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蔓延するネット上の人権侵害
被害救済のためのモデル案提示
片岡伸行|2020年1月7日11:09AM
目に余るネット上の人権侵害に法の歯止めをと、弁護士と学者らによるグループ「ネットと人権法研究会」の主催する院内セミナーが12月4日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれ、「インターネット上の人権侵害情報対策法」のモデル案を提示した。
ネット上のヘイトスピーチや誹謗中傷が深刻化する中、日本には被害者の側に立って救済し、人権を保護するための法律がない。
セミナーでは、師岡康子弁護士が現状を報告。人権侵害の「書き込み」に対してはプロバイダへの削除請求や発信者情報の開示が必要だが、「削除を求める相手はIT業者(プロバイダ)で、発信者を明らかにするのは被害者本人がやらなければならない。裁判に訴えるのも被害者の負担が大きく、救済は困難」と“泣き寝入り”となっている現状を指摘した。
金尚均龍谷大学教授は、違法なヘイトスピーチの削除要請があった場合、IT企業が24時間以内に審査し削除などの対応をすることを定めたEU(欧州連合)の「ヘイトスピーチ行動規範」(2016年)と被害救済の仕組みを紹介。「プロバイダの本社がどこにあっても、現地で被害者本人が弁護士なしで簡便な法手続きができる」というドイツの法制度を引き合いに「日本でもできる。やっていないだけ」と述べた。
宮下萌弁護士はモデル案について「『インターネット人権侵害情報委員会』の設置が法案の肝」とし「被害者の申し立てを受け、委員会から削除要請があった場合、プロバイダは審査の上、人権侵害と判断したら48時間以内に削除しなければならない。削除しない場合は具体的な理由の明示を義務づける。発信者情報についても要請から2週間以内に開示しなければならない」などと説明。「なるべく裁判をせず、委員会を通じて問題解決を」と述べ、参加した国会議員に早期の立法化を求めた。
(片岡伸行・記者、2019年12月13日号)
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