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安倍一強体制下での官僚の堕落(宇都宮健児)
2017年4月27日6:21PM
財務省近畿財務局が森友学園に、2016年6月、小学校用地として鑑定価格9億5600万円の国有地を、ごみ撤去費用8億1900万円などを差し引いた1億3400万円で売却したことが問題となっている。
普段は財布のひもを締めるのが仕事と躍起になる財務省が何故このように破格の安値で売却したのか、ごみ撤去費用に8億1900万円がかかるという算定は妥当なのか、何故近畿財務局は交渉経過に関するメモ・記録を破棄してしまったのか、国会の審議経過を見ても国民に納得ができる説明がなされていない。
また、森友学園の小学校設置認可申請に関しても、大阪府の私学審議会が2014年12月の定例会で「認可保留」として継続審議としていたのに、2015年1月に臨時の審議会が開かれ、条件付きながら「認可適当」の答申がなされている。
このように、森友学園の国有地取得や小学校設置認可をめぐっては、「国有地の激安払い下げ」、小学校の「異例のスピード認可」が行なわれているのである。
このような異例の措置がとられた背景に、森友学園問題が「安倍首相夫妻案件」であり、財務省、大阪府などがそろって森友学園に便宜を図ったのではないか、関係する官僚のいわゆる「忖度」があったのではないか、ということが話題となっている。
今の政治は、「安倍一強体制」といわれている。権力者の歓心を買うために安倍首相夫妻の意向を忖度し、森友学園の便宜を図ったのであろうか。
官僚が権力者の意向を忖度する動機には、自らの保身、出世といった私利私欲がある。
憲法15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定めている。権力者におもねり、国民全体の財産である国有地を破格の安値で売却する行為は、憲法15条2項に違反する行為であり、背任罪という犯罪にも問われかねない行為である。
財務省は、官僚の中でも優秀な官僚が集まる省庁といわれている。その財務省で、国民の財産である国有地を破格の安値で売却することに抵抗する勇気、気概のある官僚が1人もいなかったのだろうか。また、森友学園に対する不明朗な国有地売却について内部告発をする勇気、気概のある官僚が1人もいなかったのだろうか。まったく情けないことである。官僚の腐敗、堕落も極まれりということである。
文部科学省でも、法の網をかいくぐって組織ぐるみで斡旋システムを築き、長期間にわたり違法な天下りを行なってきていたことが明らかとなり、歴代の事務次官や人事課長を含む43人が処分されている。ここにも、官僚が国民全体の奉仕者であるという精神を忘れ去り、私利私欲に走るといった官僚の腐敗、堕落が現れている。このような官庁が、人の道を説く「道徳教育」を推進していいのだろうか。
官僚機構の腐敗、堕落を生み出している元凶が安倍一強体制だとすれば、国民に奉仕するまともな官僚機構を確立するためにも、国民が安倍一強体制を倒すしかないであろう。
(うつのみや けんじ・弁護士、4月14日号)
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