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理科実験でアスベスト被害――死亡の男性教諭に労災認定

2014年4月14日5:10PM

 大阪の府立高校に勤めていた男性の高校教諭が2007年に中皮腫により57歳で死亡した件に関し、地方公務員災害補償基金大阪府支部審査会が今年1月、死亡原因は理科の実験で使用していたアスベスト(石綿)だとし、労災を認定していたことがわかった。

 学校現場での石綿災害の労災認定は、滋賀県の小学校の体育教諭が体育館の天井に吹き付けられた石綿の飛散が死亡原因として労災が認められた(10年)が、理科実験での認定は初めて。石綿はかつて理科実験でよく使われており今後、労災認定が拡大しそうだ。

 審査会の調べでは、理科担当の男性教諭は1978年から84年頃にかけて、金属イオンの溶液を滲み込ませたひも状の石綿繊維に火を付けて、色の違いから金属の種類を見分ける炎色反応実験を生徒たちのために繰り返し行なっていた。実験準備ではひもをハサミで短く切断するが、審査会はその際に飛び散った高濃度の石綿粉じんを吸い込んでいた可能性があるとしている。

 男性は在職中06年に激しい咳や高熱が続き、同年10月に中皮腫と診断されたが、病状悪化は速く翌年1月に死亡した。遺族は公務災害を申請したが09年に同支部が「理科実験での石綿飛散の状況は明らかでない。あっても限定的」などとして労災認定しなかったために、不服とした遺族が審査会に不服審査を申し立てていた。

 20年ほど前までは理科実験で石綿を使うことは一般的だった。最も一般的に使われたのは、アルコールランプの上にビーカーなどを載せる石綿付きの金網。遺族は「石綿金網も原因」と主張していたが同審査会は「金網からの石綿飛散は濃厚ではない」としている。

 文科省に実態調査を申し入れた「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子会長は「アスベスト救済法で労災認定された人にも教員は多い。近くの工場による被害等と認定された人も実は学校現場が原因で中皮腫などになった教員である可能性もある。今回、あまり知られていない実験のことが認められたことは意義があるが、理科実験で最も一般的だった石綿金網も劣化して飛散したりするので危険だったはず」と話している。退職者も含めた教職員の一刻も早い調査をすべきである。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、4月4日号)

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