人種差別撤廃基本法の実現を――認められていない犯罪
2015年8月28日10:47AM
8月4日から審議入りした反ヘイト・スピーチ法(人権等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律)案に先立ち、「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」と題する集会が7月22日、参議院議員会館で行なわれ、約140人が参加した。主催は、外国人人権法連絡会ら4団体。
在日朝鮮人をはじめ、マイノリティーの人々を貶める街頭宣伝やデモが繰り広げられていることから、法案は5月22日、国会に提出されていた。2カ月以上経ち、ようやく審議が始まった。
基調講演を行なった龍谷大学の金尚均教授は、2009年12月の在特会らによる京都朝鮮第一初級学校に対する襲撃事件の裁判を引き合いに、法律の必要性を次のように訴えた。
「(判決では)人種差別を認定し、民族教育を行なう社会環境も損なわれたことも指摘された。これまでも存在した差別に対する法的制裁は皆無で、差別がなかったことにされていたが、今回の判決は、“あったことをあった”とした意義は大きい。しかし、特定の個人が具体的な被害を受けないと民族差別が犯罪行為だと認められない問題が残る」
この指摘のように、具体的な個人ではなく、「朝鮮人」といった一定の集団に対する侮辱的・卑俗的な行為がなされたとしても、対処できない現状がある。
人種差別撤廃基本法を求める議員連盟会長の小川敏夫参議院議員(民主)も集会に参加し、「現行法では、個別具体的な犯罪被害がないと、集団として差別の対象となる人々は救われない。法案を確実に通すために、内容もゆるやかにし、罰則も設けていない」と述べた。
まずは差別が犯罪であることを法で明確化することを優先し、法制化で強制力が生じる場合の懸念にも対応するための妥協案でもあるだろう。
(林克明・ジャーナリスト、8月7日号)