放射能汚染水の海洋放出問題で国連専門家が警告の声明
鈴木かずえ|2021年4月6日2:04PM
東京電力福島第一原発の放射能汚染水に関して国連の専門家たちが3月11日、「海洋へ放出すれば人権侵害にあたる」とする声明を発表した。
声明を共同で発表したのは「有害物質」「食糧の権利」「国内避難民の人権」「健康の権利」「水と衛生の権利」というテーマをそれぞれ担当する5人の特別報告者たち。海洋への放出は将来の世代への人権侵害になる可能性があると警告するとともに、放射能汚染水の処分方法の決定に関する意思決定プロセスへの住民参加がないと指摘。そのうえで「利用可能な最善の科学的証拠に従うこと、決定の透明性を確保すること、市民の意見を求めることが、最良の指針となるだろう」と述べた。
この声明が出される前日の3月10日に開かれた第46回国連人権理事会では、東電福島原発事故の被害者であり「これ以上海を汚すな!市民会議」で活動している片岡輝美さんがビデオ映像で「東電福島原発事故が発生してから10年になります。しかし、終わったことなど何もありません」と発言。日本に対して放射能汚染水を海洋に放出しないよう、国際社会の協力を求めた。
溜まり続ける放射能汚染水の処理については、海洋放出ではなく、水漏れせず、地震にも強い堅牢なタンクに移し替えて長期保管する案が民間の専門家たちから示されている。
政府は「廃炉作業を遅延させないためにも日々増加する処理水の取り扱いについて早期に方針を決定する必要がある」(梶山弘志経済産業相)として2020年秋にも太平洋への汚染水の放出を決定すると報道されていた。だが福島県漁業協同組合連合会など地元の団体に加え、世界からも太平洋への放出に反対する声があがり、決定できずにいる。国際社会は放射能汚染水の行方を注視している。
(鈴木かずえ・国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」、2021年3月26日号)