東京外環道トンネル工事、住宅街陥没から1年
広がる被害と住民のいらだち
丸山重威|2021年10月8日4:42PM
【事業者認可に新たな疑惑】
陥没事故は1966年の計画決定以来、55年に及ぶ東京外環道計画の問題点を明らかにした。本訴では、地中拡幅部の工事方法などを決めないまま事業が承認されたことや、臨時大深度地下利用調査会の答申に地表への影響が予測されていながら無視して工事を進めたこと――を指摘する原告・住民側に対して有効な反論はない。2030年、50年の人口や交通量の予測を基に「トンネル道路は無用の長物」との主張にも、05年の古いデータしか示していない。
また、仮処分裁判で被告側は「事故が起きたメカニズムや個々のマシンに即した再発防止策について説明する」としながら、「事業者による計画と有識者委員会での結論が出てから」と回答のスケジュールさえ引き延ばしている。
9月21日の仮処分審尋では、陥没事故が起きた調布市の区域で大深度地下使用が認可されたのは中日本高速道路で、トンネルの掘削や陥没事故対応をしている東日本高速道路は認可を受けていないことがわかった。住民側の指摘に、国など事業者側は一切説明できなかった。合理的な説明がなければ、この工事自体が認可を受けていない不法工事で、まさにその現場で事故が起きたことになる。
「地下40メートル以深では地権者の了解を必要としない大深度地下法は違憲。住宅街の地下を大規模開発すること自体、乱暴で危険なのに、そのうえ工事はきわめてずさん」と警告しているうちに事故が起きた。「とりあえず工事は止めて再検討せよ」という東京外環道建設計画への仮処分裁判。原告・住民側は「差し止め決定以外にない」と期待を強めている。
(丸山重威・ジャーナリスト、2021年10月8日号)