新・買ってはいけない(195)――効きそうで効かない。かえって毒になる「花粉症予防グッズ」
2014年4月11日1:10PM
花粉症の季節となって、つらい思いをしている人が多いと思いますが、そんな人たちを対象にした花粉症予防グッズが、ドラッグストアなどで売られています。鼻の中や外側に塗って花粉の侵入を防ぐもの、マスクにスプレーして花粉を寄せつけないものなどが主です。しかしいずれも効果はほとんど期待できず、成分が鼻粘膜などにおよぼす悪影響が心配されるのです。(渡辺雄二)
薬事法違反スレスレの宣伝文句
アース製薬「花粉ハウスダスト ガードEX」には、いくつもの問題があります。パッケージには「効きめを実感!」「鼻の中にぬるから効く!」「マスクがいらない」など、マスクを付けなくても花粉の侵入を防いで花粉症を防ぐかのような表現がありますが、薬事法に違反している可能性があります。
同法の第68条では、医薬品の承認を受けていない製品について、効能や効果を表示することを禁止しています。この製品は単なる雑貨であり、医薬品の承認を受けていません。したがって、「効きめを実感!」「鼻の中にぬるから効く!」などの効果を表す言葉は、この条文に違反している可能性が高いのです。
もし「花粉症に効く」という表現であれば、明らかに違反となり、指導や製品回収の対象になるでしょう。「花粉症」という言葉がないので、行政もそうした措置をとっていないと考えられますが、「花粉ハウスダスト」という大きな文字があるので、実質的には「花粉症に効く」とうたっているのと同じです。このように薬事法に違反している可能性が高く、消費者に誤解を与えるような製品に対しては、行政はもっと厳しい態度で臨むべきでしょう。
次に成分の「精製長鎖炭化水素」ですが、これは類別名であり、具体名ではありません。ですから、どんな物質なのかわからず、安全なのかもわかりません。炭化水素は、炭素と水素が結合した化合物で、「長鎖」ということなので、それが鎖状に長く連なった化学物質ということですが、炭化水素の中には毒性の強いものもあります。
この製品は、成分の精製長鎖炭化水素を鼻腔の粘膜に塗るというものです。したがって、それが粘膜を刺激することがないのか、また、呼吸によって肺の中に入った場合、悪影響をおよぼすことはないのか、懸念されます。
むしろ有害成分を取り込んでしまう
さらに、もう一つ問題があります。それは、本当に効果があるのか、という点です。使い方は、中身を綿棒か指先にとり、鼻の穴(入口から1㎝くらいまで)に塗るというものです。すると、成分が保護被膜を作り、花粉の侵入を防ぐといいます。
しかし、保護被膜ができたとしても、鼻の入り口から1㎝くらいにすぎません。花粉は呼吸とともに、鼻腔の奥にまで入って粘膜に付着します。ですから、花粉の侵入を防げたとしても、ごく一部にすぎないのです。この製品は1080円ですが、効果がほとんどなければ、お金をどぶに捨てるようなものです。
フマキラーの「アレルシャット花粉 鼻でブロック」も、「花粉ハウスダスト ガードEX」と同様に鼻の穴に塗る製品で、成分も同じく精製長鎖炭化水素です。表示も、「マスクがいらない」「効きめが違う!」「鼻の中に塗るから効く!」「高純度成分が花粉をしっかりブロック!」など、花粉症を防ぐことをうたっており、同じ問題があります。
「ロートアルガード 花粉侵入防止ジェル」(ロート製薬)は、鼻の穴の中にではなく、鼻のまわりに薄く塗り広げるというものです。すると、成分の水溶性陰電荷ポリマーが、「イオンバリア」を作って花粉の侵入を防止し、また、キトサン誘導体が接近した花粉を取り囲んで、鼻腔内の粘膜に接触するのを抑制するといいます。
しかし、これでは花粉の侵入を防ぐことはほとんど不可能です。前述のように花粉は呼吸とともに鼻の穴から入ってきます。ですから、いくら鼻の周囲に成分を塗っても、ほとんど効果はないと考えられます。価格は1180円です。
最後に「クリスタルヴェール マスク防菌24」(エーザイ)ですが、テレビCMが流れている製品なので、知っている方も多いと思います。しかし、まったく意味のない製品です。マスクの内側と外側に成分をスプレーすると、花粉などの付着を防ぐといいますが、現在の不織布でできたマスクは、花粉を通しません。ですから、付着しても何も問題はないのです。むしろ、成分のエトキシシラン系化合物は、咳やめまい、頭痛、咽頭痛などを起こすことがあるので、要注意です。
結局、いずれの製品も効果はほとんど期待できません。こんな製品は断固拒否しましょう。
(わたなべ ゆうじ・科学ジャーナリスト、2014年3月28日号)
※この連載は、小社刊『買ってはいけない』シリーズとして随時発刊しています。