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「日本赤軍」元最高幹部・重信房子氏が刑期満了で出所 
今の日本の情勢に言及も

粟野仁雄|2022年6月17日9:46PM

 5月28日、日本赤軍元最高幹部の重信房子氏(76歳)は懲役20年の刑を満了し、東京都昭島市にある法務省の医療刑務所「東日本成人矯正医療センター」を出所した。

出所後会見で重信房子氏(中央)と娘のメイ氏(右)。左は大谷恭子弁護士。(撮影/粟野仁雄)

「日本赤軍」といえば1972年5月にテルアビブ(イスラエル)の国際空港で岡本公三容疑者(74歳=レバノンに政治亡命中)らが自動小銃を乱射し26人が死亡した事件を起こした。重信氏が罪に問われたのは74年9月14日、フランスで拘束中の仲間の釈放を求めてオランダ・ハーグのフランス大使館を武力占拠し警官らを負傷させた事件の「指示役」だ。国際手配の後、2000年11月に大阪府内で逮捕。殺人未遂罪などの共謀共同正犯の罪で起訴され、懲役20年の刑が確定した。

 この日の午前8時前、周辺に右翼街宣車の怒号が飛び交う中で正門から出所した重信氏はたちまち支援者に囲まれてもみくちゃに。直後は花束を渡した長身の娘メイさん(49歳=ジャーナリスト、通訳)の姿しか外側からは見えない状態だった。その後、マスク姿で黒い帽子をかぶった重信氏は近くの公園で短時間の青空会見へ。娘と弁護士の大谷恭子氏に挟まれつつ開口一番「生きて出てきたなあという感じが強くあります」と言葉を噛みしめるように語った。

 00年に55歳で逮捕され、20年余の獄中生活中に大腸がんなどで四度の手術。八王子医療刑務所にいた11年には活動仲間だった日本赤軍元幹部、丸岡修氏が病死した。「生きて出られた」は実感だろう。

【「一方向への流れ」を懸念】

 青空会見で重信氏は過去の闘いについて「人質を取るなど、見ず知らずの無辜の人たちに対しても被害を与えたことがありました。そのことについては古い時代とはいえ、この機会にお詫びします」と頭を下げた。そのうえで「反省の念や好奇心をもって、これからも新しい道でもっともっと生きていきたいと思います」と語った。質疑応答では今の日本の情勢について「あまりに昔と違って一つの方向に流れているんじゃないか。ゼレンスキー大統領(ウクライナ)の国会演説ではれいわ新選組を除く議員全員がスタンディング・オベーションしていたことに表れている。国民はそうではなくても、政治家が一方向に流れているというのが実感です」との言葉も。

 最後には「一方の情報、警察情報を鵜呑みにするのではなく、テロリストと呼ばれる人たちはなぜそう呼ばれるのか。そう呼ぶ側の意図をよく読み取っていただきたい」と語った。温厚な口調は「女闘士」「魔女」と呼ばれた頃の印象とはほど遠かった。

 その後に開かれた出所の祝賀会には筆者も参加できた。会場では重信氏の実録映画を撮った足立正生監督(83歳)が「生きて外で迎えられたことは感激です。今後の活動を期待したい」と音頭を取り、ワインやビールで乾杯。元活動仲間や友人、支援誌編集者、出版関係者らが待ちわびた思いなどを語りあった。大渋滞で車酔いしたという重信氏は「多くの人たちに支えられて今まで生きてこられたことに感謝したい。まだどこかにいる人たちのことを忘れないで生きてゆきたい」と挨拶した。

「赤軍」というと「日本赤軍」やその前身「赤軍派」なども含めたすべての犯罪に重信氏が関与していたと誤解している人も多いが、重信氏は「あさま山荘事件」や、その前の「連合赤軍」によるリンチ事件が起きる前年の71年に日本を出国してレバノンにわたった。そのリンチ事件で親友の遠山美枝子さんが凄惨な死を遂げたことには彼女も衝撃を受けた。

 筆者が「医療刑務所では世相の情報は十分に入りましたか?」と訊くと「そうですね。友だちがいたせいで十分に情報は入っています」と答えてくれた。

 出所を受けて警察庁の中村格長官は6月2日の会見で「日本赤軍解散は形だけのもの。テロ組織としての危険性がなくなったと見ることはできない」と語った。公安当局は逃亡中の仲間と連絡を取り合っていないかとマークするだろうが、仮釈放でもなく満期出所した人物を追い回すのは人権侵害だ。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2022年6月10日号)

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