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僕のiPad(小室等)

2017年10月28日3:12PM

夜遅く自宅前の植え込みの脇にiPadなどが入ったキャリーバッグを置き忘れたことに気づいたのは翌日で、あわてて見にいったがあるわけもない。Appleに連絡し、スタッフ誘導の下ロック完了、その時点で僕のiPadは荒川に架かる戸田橋辺りに存在することをPCの地図が示していた。

それで思い出し、以前に買っておいたDVDを引っ張り出してみた。一九六九年三月からNHKで放映された英国制作の連続テレビドラマ「プリズナーNo.6」。

〈オープニングタイトルは、猛スピードの、レーシングカータイプのオープンカーで本部に乗り付けた英国の諜報部員である主人公が、上司に辞表を叩きつけ、その足で自宅に戻り、旅の荷造りをするが、監視の手によって鍵穴から催涙ガスを注入され眠らされる。目が覚めるとそこは「村」と呼ばれる国籍不明の場所。「村」には多くの者が「プリズナー」(囚人)として拉致されてきており、それぞれ自分の正体は伏せたまま、番号で呼ばれている。「ナンバー・シックス」を与えられた主人公は「ナンバー・ツー」と呼ばれる「村」のリーダーから辞職の理由と知っている情報を問い詰められるが、頑なに回答を拒否。組織は最新の方法で情報を聞き出そうとするが、「ナンバー・シックス」はそれを退け、チャンスがあれば「村」からの脱出を試みるが、行動は「村」のあらゆるところに仕込まれた隠しカメラの監視下にあり、毎回失敗に終わる〉

「プリズナー・ナンバー・シックス」を演じるのは英国育ちのパトリック・マクグーハン。この作品のプロデューサーでもあり、「刑事コロンボ」の客演や、『007』シリーズのボンド役を断ったことでも知られている。

当時、日本語吹き替えの声は、小山田宗徳、若山弦蔵、近石真介、真木恭介、早野寿郎、久松保夫、(国会議員になる前の)山東昭子、山田康雄、愛川欽也諸氏、日本の声優の一時代を築いた錚々たる声優のみなさん。

ドラマはそう、今見直してもやっぱりおもしろい。でも当時は架空の出来事としておもしろがっていた。まさか、こんなにもリアルに今の日本に似ているドラマだったとは。マイナンバーを押し付けられ数で管理され、町のいたるところに防犯カメラが設置され僕らの動向は四六時中監視され……。

マイナンバーで必要書類の申請・取得の手続きが簡単。防犯カメラが役立って犯罪者が捕まればめでたしめでたし。iPadが見つかればよし。

本当にそれでいいのだろうか。

失うものはない?

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、10月6日号)

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