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コロナショック、国民資源の再配分が必要

高橋伸彰|2020年8月13日9:41AM

今回のコロナショックを転機として、日本経済はポスト成長への適応を目指したらどうか。政策的に重要なのは成長によるGDP(国内総生産)の拡大ではない。

実際、1960年に策定された「所得倍増計画」で高度成長を推進した池田勇人元首相のブレーン下村治は、翌61年の講話で「成長政策というのは、ただ単に国民総生産の数字をふくらますということではない。(中略)生活水準の向上なり福祉の改善なりに充当する分量を大きくするということ」(『税講論集』第48号)だと述べた。

下村は73年末の石油危機を境にゼロ成長論者に変節したと言われるが、それ以前からイノヴェーションの枯渇による日本経済の成長減速を予想していた。だが、下村は悲観することなく、72年4月の参議院予算委員会では「これまで(高度成長期)の日本の経済とは全く違った、ほんとうに豊かな(中略)時代が始まろうとしている」と楽観論を披露する。

下村によれば、成長率の低下でGDPに占める民間設備投資の比率は半減するが、それで余る貯蓄を国債の大量発行で政府が吸収し、積極財政の財源に充てれば「教育文化費は五倍にふやすとか、社会保障費は六倍にふやすとか、(生活や福祉関連中心に)公共事業費は七倍にふやす(中略)といったようなことも可能になる」(『成長減速期の日本経済の課題』)と提言した。

下村と同じ時期に在野のエコノミストとして活躍した高橋亀吉も、70年ごろを境に日本の高度成長を可能にした諸条件は限界に達したと述べ、「従来のような民間設備重視の資源配分では問題を引き起こすので一大修正が必要」(『日本経済の基盤革命』)だと説いたうえで、下村と同様にGDPに占める「社会投資、福祉、個人消費の比重を、ここで思いきって引き上げるという、国民資源の再配分」(同)が必要だと提言する。

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