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震災関連死を防ぐために――歯科医師らが予防呼びかけ
2011年10月27日5:30PM
歯磨きなど口の衛生を保つことで肺炎、心臓疾患などを予防しようと市民講座「いい歯と健康」が一〇月八日、仙台市で開かれ市民ら一七〇人が参加した。神戸常盤大学の足立了平教授らが「今も震災関連死で亡くなる人が増えており、救える命を救おう」と呼びかけた。「保険で良い歯科医療を」全国連絡会が主催した。
大震災で被災者の歯科診療に奔走した足立教授は「健康は健口から~口と全身との意外な関係~」と題し講演。「よく咬むと脳の血流量が増え、脳の働きを高めることが分かった。歯が失われ義歯も使用しない高齢者は寝たきりが多い。毎食の歯磨きと正しい食生活、歯科医院での定期検診が重要」と指摘した。また、「震災がなければ助かったかもしれない震災関連死は、阪神・淡路大震災では九二二人で多くは被災後二カ月以内だった。東日本大震災では八五〇人との報道があるが、半年たった今も増え続けている。夜、寝ている間に唾液などを飲み込み、細菌などが気管に入り込んで起こる誤嚥性肺炎は口腔ケアによりかなり予防できる」と強調した。
足立教授はまた、阪神・淡路大震災で、口腔ケアは命を守るための総合的なケアの一環として行なわれたことを紹介した上で、徹底した口腔ケアで肺炎発生率を四〇%、死亡率を五〇%減らせるとのデータを示した。
宮城県で自らも被災し、避難所や仮設住宅などで歯科診療に当たっている井上博之・歯科医師が「震災直後は気付かなかったが、一週間も歯を磨かないと歯ブラシが欲しいとの声が多く上がった。口の中が汚れたままだと全身の状態がおかしくなる人も多かった。歯肉が痛いとの訴えや、義歯がなく食べられない人もかなりいた。全国から多くの歯科医師が駆けつけてくれ助かったが、問題はこれからどう地域医療を立て直すかだ」と述べた。
医療支援に参加した歯科医師や歯科衛生士からの報告もあった。市民からは歯科に関する相談が一〇件あり、「被災後、合う歯ブラシがなかなか手に入らず困った。非常持ち出し袋に歯ブラシを入れるべき」などの意見も出された。
(杉山正隆・ジャーナリスト、10月14日号)