岐阜県各務原市議会の多数派が少数派の言論“封殺”
2017年10月26日6:26PM
岐阜県各務原市の市議会で、「言論の府」として首をかしげたくなるような事態が起こっている。9月27日の定例会最終日、市政に疑問を投げかけた少数会派議員の発言が、議事録から消されたのだ。
問題とされたのは公共建築物の耐用年数を巡る一般質問。「各務原市には二つの基準があり、市民をだましたことになりませんか」と問う杉山元則議員の発言に対し、取り消しを求める動議が最大会派の議員から提出され可決された。
同市では、建設から44年になる市庁舎建て替え計画が進む。市は現庁舎の耐用年数を、コンクリートの調査や日本建築学会の標準仕様書に基づき65年と推測。「耐震・免震補強を行なっても耐用年数は変わらず、約20年後には建て替え議論が必要となる」とし、耐震化を建て替えで行なうことに決めた。
一方で、市庁舎より古いものも多くある小中学校の校舎については、「文部科学省の手引を参考に長寿命化計画を作る」と答弁。手引には「70年から80年程度、さらに技術的には100年以上もたせる長寿命化も可能」と書かれている。
そこで杉山議員が「二つの基準」としたわけだが、これが「市の答弁内容を歪曲し、市民に著しい誤解を招き、議会の秩序を乱し、品位をおとしめるもの」とされた。何が問題なのか。最大会派会長の川瀬勝秀議員に問うと、「市が嘘を言ったように聞こえるので、取り消してくださいということ」という答え。同市議会は、浅野健司市長を支持する勢力が24人中20人を占める。杉山議員に賛同した市民グループが昨年、8000人を超える署名を集め直接請求した市庁舎建て替えか耐震補強かを問う住民投票条例案は、否決されている。
名古屋大学大学院法学研究科の後房雄教授(政治学)は「言論を取り消すなんて一線を越えている。多数会派は、批判的な意見があることまで抹消したりする必要はないはずなのだが」と話している。
(井澤宏明・ジャーナリスト、10月13日号)