えられた株主代表訴訟では「津波は予測できなかった」との主張を続けており、支離滅裂の様相を呈している。

 一方、告訴や告発を八月に正式受理した検察当局も、捜査を本格化させつつある。

 現在、東京、福島の両地検には全国から多数の応援検事が集められ、捜査が進められている。一〇月には、東電が設置した社内事故調査委員会(東電事故調)の調査や報告書作成に関わった複数の社員からの事情聴取に着手。地震・津波対策に関する東電側の認識や、報告書の作成過程などについて説明を求めた。その事情聴取は、

「まるで容疑者を取り調べるかのような厳しいものだった」(関係者)

 という。検察当局は今後、政府関係者からも事情を聞いていく方針とみられる。

【NHKと東大が告訴団の「次なる標的」?】

 福島第一原発事故では、入院中だった病院からの避難を強いられ、避難中や避難後に死亡した一般市民が多数存在する。彼らは皆、東日本大震災が「原発震災」とならずに済めば、そもそも死ぬことはなかった人たちだ。このことだけを考えてみても、福島第一原発事故は「刑事事件」以外の何ものでもない。

 この被害者たちの遺族が、今後告訴団に加わることにでもなれば、刑事事件として立件されるのはほぼ確実な情勢だ。

報告集会では原発事故で家族を亡くした告訴人の悲痛な訴えが紹介された。(撮影/明石昇二郎)

 また、福島県内では事故後、甲状腺がんを発症した子どももすでに確認されている。立件を目指す告訴団としては、こうした人々を説得し、仲間に招き入れることができるかどうかが今後の“宿題”でもある。

 一一月一五日の告訴・告発状提出後にあった告訴団の会議では、弁護団の保田行雄弁護士から、肝心の原発事故発生直後に事故を過小評価する報道を繰り返したNHKと、同様に事故を過小評価し続けた東京大学の原発推進派学者らを「次なる標的」に据えることが提案された。彼らに公開討論を申し入れ、福島県民に無用の被曝を招いた責任を、告訴団として追及していこう――というのである。

 今後も福島原発告訴団の動きから目が離せない。

(明石昇二郎・ルポライター、11月23日号)

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