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香りマイクロカプセルで「香害」拡大
日消連などが使用禁止求める
岡田幹治|2019年6月18日5:06PM
「香害」問題に取り組んでいる日本消費者連盟(日消連)などが5月22日、衆議院第二議員会館で集会を開いた。集会では、柔軟仕上げ剤や洗剤に多用されるようになった「香りマイクロカプセル」を中心に報告と意見交換が行なわれ、6団体による「家庭用品へのマイクロカプセルの使用禁止を求める」緊急提言が発表された。
マイクロカプセルは、特定の成分を薄い膜で覆った超微小なカプセル。多くの機能があり、医薬品・食品原料など多用途に用いられている。
香料の場合は、3000種類以上ある香り成分から複数の成分を選んでブレンドした「調合香料」が封入される。膜物質(壁材)には「メラミン樹脂」や「ウレタン樹脂」といったプラスチック(合成樹脂)が使用される。
これを柔軟剤に使えば、衣類の洗濯のさい繊維に付着して簡単には取れなくなる。衣類を着用して体を動かすたびにカプセルが破れ、中身の香料が放出され香りが漂う。強い香りを長続きさせるには実に便利な技術だが、弊害も大きい。
香りマイクロカプセルは直径が数十~数マイクロメートル(μm、μは100万分の1)と超微小だから、人が吸い込めば肺の奥深くまで入り込む可能性がある。そこでカプセルが破れて香料成分が体内に取り込まれ、深刻な健康被害を引き起こす。気体の合成香料を嗅いでも平気だが、マイクロカプセル化された香料を吸い込むと、気持ちが悪くなって咳が続くなどの症状が出る人もいる。
香りマイクロカプセルはまた、空気の流れなどに乗って移動する。だから、柔軟剤を使った洗濯物が干されると、人工的なニオイが近所に流れる。マイクロカプセル化は香害拡大の原因の一つなのだ。
【住宅地・病院・電車・登山道などで観察】
院内集会では、香害被害者のTOMTOM氏(仮名)が、玄関前に飛んできたマイクロカプセルの拡大写真などを公開し、これまでの観察結果を次のようにまとめた。
香料マイクロカプセルは(1)住宅地・電車内・病院だけでなく、登山道でさえ観察された、(2)人(衣類・皮膚・毛髪など)から人へ伝染する、とくに電車などの座席が危ない、(3)「イソシアネート」という毒性の強い化合物を出すものがある。
イソシアネートは、ごく微量を吸い込んだだけで喘息などを引きおこすアレルギー物質。細胞レベルで各種がんを誘発するという研究論文が発表されている。
TOMTOM氏が最新式の有毒ガス検知器で測定すると、柔軟剤臭が強い自宅車庫内や地下鉄のホームなどでイソシアネートが検出されたという。
続いてダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の水野玲子理事が、(1)マイクロカプセルの使用が肥料・殺虫剤、化粧品、塗料などの生活用品に広がっている、(2)欧州化学物質庁(ECHA)は今年1月「意図的に製品に入れられたマイクロプラスチックの規制に関する提案」を発表し、その中で香りマイクロカプセルの規制にも触れている、などと報告した。
緊急提言は「柔軟剤などの家庭用品へのマイクロカプセルの使用を禁止する」「マイクロカプセルの削減計画を、政府が策定中の『プラスチック資源循環戦略』に盛り込む」などを求めており、5月10日に世耕弘成経済産業相ら3大臣に提出された。
マイクロプラスチック(海洋などの環境中に拡散した微小なプラスチック粒子。マイクロカプセルも含まれる)については、海洋汚染が世界的に問題になり、今年6月に大阪で開かれるG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)の議題の一つになっている。このため政府は「プラスチック資源循環戦略」を策定中だった。
この戦略は「案」に対する意見募集が昨年12月28日に締め切られており、5月31日に「案」通り決定された。緊急提言の趣旨は盛り込まれていない。
(岡田幹治・ジャーナリスト、2019年6月7日号)