生活保護費の減額処分を取り消した大阪地裁判決の意義
宇都宮健児|2021年5月1日4:21PM
三権分立下における司法の本来の役割は、国民・市民の基本的人権を守るという観点から、立法・行政をチェックすることにある。ところが日本の司法は、往々にして司法本来の役割を果たさず立法・行政に追随して立法や行政の裁量権を幅広く認める判決を下すことが多い。
国が2013~15年に実施した生活保護基準額の引き下げは生存権を保障した憲法25条に反するなどとして、大阪府の生活保護利用者ら42人が生活保護費減額処分の取り消しなどを求めた訴訟で、今年2月22日、大阪地方裁判所(森鍵一裁判長)は、厚生労働大臣の判断過程に過誤・欠落があったとして裁量権の逸脱による違法を認定し、生活保護費減額処分を取り消す判決を言い渡した。
国が13年から3回にわたり、生活保護費のうち食費や光熱費などの日常生活にあてる「生活扶助」の基準額を平均6・5%、最大10%という戦後最大の大幅引き下げを強行したことから、全国29都道府県で生存権を保障した憲法25条に違反するとして1000人近くの原告が集団訴訟を提起している。
昨年6月に出された名古屋地方裁判所の同種訴訟の判決では、厚労大臣の裁量権を広く認め、原告らの請求を棄却する不当判決が出されていた。13年からの生活扶助基準額大幅引き下げの背景には、12年にお笑い芸人の母親の生活保護利用が報じられたことをきっかけに「生活保護バッシング」が吹き荒れ、生活保護利用者に対する厳しい見方が広がったことがある。
そして、12年12月の衆議院選挙で自助・自立を強調して「生活保護給付水準の原則1割カット」を公約に掲げた自民党が政権に復帰したことで実施された。