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「慰安婦」問題は「心の環境汚染」
城内環境副大臣が不適切発言か
徃住嘉文|2018年11月13日10:37AM
「『慰安婦』問題は心の環境汚染」「国連の報告書や勧告は歪曲や捏造に基づいている」――城内実・環境副大臣(53歳)が10月9日、東京・参議院議員会館で開かれた日本軍「慰安婦」問題否定派の集会でこんな挨拶をした。集会は、国連人権理事会差別撤廃委員会が8月、「あらゆる国籍の慰安婦問題の解決をすべき」と対日勧告を発表したのに抗議するため開かれた。城内氏の発言要旨は次の通りだ。
「あまり本音を言うと私、次の日かあさって副大臣をクビになる可能性あります。(中略)大気汚染とか、低周波、悪臭とか非常に不快ですね。しかし、この問題も悪臭はしないし、音は出ないけれど、私にとっては心の環境汚染の問題なんです」
「夜ぱっと思うと、寝られなくなっちゃうんですよ。(中略)日本の児童に間違った歴史観を教えて、これこそ心の環境汚染と、みなさん、思いませんか」
「日本はかなり国際機関に拠出しています。(中略)そのお金を使って日本を貶めるような報告書が出、歪曲と言うか、だれからそんな情報得ているのと調べてみると、びっくりするような団体だったりするわけですね」
「歪曲や捏造に基づくような報告書、あるいは勧告には毅然と、そうじゃないよと、これ以上出すんだったら、私たちもそれなりの対応させていただきますよ、と一般論的に、私はやるべきじゃないかと思います」
【取材にも曖昧な回答に終始】
発言は「『慰安婦』が汚染源?」と受けとられかねないし、捏造、歪曲は名誉に関わる。取材に対し城内氏は文書で「いわゆる『従軍慰安婦問題』は、戦時中に女性の名誉と尊厳が著しく侵害された問題」と認めたうえでこう回答した。
「『アジアの女性を強制連行』など、何ら根拠のないストーリーをあたかも歴史的事実であるかのように扱うことは、青少年の心に『自分たちの父祖は戦争犯罪者』という、いわゆる『自虐史観』を植え付け、自国への自然な愛着や誇りといった健全なナショナリズムの形成を妨げるという意味で、『心の環境汚染』と表現しました」
さらに、こうした嘘が流布したのは、『朝日新聞』が吉田清治氏の『慰安婦』狩りという虚偽を報道したからとし、「虚偽の事実関係を前提とした報告書や勧告により我が国が糾弾された」と主張した。
だが、回答は、尊厳と名誉を棄損したと認めながら、その主語と、どのような行為がそれに当たるのか、曖昧だ。人身売買だろうが、騙されてであろうが、本人の意思に反して性交を強いたのかが問われている。強制連行の証拠がないなどの主張は、戦犯裁判、法務省の記録、オランダ政府調査報告書などの資料を読めば、事実でないと分かる。アジア女性基金、女たちの戦争と平和資料館(wam)のホームページなどで学べる。
城内氏は、東京大学から外務省に入り自民党の候補者公募に応じた。小泉純一郎政権の郵政民営化に反対して刺客の片山さつき氏に再選を阻止されたことで知られる。現在、衆議院議員5期目。2014年の国会でも、歪曲、捏造が広まっているとして、「中国、韓国の情報戦」に対抗するため「数百億、一千億円ぐらい使ってでも全世界で徹底的にやるべき」と主張している。米国の新自由主義的弱肉強食型社会に批判的で農耕民族的な共存共栄を重視。天皇を敬い国柄である国体を重んじる「敬神崇祖尊皇愛国」(『新日本学』10年春号)を主張する。軍人勅諭を教育勅語と同様、評価してもいる(『月曜評論』00年10月号)。
心の環境汚染発言について「慰安婦」問題の資料を発掘している日本軍「慰安婦」問題解決全国行動研究チームの小林久公氏は「元慰安婦を傷つけ侮辱している。『クビになるかもしれない』と、発言がまずいと知りながら話しているのは二重に許しがたい」と言う。
差別撤廃委員会は8月の対日報告で警告している。「慰安婦に関する政府の責任を矮小化する一部の公人の発言と、そうした発言が存命する元慰安婦に与える否定的な影響の可能性を懸念する」
(徃住嘉文・ 報道人、2018年11月2日号)