埼玉県上尾市議会、コロナ対策で議員に自宅待機命令中に議決
岩本太郎|2020年4月3日5:55PM
「コロナ新法」で懸念された民主手続きの崩壊を先取りするような事態が地方議会で持ち上がった。埼玉県上尾市議会でのケースだ。
ご多分に漏れず上尾市でも2月下旬以来、学校の休校やイベント中止の動きが続いた中、同市議会
でも一般質問を中止し休会期間を設ける方針を同28日に決定。ただしこれに対して市議会第2会派「政策フォーラム・市民の声あげお」の議員らから異論が出たことで一般質問は当初の日程通り行なわれることになった。
ところが一般質問の予定だった前記会派所属の海老原直矢議員の妻が3月3日の早朝に発熱(後に「コロナとは異なる」旨を医師が診断)したのを受け、同市議会の事務局長と副議長が海老原氏、さらには同僚の前記会派所属議員全員に「濃厚接触者」として退庁と同15日までの自宅待機を命令。しかもその後前記会派所属議員抜きの議会で一般質問取りやめと同15日までの休会を議決したため事態が紛糾。翌4日には海老原氏ら議員6人が市議会議長・副議長に公開質問状を送ることとなった(その後ルール作りのための協議を行なう要望を同市議会側が受け入れたことから議員側が質問状を取り下げ。以上の経過は海老原氏と同市議会事務局に確認済み)。
上尾市では2017年に市内のごみ処理施設の入札をめぐる疑惑で当時の市長と市議会議長が同時逮捕される不祥事があったほか、昨年にも元市長と前市議会議長に絡む疑惑を前記第2会派などが議会で質していた。今回の事態にもそうした背後事情があったのではとの見方が同市内外では囁かれるが、それ以前に特定会派の出席を止めた議会で採決したことの不当性は批判されて然るべきだ。
3月13日に成立したコロナ新法は緊急事態宣言下に外出自粛や休校措置を求める権限を都道府県知事に定める。同市議会のような事例が罷り通れば議会制民主主義の死と言うべきで、今後も類例が生じないか警戒する必要があろう。
(岩本太郎・編集部、2020年3月20日号)